在宅経管栄養法の経鼻胃管、胃瘻(胃ろう・ペグ)、P-TEG、腸ろうの名称や種類の違い、中心静脈栄養の特徴と対応のポイントについてまとめました。
在宅看護・介護の中で、口からの栄養摂取が難しいケースの中に、経管栄養という手段で栄養を投与している場合があります。
介護分野でよく聞くのは胃ろう(ペグ・PEG)ですが、その他にもいろいろな経管栄養があります。
どんな特徴・方法なのか、万が一抜去事故に遭遇したらどうするか、介護看護の観察の注意点などポイントをまとめて紹介します!
在宅経管栄養法とは
在宅経管栄養法とは、高齢者や障害の後遺症、重度の精神疾患、認知症の進行などの理由により、重度の嚥下障害、意識障害、食思不振などが生じ、口から栄養摂取が困難な方に行われる栄養確保の手段です。
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胃瘻、胃ろう、PEG、ペグとは
胃瘻・胃ろうは、業界ではペグ(PEG=Percutaneous Endoscopic Gastrostomy : 経皮内視鏡的胃瘻造設術)という名称で呼ばれ、手術で胃にカテーテルを通して直接栄養剤を注入する手段です。内視鏡や専用の器具(オブチュレータ)を用い、医師が手術で造設します。
胃ろう・ペグのカテーテルの種類
胃ろうカテーテルには大きく分けて2種類(4種類)あります。違いは図のように、ろう孔(カテーテルを挿入している穴)と胃の内側と体外をどのように固定しているかです。
胃の内側固定版が「バルーン型」のペグ
バルーン型の胃ろう(ペグ)は、ろう孔にカテーテルを挿入した後に、先っぽの部分の風船に蒸留水を注入して膨らませて固定するタイプです。バンパー型と比較すると、胃の中でバルーンが割れたり、水が漏れてバルーンがしぼんでカテーテル脱落などの事故が若干多いと言われ、注意して管理が必要です。
胃の内側固定版が「バンパー型」のペグ
バンパー型の胃ろう(ペグ)は、バルーンのような形でなく、硬いバンパーで胃内を固定するタイプです。バンパー型の胃ろう(ペグ)は胃の穴がよっぽど広がらない限りは抜けないので脱落は少ないと言われます。そのかわり硬いため脱落した場合にはろう孔を損傷したりする可能性もあります。硬いバンパーが胃壁にずっと接触していると潰瘍等のトラブルにつながるため、多少カテーテルに遊びを作ってあるか確認し管理します。
体外固定版が「ボタン型」と「チューブ型」
図で紹介したのはチューブ型の胃ろう(ペグ)です。ろう孔からチューブが出ていて、常にブラブラと存在している形です。この他にチューブがついていないで穴のカバーのような形で、浮き輪の空気の口のような栓を用いた「ボタン型」の胃ろう(ペグ)もあります。
胃ろう(ペグ)の手術費用 交換費用 栄養剤の費用
胃ろう(ペグ)の費用は、増設手術だけでなく、2か月~6か月に1回くらいの頻度でカテーテル交換費用1~2万円程度、栄養剤の費用が掛かります。
いずれも医療保険の適応となることが多いです。保険適応で医薬品扱いの人工栄養剤1か月分の費用は2万円~4万円程度になります。(費用はその方の疾患や年齢、保険種別、補助や減免の有無などなどケースバイケースです)
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経鼻経管栄養とは
経鼻経管栄養とは、言葉の通り「鼻から管(カテーテル)を入れて、胃に栄養剤を注入する」方法です。
経鼻経管栄養の特徴
経鼻経管栄養は、鼻からチューブを挿入しているため、手術で体に穴を開ける侵襲がない経管栄養です。そのため、自己抜去してしまっても重篤な合併症につながりにくいことや、不要になったらやめられるというメリットがあります。
経鼻経管栄養のデメリットとしては、鼻からのどををチューブが通っているため、不快感が常にあることや、飲み込みができないこと、唾液か気管に流れ込みやすい状態になっているなどが挙げられます。
鼻にチューブを入れている経鼻経管栄養は、見た目が「うわっ、重症!」という感じがしますが、一時的に行っている場合も多いです。
経鼻経管栄養の注意点(在宅療養や施設入所の場合)
経鼻経管栄養は、胃ろうなどと違い目の前にチューブが見え、不快感も強い栄養摂取方法です。常に視界に経管栄養のチューブが見え、鼻の不快感もあるため、自己抜去も多い経管栄養法です。また、喉に常にチューブがあり、気管への唾液流入をしやすい状態になるため、口腔ケアでも防ぎにくい誤嚥性肺炎リスクが高くなるため注意して体調管理が必要です。
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中心静脈栄養、経静脈栄養(TPN)とは
経静脈栄養・中心静脈栄養とは、イレウス・腸閉塞・消化管虚血など、腸からの栄養摂取が困難な場合の栄養投与で、カテーテルを心臓近くの太い静脈に挿入し、このカテーテルから点滴をする方法です。
鎖骨下静脈を穿刺して、そこからカテーテルを挿入し、カテーテルの先は上大静脈に固定します。
一旦上大静脈にカテーテルを留置すれば、点滴のように何度も抜き差しすることなく栄養注入が行えますが、感染等の合併症のリスクは高い栄養投与方法と言われます。
中心静脈栄養の適応
2週間以内の絶食状態ならば一般的な点滴(抹消静脈栄養)で対応することが多いですが、腸からの栄養吸収が2週間以上できない状態の場合は抹消では対応できない高栄養剤を投与するため中心静脈栄養の適応となると言われます。
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経管栄養の理由とケアプランに基づく介護
在宅経管栄養法の経鼻胃管、胃瘻(胃ろう・ペグ)、P-TEG、腸ろうとなった経緯や理由は様々です。経管栄養の方に関わる立場により対応が異なります。経管栄養という行為事態が、家族はできても資格や研修を受けた上で許可された介護事業者しか基本的には部外者はできない医療行為です。
介護職員やその他の介護サービスやケアとしてその方に関わっている場合、経管栄養の方針や気になる点などがあった場合、ケアマネジャーに相談をしてケアの方針やケアプランについて、本人やご家族、サービス担当者を交えて話し合いの機会をもうけてもらいます。必要に応じて、医師からの意見をもらいます。経管栄養という状態は、嚥下や消化機能含め全身状態や栄養状態に医療的配慮が必要ですので、介護職員がひとりで判断や説得する問題ではありません。
情報不足で安易に家族の判断に踏みいるのはよくありません。もし、経管栄養の処置がケア内容に入っている場合や、明らかに現状の在宅介護の状態が不適切な場合、栄養状態が心配な場合、以前決めたケア方針と変わってきている場合など、基本的にはケアマネジャーに相談です。
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経管栄養の方のケアの注意点
唾液による口腔内の自浄作用が乏しくなるため口腔ケアを
口から食べ物や飲み物を摂取していれば、口腔内に唾液が分泌されて口の中の雑菌等を自然と洗い流せますが、胃ろう(ペグ)・中心静脈栄養などの経管栄養を行っている方の場合は口腔内の自浄作用が乏しくなります。
中には口腔の疾患や嚥下機能の喪失などが理由で経管栄養になっている方もいるためケースバイケースではありますが、胃ろう(ペグ)・中心静脈栄養など口腔ケアを行わないと、口の中には雑菌が繁殖します。経管栄養の方の多くは、嚥下が困難なくらいに弱っていることが多いので、雑菌がいっぱいの唾液が気管に流れ込むと誤嚥性肺炎・沈下性肺炎など感染につながります。
経鼻栄養や胃ろうなどの予期せぬカテーテルのズレ
経鼻経管栄養では、鼻から胃までカテーテルを通しており、固定は基本的にはテープ固定になっています。
経鼻経管栄養では鼻から胃までカテーテルが届いてるのが正常ですが、引っ張ってしまったりすると中途半端にずれて、ちょうど気管の入り口にでも来ていたら流動食が肺に入る危険もあります。
抜去してしまっていればわかりますが、事前に体内に入ってる長さがわかるように印をつけておくなど、中途半端に挿入された状態だった場合に適切な位置にあるかわかるようにしておき確認をしましょう。
カテーテルやテープの持続的な接触による潰瘍等の皮膚トラブル
経管栄養に限らずですが、カテーテルなどを皮膚にテープで張り付けたり、紐やゴムで固定していると、その場所に炎症が起き、そのまま放置していると潰瘍などに悪化することがあります。
胃ろうの抜去は速やかに医療機関へ連絡
胃ろう(ペグ)のカテーテルが抜けてしまったら、抜去があった場合は、速やかに医療者へ連絡して再挿入する必要があります。
「あ~抜けちゃってる。明日病院に行こう」というわけにはいきません。ピアスの穴を放っておいたらふさがってしまうように、ろう孔は抜けた状態で1日放置すると塞がってしまいます。胃はむにょむにょ動いて粘膜がくっ付き早期に修復が始まるため、穴が塞がるのも早いです。胃ろう(ペグ)のカテーテルが抜ける事故は介護施設などでは起きる可能性が高い事故なので、もし発見したらできるだけ早く看護師、身元引受人、胃ろうを手術を行っている医療機関および場合によっては救急へ連絡です。
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