褥瘡の治療法 ラップ療法とフィルム療法の違いと衛生管理

 

医療介入が必須の治療対象となる褥瘡では、日常の保護的な治療・患部の衛生管理としてラップ療法とフィルム療法が選択されることがあります。

介護が重度になり、寝たきりや不動状態が続くと多々発生してしまうのが褥瘡です。
介護看護分野では、褥瘡ゼロを目指していろいろな取り組みをしていますが、実際にどのように褥瘡のリスクを評価して対策をしているかはそれぞれです。

最近は、フィルム療法で処置して経過を診ることが増えてきました。褥瘡の治療方針決定や治療方法の選択などは、医師の医学的判断を伴う医療行為を含み医療的ケアの範囲を超える行為もありますので、実際の褥瘡ケアは医師の指示のもと適切に行われる必要があります。

医療介入が必要な「重度の褥瘡」とは

褥瘡はケアを怠ると1日で発症することがあります。その褥瘡がどの程度リスクがあるのか、どのような原因でできてしまったのかを考えて適切に進めることが重要になります。

緊急の医療介入が必須の融解壊死期・感染が進んだ褥瘡

褥瘡から炎症を起こし、壊死してしまった組織が融解することがあります。介護分野や在宅では、軽度の褥瘡だと医師の診察を受けず応急処置的に褥瘡対策を行っているケースもありますが、表面上は軽度の褥瘡に見えても皮下で進行して壊死しているケースもあります。

 緊急の医療介入が必要な褥瘡

  • 褥瘡の部分や周辺から黄色や白・緑などの膿が発生している場合
  • 明らかに炎症を起こしている場合
  • 骨まで傷が及んでいる場合

 

これらの場合には、緊急事態であり、医師の診断のもとでデブリードメント(壊死した組織を切除すること)が必要です。

「そんな危険な状態なら見ればわかるのではないか?」と思われるかもしれませんが、褥瘡は以下の図のように壊死部の潰瘍の奥に「ポケット」と言われる空洞ができることがあるので壊死部を取り除くとかなり進んでいるケースもあります。

褥瘡で壊死部の潰瘍の奥にポケット

 

 このように、褥瘡から炎症を起こし、壊死した組織が融解している状態では、ワセリンやラップ、褥瘡の治療薬を使用しても治せる状態ではなく、すぐに医療機関へ!

 

褥瘡の進行過程について

褥瘡の進行過程は、よくある分類として「どこの組織まで傷害が進んでいるか」で4期に分けて考えられることが多いです。

この分類方法を「褥瘡の進行度分類(重症度分類)」といいます。分類方法について詳しくは以下の記事で紹介しています。

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褥瘡のラップ療法とフィルム療法の違いとメリット

ここからは医療面なので、看護師等の医療従事者の介入が望ましい分野になります。褥瘡ケアのラップ療法とフィルム療法の違いとメリットについて一般的に言われる内容を掲載しますが、ケースバイケースであり、考え方も様々なのでご参考程度に。

フィルムを褥瘡部に張り付ける行為は医療行為になる場合も

褥瘡ケアについては、介護施設などでは以前は「ラップ療法」が主流でした。
しかし最近は、フィルム系の良い素材が安価で手に入るようになってきたため、利用されることが増えてきました。
ラップの場合は褥瘡部分を覆ってしまい、滲出液を閉じ込めてしまいますが、フィルム系素材は適度に浸出液を排出したり、空気や水蒸気をフィルムの外に逃がしたりできるため利点・メリットが大きいと言われています。
フィルム系素材は、薄くやわらかく患部に密着するため、柔軟に皮膚を保護でき、褥瘡で問題となるズレ(摩擦)の対策としてもよいこともあります。

褥瘡対策・褥瘡ケアで用いられるポリウレタンフィルムの特徴と商品の例

褥瘡対策や褥瘡ケアで使用されるフィルム系素材であるポリウレタンフィルム・ドレッシング材は、最近身近になってきています。
例えば、水にも強いばんそうこうや、冬のあかぎれ用のばんそうこうなどに、その柔軟な貼り付けやなめらかで摩擦が少ないことや、軟膏薬が併用できる点などのメリットが活かされています。以下に、褥瘡対策としても工夫して使えるフィルムの例を挙げます。

褥瘡のフィルム療法「3M テガダーム スムース フィルムロール」

3M テガダーム スムース フィルムロールは、摩擦が少ない表面加工を施した、未滅菌のポリウレタンフィルムです。必要な長さにカットして使用できるロールフィルムです。

■3M テガダーム スムースは貼りやすい
剥離紙の中央部分を剥がすと両端が掴みしろとなり、手や手袋が粘着剤に触れずに貼ることができます。青色状スリットによりキャリアフィルムが掴みやすく簡単に剥がすことができます。

■3M テガダーム スムースはちぎれにくい
引っ張ってもちぎれにくく、剥がすのも簡単です。
ガーゼ等の固定、シャワーや入浴時の防水カバー、褥瘡対策における皮膚の被覆等にご使用いただけます。

 

ポリウレタンフィルム・ドレッシング材
片面が粘着面となっている透明なフィルムで,水蒸気や酸素が透過でき,中が蒸れないようになっている。 出血を伴わない創面,浅い褥瘡(発赤のみ),あるいは水疱の保護,褥瘡の予防などに使われるが,新鮮外傷の治療では単独使用より,後述するアルギン酸塩被覆材やハイドロジェルの密封用に極めて有用。(引用:新しい創傷治療 - 創傷被覆材:各論

 

褥瘡のフィルム療法「デュオアクティブET」

デュオアクティブETは、薄型のハイドロコロイド粘着層と防水性ポリウレタンフィルム外層を持つ、半透明タイプのハイドロコロイド・ドレッシングです。柔軟性と密着性に優れ、身体のどの部位にもフィットし、半透明のため貼付下の創部も観察可能です。

湿潤環境形成に最適なハイドロコロイド採用し、創部全体を保護し、高い安全性を確保

疼痛を軽減・二次損傷を防止、半透明タイプなので傷の状態を確認しやすい

デュオアクティブETの性能・使用目的としては、真皮までの創傷に対する「創の保護」、「湿潤環境の保護」、「治癒の促進」、 「疼痛の軽減」などです。医師の処方により保険適用になる特定保険医療材料です。適用期間は2週間を標準とし、特に必要と認められる場合については3週間を限度とされています。

 

ハイドロコロイド・ドレッシング材
シート状になっていて,外側が防水層,内側が親水性コロイド粒子を含む粘着面になっている。 大きさ,形はさまざまであり,厚さも,写真上のようにポリウレタンフォームを用いてクッション性を持たせた厚いもの(デュオアクティブCGF)や,写真下のように非常に薄くしなやかなもの(デュオアクティブET)がある。 通常はシート状のものが使われるが,ペースト状のもの(コムフィール・ペースト),顆粒状のもの(デュオアクティブ顆粒)もあり,これらは陥凹した創やポケット形成をした褥瘡に使われる。 (引用:新しい創傷治療 - 創傷被覆材:各論

 

これらのフィルムはラップのように裂けたり破れたりしにくいため、創部に薬を塗った上から貼りつけしたり、外側に尿取りパットやオムツを使って滲出液を吸わせたりしやすくなっています。褥瘡の薬はいろいろな種類がありますが、どんな褥瘡治療薬がどのような効果・効能をもたらすかについては、薬剤師監修の以下の記事にまとめてあります。

 

治療薬や治療法についてを紹介しましたが、医師の適切な診断のもと、医師の指示に従って褥瘡の観察・治療を進めましょう。

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褥瘡がある場合の入浴と洗浄

褥瘡部の洗浄は基本的には石鹸や消毒薬は使用せずに、水道水で十分だと言われています。

洗浄をする人は、プラスチック手袋などをして、水道水(温水シャワー)などを当てながら、創部分を優しくなでるくらいが良いと言われています。
入浴については、在宅の場合と施設の場合でやや対応が異なります。
在宅の場合は、まずはシャワーで綺麗に創を洗い、綺麗なお湯の入った浴槽に入ってもほとんどの場合大丈夫だと言われています。(上述しているような重度の場合は医療的判断が必要です)
また、施設で多数が同じ浴槽で入浴する場合には、湯船に入る時はフィルムなどで密閉しておき、浴槽から出てからフィルム等をはがしてシャワーで洗浄する方が良いと言われています。
ただし、いずれの場合も感染等の予防のためにお湯や浴槽を消毒したりした方が良いようです。(こちらも担当者、医師、施設衛生管理担当の指導に従って)

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