認知症の症状の一つである「徘徊」は、家族や介護者にとって大きな課題です。目的なく歩き回っているように見える徘徊ですが、本人にとっては安心を求める行動や混乱の表れであることも少なくありません。この記事では、徘徊の原因や背景、行方不明時の対応策、徘徊を防ぐための環境作りや具体的な対策グッズについて詳しく解説します。安心感を提供しつつ、本人の尊厳を守るためのヒントをお届けします。
このページの目次
徘徊の意味とは?
徘徊(はいかい)とは、特定の目的地がない状態で歩き回る行為を指します。特に認知症の症状として見られることが多く、本人が目的を持っているように見えても、外出先で自宅に戻れなくなるなど、周囲からは「迷子」状態と判断されることが一般的です。徘徊は認知症の進行とともに起きやすく、家族や介護者にとって大きな課題となります。
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徘徊の言い換え・隠語
徘徊という言葉はネガティブな印象を持つことがあるため、介護の現場や家族の間では別の表現が使われることがあります。たとえば「散歩」「お出かけ」「探索行動」などの言い換えが一般的です。また、「不安行動」「安心を求める行動」といった視点でポジティブに捉えるケースも増えています。
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徘徊をしてしまう原因
徘徊の背景には、認知症による記憶力や判断力の低下があり、これが本人の不安や混乱を引き起こしています。この行動は単なる「歩き回る」というよりも、本人の心理状態や環境要因が複雑に絡み合った結果として現れるものです。以下に、具体的な原因を詳しく説明します。
目的を忘れる
認知症の進行により、日常生活の中での目的や意図を忘れることがあります。例えば、「スーパーに買い物に行く」「知人の家を訪ねる」といった目的で外出しても、途中で何をしているのか分からなくなり、そのまま歩き続けてしまうことがあります。このような行動は、周囲からは「無目的な徘徊」に見えることが多いですが、本人の中では最初に持っていた目的があった可能性があります。
記憶の混乱
認知症では記憶の混乱が頻繁に起こり、自分が今どこにいるのか、ここが自分の家なのかが分からなくなる場合があります。この結果、本人は「自宅に戻ろう」とする意識の中で歩き続け、迷子状態になってしまいます。特に、引っ越しをした直後や施設に入所したばかりの場合、以前住んでいた場所を探しに行こうとするケースも見られます。
不安感の解消
認知症の進行に伴い、本人は常に不安や孤独感を感じることがあります。例えば、家族が近くにいないと「どこに行ったのだろう」と思い、探しに外出してしまうことがあります。また、周囲の環境がいつもと違うと感じた場合、それを確認しようとする意図で歩き回ることもあります。このような行動は、本人の心の中にある「安心を求める」反応とも言えます。
過去の記憶に従う
認知症の影響で、過去の記憶が鮮明に蘇ることがあります。これにより、かつての生活習慣や職場への通勤など、以前の行動パターンが無意識のうちに再現されることがあります。例えば、「会社に行かなければ」と考えて出発してしまうことや、「子どもを迎えに行く」という意識で動き出すことが典型例です。
身体を動かしたい
認知症の人の中には、じっとしていることが苦手で、身体を動かしたいという衝動に駆られる場合があります。特に、日中の活動が少なくなると、その反動で歩き回る傾向が強まります。また、運動不足から来るストレスや身体の不調を和らげるために、無意識に動きたくなるケースもあります。
これらの原因は複合的であり、徘徊の背景には必ずしも一つの理由だけがあるわけではありません。徘徊行動を理解し、適切に対処するためには、本人の心理的・身体的状態や生活環境を総合的に把握することが大切です。
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徘徊で行方不明になったときの対応方法
徘徊による行方不明は、認知症の方とその家族にとって非常に不安な状況です。迅速かつ冷静な対応が、早期発見につながり、本人の安全を守ることに直結します。以下に、具体的な対応方法を詳しく解説します。
落ち着いて状況を確認する
行方不明に気付いた際には、まず冷静になることが重要です。最後に本人を見た場所や時間、服装、持ち物などを確認します。本人がよく話していた行きたい場所や日頃の行動パターンも思い出し、外出した可能性のある方向性を探ります。また、自宅周辺や庭、物置など、家の中や敷地内も確認することを忘れないでください。
近隣を捜索する
行動範囲が広がる前に、近所を優先的に探します。認知症の方は意外と近くにいる場合も多いため、行きつけのスーパー、公園、公共施設などを確認します。また、隣人や近隣住民に声をかけ、「このような特徴のある方を見ませんでしたか?」と尋ねることで情報が得られる場合もあります。
警察に110番連絡する
近隣で見つからない場合は、速やかに警察へ連絡します。「ひょっとするとすぐに見つかるかもしれない」「できるだけ人に迷惑をかけたくない」という思いもありますが、連絡が遅れるほど捜索が難しくなります。
警察に連絡すると、以下のような状況、情報を聞かれ、伝えることになるため、明確に説明します。
- 最後に見た場所と時間
- 当日の服装や持ち物
- 体調や歩行速度
- 声をかけたら名前や情報を言えるかなどの認知症の症状の程度
- よく訪れる場所や習慣
このような情報について、自治体では認知症行方不明高齢者事前登録制度という仕組みで、地域の警察や民生委員に情報共有しておき早期発見につなげるというものもあるので、徘徊が見られるときに早期発見につながるため利用しましょう。
地域の協力を得る
近隣住民や自治会、地域包括支援センターに協力を依頼し、目撃情報を集めます。地域のネットワークを活用することで、多くの目が行方不明者の捜索に加わり、早期発見につながることが多いです。また、スーパーや公共施設などの掲示板に情報を掲載することも効果的です。
防災情報ネットワークを活用する
自治体が提供する防災無線やメール配信サービスを利用して、行方不明者の情報を広く発信します。これにより、地域全体で捜索活動を行う体制が整います。特に、GPSデバイスを所持している場合は、位置情報の追跡が大きな助けになります。
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本人発見後の対応
本人が無事に発見された場合には、本人の体調や心理的な状態を確認します。長時間歩き続けた場合には、疲労や脱水症状が考えられるため、休息を取らせ、水分補給を行います。また、「なぜ外出したのか」「どこに行きたかったのか」を穏やかに尋ねることで、次回以降の徘徊防止策を考える手がかりを得られる場合があります。また、警察などに連絡した場合には、捜査を進めているため、見つかった際には連絡を入れましょう。
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徘徊の対策方法(自由を奪わない対策は難しい)
徘徊対策では、本人の自由や尊厳を尊重しながら安全を確保することが重要です。しかし、完全に自由を奪わない対策を取るのは難しい側面もあります。以下の方法を検討してください。
認知症老人徘徊感知機器の設置
認知症老人徘徊感知機器は、介護保険の福祉用具貸与の品目にもなっています。そのため、居宅で生活をしている要介護者であればケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談して、介護保険でその方に合った機器をレンタルすることができる可能性があります。センサーが反応して知らせるだけのものから、保険適用外ですが位置情報をスマホに通知する機能が付いているものまであります。
認知症行方不明高齢者事前登録制度を利用して警察などに事前に知らせておく
警察や自治体では、認知症行方不明高齢者事前登録制度という認知機能の低下によって行方不明となるおそれのある方の名前や特徴、写真などの情報をあらかじめ登録し、登録いただいた情報は地域の民生委員・警察へと情報を共有することで、日頃からの見守りや行方不明時の早期発見へつなげる制度を実施している場合があります。登録している場合は、登録情報が捜索に役立てられます。
環境の工夫
認知症高齢者が外出しにくい環境を整えるためには、安全性を確保しつつ、身体拘束や虐待に該当しない工夫を取り入れることが重要です。なかなか難しいことであり、認知症の程度やご本人の性格などによっても効果が変わってきますが、以下のようなアイデアが参考になるかもしれません。
工夫の種類 | 具体例 |
---|---|
扉や玄関の工夫 | - 扉を壁と同じ色に塗る - 高い位置に鍵を設置 - 扉に「倉庫」などの表示を貼る |
庭や敷地の安全確保 | - 囲いのある庭を設置 - 家庭内迷路のような歩道を作る |
センサーや通知機能 | - ドアセンサーで家族に通知 - 見守りカメラを設置 |
部屋の配置や家具の工夫 | - 出口付近に写真や時計を配置 - リラックスできる部屋を用意 |
散歩や活動の計画 | - 定期的な散歩時間を設定 - 日中の運動量を増やす |
心理的安心の提供 | - 「お店は閉まっている」と伝える - 趣味や手作業で興味を引く |
徘徊しないで済むような安心感の提供
安心感を提供する工夫 | 具体例 |
---|---|
家族の存在を感じられる工夫 | - 家族の写真を部屋に飾る - 録音した家族の声を再生するデバイスを用意 |
日々の予定を明確にする | - カレンダーに予定を書き込み、視覚的に分かりやすくする - 毎日のルーティンを定める |
リラックスできる環境作り | - 好きな音楽を流す - 好みの香りのアロマやお茶を用意 |
居心地の良い空間の提供 | - 安心感を与えるインテリア(柔らかいクッションや落ち着いた色合いの家具)を設置 |
趣味や興味を活用する | - 塗り絵やパズル、園芸などの活動を用意 - 手先を使う作業(編み物や折り紙など)を取り入れる |
声掛けやコミュニケーション | - 穏やかな声で話しかける - 定期的に近くで話を聞いたり、一緒に過ごす時間を作る |
過去の記憶を刺激する工夫 | - 若い頃の写真や思い出の品を手元に置く - 懐かしいテレビ番組や音楽を見せる・聞かせる |
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徘徊対策グッズ(見守りカメラ、ホームセキュリティ、GPS)
徘徊を防ぐためには、最新の技術を活用した対策グッズが役立ちます。以下に主要なアイテムを紹介します。
認知症老人徘徊感知機器の設置
介護保険の福祉用具貸与で、センサーに反応して通知する機器をレンタルできます。
見守りカメラ
室内に設置することで、本人の動きを遠隔で確認できます。通知機能付きで異常を即座に把握可能。
例えば、ソニーの提供している「MANOMA」というサービスだと、スマホアプリで戸締りや部屋の様子を確認でき、侵入者を検知すると大音量の警告音で撃退、もしもの時はセコム駆けつけを要請ということができるので、認知症の方の状態次第では対策として役立つかもしれません。
認知症徘徊対策GPS機能付きデバイス
今は安価でいろいろな形の認知症徘徊対策GPS機能付きデバイスが販売されています。(下記からアマゾンの該当商品ページに飛べます。画像の価格は2025年1月7日時点)
スマートウォッチやタグ型デバイスを利用することで、徘徊時の位置情報をリアルタイムで把握できます。
これらの対策グッズは、徘徊リスクを軽減し、家族や介護者の負担を大きく減らす効果があります。特に、GPS機能付きデバイスは、徘徊していても居場所が把握できるので、本人が故意に外してしまわない限りは一定の安心感があります。スマホをいつでも持っている方ならばスマホのGPS機能で居場所がわかるサービスは通信会社が提供しています。裸足で出ていかない限りは、靴型のGPS端末などは身に付けてくださる可能性が高いです。
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おわりに
徘徊は認知症の代表的な症状であり、本人や家族にとって大きな課題です。適切な対策やグッズを活用しながら、本人の安全と自由を守る方法を模索していくことが求められます。この記事が徘徊対策の一助となれば幸いです。
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