NPIAP/EPUAP分類とは?読み方・褥瘡の重症度分類と評価・対応

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NPIAP/EPUAP分類(エヌピーアイエーピー/イーピーユーエーピー分類)は、褥瘡の深達度(皮膚・組織がどの深さまで損傷しているか)を国際的に共通の基準で示す分類法です。米国・欧州・アジア太平洋地域の3つの団体が共同でまとめた国際ガイドラインに基づいており、日本でも国際基準を参照する場面で広く使われています。
NPIAP・EPUAPとは何か
NPIAP(エヌピーアイエーピー)
NPIAPはNational Pressure Injury Advisory Panelの略で、日本語では「米国褥瘡諮問委員会」と訳されます。1987年に設立された米国の非営利組織で、褥瘡(圧迫創傷)の予防・治療・研究に関する指針の策定や教育活動を行っています。
EPUAP(イーピーユーエーピー)
EPUAPはEuropean Pressure Ulcer Advisory Panelの略で、「欧州褥瘡諮問委員会」です。1996年にヨーロッパで設立され、主にEU加盟国を中心とした欧州の褥瘡対策の標準化に取り組んでいます。
PPPIA(ピーピーピーアイエー)
PPPIAはPan Pacific Pressure Injury Allianceの略で、「汎太平洋褥瘡連合」です。オーストラリア・ニュージーランド・日本・シンガポール・香港などアジア太平洋地域の団体で構成されており、2014年の国際ガイドライン改訂から正式に加わりました。
名称の変遷(NPUAP → NPIAP)
もともとこの米国の団体はNPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)という名称でした。2016年4月、NPUAPは団体名と用語を大幅に変更し、現在のNPIAP(National Pressure Injury Advisory Panel)となりました。
この変更の背景には、褥瘡は必ずしも皮膚に潰瘍(Ulcer)が生じるとは限らず、軽度の損傷でも「圧迫による創傷(Pressure Injury)」として捉えるべきという考え方があります。「Ulcer(潰瘍)」から「Injury(創傷・損傷)」への変更によって、発赤段階のような皮膚表面が破綻していない状態も明確に含まれるようになりました。
なお、欧州のEPUAPは現在も「pressure ulcer(褥瘡)」という用語を継続使用しており、名称変更についてはEPUAP内部でも引き続き議論されています。日本国内の文献・資料では、変更前の「NPUAP/EPUAP分類」という表記が依然として多く使われています。
国際ガイドラインの成り立ち
NPIAP・EPUAP・PPPIAの3団体は、褥瘡の予防と治療に関する国際ガイドラインを共同で策定・改訂してきました。最新版は2019年版("Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline." Emily Haesler編、EPUAP/NPIAP/PPPIA)です。
この国際ガイドラインは、急性期病棟・リハビリ・長期療養施設・在宅まであらゆる臨床現場に適用でき、医療専門職・患者・介護者を対象として作成されています。褥瘡の分類(カテゴリ/ステージ)だけでなく、リスクアセスメント・予防・治療・栄養・体位変換など幅広いトピックを網羅しています。
2019年版の分類に関する写真・図はNPIAP(現NPIAP)に著作権があり、再利用には許諾が必要です。
カテゴリ/ステージという表記について
かつてNPUAPは「ステージ分類(Stage Ⅰ〜Ⅳ)」、EPUAPは「グレード分類(Grade)」とそれぞれ異なる名称を使用していました。2009年の共同改訂で「カテゴリ(Category)」に統一されましたが、米国では「ステージ(Stage)」の使用が根強く残っており、現在も「カテゴリ/ステージ」と併記する形が多く使われています。
日本では「カテゴリ」または「ステージ」のどちらかの表記が施設によって異なる場合があります。どちらも同じ分類を指しています。
重要な注意点として、ステージという言葉はⅠからⅣへと「段階的に進んでいく」印象や、治癒がⅣからⅠへと逆行する印象を与えやすいという問題があります。褥瘡は常にステージⅠから始まって順に進行するわけではなく、また治癒する際にステージⅣからⅠへと段階的に改善していくわけでもありません。この点は現場での誤解が生じやすいため、注意が必要です。
NPIAP/EPUAP分類の6区分
NPIAP/EPUAP分類は現在、以下の6つの区分で構成されています。

カテゴリ/ステージⅠ:消退しない発赤(Non-blanchable Erythema)
骨突出部位に限局した、皮膚の損傷を伴わない発赤です。指で圧迫しても白く変色しない(消退しない)非白化性発赤が特徴です。皮膚の変色・熱感・浮腫・硬結・疼痛が認められる場合もあります。
皮膚が暗色系の方では発赤が視認しにくいことがあるため、熱感・硬結・疼痛などの触診による確認が重要です。
カテゴリ/ステージⅡ:部分層欠損(Partial-thickness Skin Loss)
真皮までの皮膚欠損で、創底が赤色〜ピンク色調の浅い開放潰瘍として現れます。スラフ(黄色調の壊死組織)を伴わないことが特徴です。血清で満たされた水疱もこのカテゴリに分類されます。
カテゴリ/ステージⅢ:全層皮膚欠損(Full-thickness Skin Loss)
皮下脂肪組織が露出する全層の皮膚欠損です。骨・腱・筋肉は露出していません。スラフが存在することがありますが、深達度の判定を妨げるほどではありません。ポケットや瘻孔が存在することもあります。
創の深さは解剖学的部位によって大きく異なり、皮下組織の乏しい鼻梁部・耳介部・後頭部・踝部では浅く、脂肪層の厚い部位では非常に深くなることがあります。
カテゴリ/ステージⅣ:全層組織欠損(Full-thickness Tissue Loss)
骨・腱・筋肉の露出を伴う全層組織欠損です。スラフやエスカー(硬く黒色調の壊死組織)が付着していることがあり、ポケットや瘻孔を伴うことが多い状態です。
筋肉・支持組織・骨にまで損傷が及んでいるため、骨髄炎や骨炎を引き起こすリスクがあります。骨・筋肉が視認または直接触知できる場合があります。
深部組織損傷(DTI)疑い(Suspected Deep Tissue Injury)
皮膚表面の損傷は軽微または皮膚が正常に見えながら、深部組織(皮下軟部組織)が圧力やせん断力によって損傷している状態です。限局性の紫または栗色の皮膚変色、あるいは血疱として現れます。
一見表面上の損傷が軽度に見えながら、急速に悪化して深い潰瘍へと進行することがあるため、早期の注意深い観察が必要です。
判定不能(Unstageable)
スラフ(黄色〜茶色の壊死組織)やエスカー(黒色の壊死組織・痂皮)によって創底が完全に覆われており、実際の深達度がⅢかⅣかを判定できない状態です。壊死組織が取り除かれるまでは正確な分類ができません。
評価の進め方
NPIAP/EPUAP分類は「深達度」のみに着目した分類法です。評価の基本的な流れは以下のとおりです。
評価結果の見方と対応の方向性
NPIAP/EPUAP分類は深達度のみを示すものであり、それ単体では治療の全体方針を決定できません。分類の結果はあくまで「深さの程度」として捉え、その他の要素(大きさ・感染・滲出液・ポケット・栄養状態など)とあわせて総合的に判断します。以下は対応の方向性の目安です。
| 分類 | 損傷の程度 | 対応の方向性(目安) |
|---|---|---|
| カテゴリ/ステージⅠ | 皮膚表層(発赤のみ) | 除圧・圧力分散・皮膚保護。体位変換の頻度を見直す |
| カテゴリ/ステージⅡ | 真皮まで(浅い欠損・水疱) | 湿潤環境の維持(ドレッシング材)・感染予防 |
| カテゴリ/ステージⅢ | 皮下脂肪まで(全層欠損) | 医師・看護師・WOCナースとの連携。壊死組織への対応・感染管理 |
| カテゴリ/ステージⅣ | 骨・腱・筋肉まで(重篤) | 医師・専門職による治療介入が必要。手術適応の検討も |
| DTI疑い | 深部損傷の可能性 | 進行に注意。医師・看護師に早急に報告し経過観察を強化 |
| 判定不能 | 深さ評価ができない | 壊死組織の処置後に再評価。医師・看護師に相談 |
NPIAP/EPUAP分類だけではリスクアセスメントはできないという点も重要です。たとえばカテゴリ/ステージⅠでも、患者の可動性・栄養状態・皮膚の脆弱性などによって重症化リスクは大きく異なります。ブレーデンスケールやOHスケールなどのリスクアセスメントスケールと組み合わせることが大切です。
DESIGN-R®2020との関係・使い分け
NPIAP/EPUAP分類と改定DESIGN-R®2020は、いずれも褥瘡を評価するツールですが、評価する内容が異なります。
| 比較項目 | NPIAP/EPUAP分類 | 改定DESIGN-R®2020 |
|---|---|---|
| 開発者 | NPIAP・EPUAP・PPPIA(国際3団体) | 日本褥瘡学会学術教育委員会 |
| 評価対象 | 深達度(深さ)のみ | 深さ・滲出液・大きさ・炎症/感染・肉芽・壊死・ポケットの7項目 |
| 経過追跡 | できない(点数化なし) | できる(スコアの変化で治癒過程を数量化) |
| 主な用途 | 重症度の分類・国際比較 | 重症度分類+治癒過程の経時的評価 |
| 主な使用地域 | 国際的(米国・欧州・アジア太平洋など) | 日本国内が中心(国際的にも評価が高い) |
NPIAP/EPUAP分類の「深達度」は、改定DESIGN-R®2020の「D(深さ)」の項目とおおむね対応しています。たとえばカテゴリ/ステージⅠはDESIGN-R®のd1、カテゴリ/ステージⅡはd2、カテゴリ/ステージⅢはD3、カテゴリ/ステージⅣはD4〜D5に相当します。
日本での位置づけ
日本国内では、日本褥瘡学会が開発した改定DESIGN-R®2020が多くの医療・介護施設で標準的に使われています。一方でNPIAP/EPUAP分類は、国際ガイドラインや外国文献を参照する際、また国際的な基準での深達度の記録・報告を求められる場面で活用されます。
2019年の国際ガイドラインでは、改定DESIGN-R®2020が信頼性・妥当性の高いツールとして紹介されており、日本発の評価スケールが国際的に認められています。実臨床では両者を相互補完的に使うことで、より多角的な褥瘡評価が可能になります。
よくある質問(Q&A)
同一の組織です。2016年に名称を「NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)」から「NPIAP(National Pressure Injury Advisory Panel)」に変更しました。「圧迫潰瘍(Pressure Ulcer)」から「圧迫創傷(Pressure Injury)」への概念の変化を反映したものです。古い文献・教材には「NPUAP分類」と記載されている場合があります。
同じ分類を指しています。欧州では「カテゴリ(Category)」、米国では「ステージ(Stage)」の語が使われてきた経緯があり、現在は「カテゴリ/ステージ」と併記されることが多いです。
そうとは限りません。たとえば初めからステージⅢやⅣ相当の深い損傷として発見されることもあります。また、DTI疑いの場合は皮膚表面がほぼ正常に見えながら、急速に重篤な潰瘍へと進行することがあります。
いいえ。NPIAP/EPUAP分類は一度失われた組織の種類に基づく分類であり、治癒過程でカテゴリ/ステージの数値が下がることはありません。たとえばステージⅣの褥瘡が肉芽組織で満たされて治癒に向かっていても、「ステージⅣが治癒している」と評価します。治癒過程の経時的な追跡にはDESIGN-R®2020が適しています。
介護職員が独自に診断・分類を行うことは想定されていませんが、発赤や皮膚の変化を観察し、看護師・医師に報告する際の共通言語として基礎的な知識を持つことは有益です。特に「指で押して白くなるか(白化性発赤)」「白くならないか(非白化性発赤:カテゴリ/ステージⅠの疑い)」の区別は、早期発見のための重要な観察ポイントです。



