深刻なケアマネ不足、厚生労働省や協会にも原因、根本対応を解説

近年、全国で「ケアマネジャー不足」が深刻化し、在宅介護サービスの調整ができず、必要な支援を受けられない高齢者=介護難民が増加しています。ケアマネとは何か、なぜここまで人材が不足しているのか。その背景には、過重な研修制度や処遇の逆転現象、厚生労働省や日本介護支援専門員協会などの業界団体で組織される検討会でのポジショントークや忖度が働いた制度設計の問題が存在します。本記事では、現場の混乱を招く構造的課題と、根本的な解決策について詳しく解説します。

ケアマネとは?介護の要となる「介護支援専門員」の役割

ケアマネとは、正式には「介護支援専門員」と呼ばれ、要介護認定を受けた人に対して、ケアプラン(介護サービス計画)を作成し、適切なサービスが受けられるように調整を行う専門職です。特に「居宅介護支援事業所」で働くケアマネジャーは、利用者の生活に最も密接に関わる存在であり、訪問介護やデイサービス、福祉用具レンタルなど多様なサービスを組み合わせて一人ひとりの生活を支える調整役を担っています。

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ケアマネの資格取得・維持の困難さと、高すぎる更新のハードル

介護支援専門員になるためには、一定の実務経験(介護職、看護師、相談支援業務など)を経た上で、難関とされるケアマネ試験に合格する必要があります。合格後もすぐに現場に出られるわけではなく、実務研修(87時間)を修了することが条件とされています。「ケアマネ試験に合格した!」となっても、その後に80時間以上の研修を遅刻や欠席なく全て出席して修了しないとケアマネにはなれないというものなのです。実際に、ケアマネの研修中に身内が救急車で運ばれたり、体調を崩して出席できなかったりした際に、そのような理由で研修に遅刻したり、受講ができなかったりしたことで研修を修了したことを認めてもらえなかったという事例もあるようです。

さらに、資格を維持するためには5年ごとの更新研修が義務付けられており、50時間以上の研修をすべて欠席・遅刻なしで受講しなければ更新が認められません。これに加え、研修費用も高額(5〜7万円程度)で、研修日程は研修を担当する団体が一方的に決めるので、業務を調整しながら連続で出席しなければならない負担は非常に大きく、多くの人が更新を断念して資格を失うという事態も発生しています。

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ケアマネ不足によって起こる現場の混乱と「介護難民」

現在、全国で深刻化しているケアマネ不足の影響で、本来受けられるはずの在宅介護サービスを利用できず、いわゆる「介護難民」となる高齢者が増えつつあります。ケアマネがいなければ、介護保険サービスを利用するためのケアプランが作成できず、サービス利用の入口が完全に閉ざされてしまうためです。

また、すでに在宅で介護を行っている家族にとっても、ケアマネがいなければ行政や事業所との連携が取れず、精神的にも物理的にも大きな負担がのしかかります。特に独居高齢者や高齢者世帯では、支援が届かないことで孤立や虐待、事故につながる恐れもあります。

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なぜケアマネは増えないのか?制度に潜む構造的な問題

資格の地位と報酬が逆転

ケアマネジャーは「介護職員の上位資格」として位置づけられているにもかかわらず、現実には介護職員等処遇改善加算の対象にならず、給与が逆転する現象が起きています。経験と責任を重ねても、経済的な見返りが少ないため、現場を離れてしまう人が後を絶ちません。

厚生労働省・協会による研修制度の硬直化

資格を維持するための更新研修について、現場からは「内容の実務性に乏しく負担が重すぎる」との声が多数上がっていますが、厚生労働省や日本介護支援専門員協会は、大幅な緩和や廃止には反対の立場を取っています。結果として、更新を断念し資格を失う人が続出し、現場のケアマネが減り続けているのです。

高齢化する現役ケアマネジャー

ケアマネ資格保有者の平均年齢は年々上昇し、若年層の参入が少ないことも大きな課題です。心身ともに負担が重く、長く続けられる環境が整っていないため、定年退職や体力的限界で離職するケースも増えています。

ケアマネ試験合格者数の増加は「利権」のため?

このような状況にもかかわらず、厚生労働省と日本介護支援専門員協会は、試験の合格率を引き上げることで表面的な「数の確保」を図ってきました。しかし、それに連動するように研修の受講者数を確保するという協会の「利権構造」が背景にあるという指摘もあります。実務に耐えうるケアマネを増やすという根本目的が後回しにされている現状が浮き彫りになっています。

居宅介護支援事業所の運営の基準として、主任介護支援専門員の資格者が管理者になる必要がありますが、この主任介護支援専門員の資格にも高額な費用と何十時間もの時間をかけた研修を受けなければならないということになっています。

さらに法定研修の内容は、「理想的なケアマネ像」を描くばかりで、実際の業務で必須となる給付管理や報酬請求、サービス調整などの実務スキルを教える時間はほとんどなく、即戦力としての育成にはつながっていません。

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根本的な対策とは?現場と利用者のために必要な改革

現在のケアマネ不足を解消するためには、以下のような本質的な対策が求められます。

更新研修制度の見直し

形式主義に陥った実務研修は実務重視の内容で大幅に時間短縮することに再編し、更新研修については廃止することが必要です。介護支援専門員実務研修で指導している内容は実際には居宅介護支援の実務としては不十分であり、職業倫理や価値観だけを押し付けるようなものになっています。実務にあたってはこのように集中的に植え付けられた価値観がむしろ業務上の効率を著しく落とし、倫理としての善悪に意識がいき、仕事としての善悪の判断がつきにくくなるというデメリットも大きいです。日本介護支援専門員協会などは、研修を廃止することによって質が落ちるということを危惧していますが、今求められているのは質が高いことよりも、最低限の内容でもたくさんの高齢者に届くことです。

国や厚生労働省では、災害に備えてBCP(業務継続計画)を整備することを求めていますが、ケアマネ不足も深刻であるので、事業を継続するための緊急事態です。平常時であれば日本介護支援専門員協会が訴えているような質の高いケアマネジメントということも行えるかもしれませんが、緊急時の事業継続のために、削っても良いことを国や自治体として示していっていただく必要があります。

処遇改善加算の対象拡大、業務軽減と介護報酬の増加

ケアマネ業務を行う人にも処遇改善加算など、給与の向上になる制度を適用し、資格に見合った報酬を確保することが必要です。また、日本介護支援専門員協会は、質の向上や維持にこだわっていますが、実際にはケアマネ不足に陥ってる状況下で、なるべくたくさんの利用者にケアマネジメントがが届くようにしなくてはならないというのが国としての本音だと思います。運営上の余計な要件や協会が求める質については後回しにして、本当に必要な業務に絞って行えるように、運営上の基準や圧力による非効率をなくす必要があります。お金

実務に即した研修の導入

制度や理想論だけでなく、給付管理や帳票作成、調整業務などを丁寧に教える研修の整備が必要です。実際に介護報酬の対象になっているのもこのような事務的仕事が中心ですが、実務研修という名前をつけていながら実務のことを教えずに、自分たちの倫理観や価値観を押し付けることが中心になっているのは詐欺的です。

若年層の育成と定着支援

若い世代が入りやすい環境づくりとして、研修費補助や柔軟な働き方の導入も重要です。また、実務研修を受講して、いざ介護支援専門員として働こうとすると、実務研修で習得した内容と実務の内容に大きなギャップがあり全く役に立たないという意見も多く聞かれます。実務研修を長い時間かけて受けているにも関わらず、本当に必要なケアマネ業務の実務については各職場で研修し直さなければならないので、雇用した側にも若年層の新人ケアマネ側にも負担が大きく定着が難しいです。特に、新人ケアマネに対して研修で徹底的に理想論を教え込み、答えのない質の高いケアマネジメントを延々と考えることがケアマネの仕事であるということを刷り込むので、そのようなゆがんだ認識が実務を行う時の大きな迷いにもなります。研修の内容がずれていると、実務についた時に自信を喪失するので、そのような意味でもちゃんとしたスキルを身につけていけるような支援と余裕が必要です。

現場の声を反映した制度設計

厚労省や日本介護支援専門員協会、審議会、プロジェクトチームが上意下達で決めるのではなく、実際のケアマネジャーの意見を吸い上げた運営が求められます。本当は現場の声は届いているはずですが、制度を作るチームの方々がポジショントークや利権の維持を行いすぎるのでいびつな制度設計が続いてしまっています。

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まとめ ケアマネ不足の本質を直視し、実効性ある改革を

ケアマネ不足の背景には、制度設計の不備や利権構造、実務軽視の研修制度、経済的・年齢的負担といった複合的な要因が存在します。これらを一つずつ丁寧に見直し、実際に現場で働くケアマネが増えるような仕組みを整えることこそ、介護難民を救い、日本の介護保険制度を持続可能なものにする鍵です。見た目の数字合わせではなく、「誰が、どうすれば働き続けられるのか」を主眼に置いた真の改革が、今求められています。

 

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