MMSEとは?項目や点数の評価方法、認知症の疑い・MCIのカットオフ値

この記事はプロモーションが含まれます。
認知症のスクリーニング検査として広く用いられているMMSE(ミニメンタルステート検査)について、詳しく見ていきましょう。
MMSEは、短時間で実施できる代表的な認知機能スクリーニング検査で、見当識、記銘、注意・計算、遅延再生、言語、図形模写(構成・遂行)など、複数の認知領域を合計30点で評価し、認知機能低下の「疑い」を拾い上げたり、経時的変化を追ったりする目的で広く用いられています。
MMSEとは?(Mini-Mental State Examination)
MMSE(ミニメンタルステート検査)は、短時間で実施できる代表的な認知機能スクリーニング検査です。
見当識、記銘、注意・計算、遅延再生、言語、図形模写(構成・遂行)など、複数の認知領域を合計30点で評価し、認知機能低下の「疑い」を拾い上げたり、経時的変化を追ったりする目的で広く用いられます。
重要MMSEは著作権のある検査で、設問文そのものを転載・配布することには制限があります。株式会社日本文化科学社から販売されているMMSE-Japanese(精神状態短時間検査)が日本版として販売されております。インターネットや書籍から設問を写したものを独自に配布したり、無断でコピーした用紙を使ったりすることは控えた方が良いです。
MMSEの評価項目
MMSEは11の分類からなる、一連の質問と課題から構成されています。
MMSEは大きく「見当識」「記銘」「注意・計算」「遅延再生」「言語」「図形模写(構成)」といった領域で構成されます。設問の言い回しは載せませんが、臨床的には次のように何の力が落ちているかを推定する材料になります。(このサイトでは著作権に配慮するために具体的な質問方法などの掲載は避けておりますが、Youtubeなどで探すと評価方法などを解説している動画などもありました)
| 見当識 | <時に関する見当識> 「時」に関するいくつかの質問に答える <場所に関する見当識> 「場所」に関するいくつかの質問に答える |
|---|---|
| 記銘 | いくつかの単語を繰り返して言う |
| 注意と計算 | <シリアル7課題> 暗算で特定の条件の引き算をする <逆唱課題> 特定の単語を後ろから言う |
| 再生 | 「記銘」で使用したいくつかの単語を言う |
| 呼称 | 日常的にありふれた物品の名称を言う |
| 復唱 | 教示された頻繁には使われることのない文を正確に繰り返す |
| 理解 | 教示されたいくつかの命令を理解し実行する |
| 読字 | 紙に書かれた文を理解し実行する |
| 書字 | 筋が通った任意の文を書く |
| 描画 | 提示された図形と同じ図形を書く |
MMSEでの認知症の疑いのカットオフ値
MMSEは「診断」ではなく「スクリーニング」なので、カットオフは目的で変わります。研究や文献を確認すると、認知症の疑いの目安として 23点/24点(24点未満) がよく使われているため、介護施設や臨床的にも23点くらいをカットオフ値として考えていることが多いです。
ただし、特にご高齢の方だと教育歴の影響があり、同じ点数でも背景で意味が変わり得ます。
現場的には「MMSEで24点未満の場合、認知症の疑いが強まる」→「生活機能、家族情報、身体状態、せん妄評価、画像や採血などの医学的評価へつなぐ」という位置づけが安全です。
MCI(軽度認知障害)のカットオフ値
MMSEは天井効果が出やすく、MCI(軽度認知障害)の拾い上げには弱いと言われがちです。そのためMCIを念頭に置く場合、研究によって 26/27 や 28/29 といった高めのカットオフが検討されることがあります。
…とはいえ、30点満点の29点だとほぼ満点なので、ちょっと現実的ではないですよね。
一方で、少し古い文献では別の閾値(例:22点以下など)が扱われている報告もあり、結局は「誰に」「何の目的で」使うかで適切値が変わります。
実務では、MCIを疑う場面ではMMSE単独で決めに行かず、後述のMoCA等を併用して評価設計するほうが、説明可能性も高くなります。
HDS-Rとの違い(日本の現場でよく比較されるポイント)
HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は日本で広く使われる30点満点の検査で、MMSEと同じく見当識、記銘・遅延再生、注意などを含みますが、MMSEにあるような書字や図形模写などの動作性課題が少ない(またはない)設計です。
そのため、失語・失行・視空間障害の手がかりとしてはMMSE側が拾いやすい一方で、HDS-Rは日本語環境で運用しやすい面があります。どちらも「疑いの抽出」なので、症例の特徴に合わせて使い分けるのが現実的です。
その他の認知症テスト(MMSEだけで足りない場面の補強)
MCIの拾い上げや、より広い認知領域の評価が必要なときは、他尺度の併用がよく行われます。
MoCA
MoCAは、MCIの検出に強いとされ、MMSEで高得点でも引っかかることがあります。
Mini-Cog / GPCOG
Mini-Cog / GPCOGは、短時間で一次スクリーニングに使いやすい。MMSEと比較した研究レビューもあります。
点数より「落ち方」を見る
MMSEは合計点だけを見ると誤解が起きます。臨床で役立つのは、むしろ「どの領域で落ちたか」です。例えば、見当識が大きく落ちるならせん妄や身体疾患の影響も疑いますし、遅延再生が目立つなら記憶障害優位の病型を想起します。こうした落ち方が、追加検査の選択や家族への説明をするときに役立ちます。
MMSEの著作権と運用上の注意(施設内での扱い)
MMSEについては、近年、著作権の扱いに注意が必要な検査であることが指摘されています。
MMSEは1975年に開発された歴史の長い認知機能スクリーニング検査ですが、2000年頃から開発者側が知的財産権を明確に主張するようになりました。その後、2001年にはMMSEの知的財産権が Psychological Assessment Resources(PAR)社 に移管されています。
この経緯により、MMSEは現在、自由に使用できる検査ではなく、正規の手続きを踏んで使用する検査という位置づけになっています。具体的には、MMSEを業務として使用する場合、PAR社が提供する正規版を購入し、使用料を支払う必要があります。
日本においても同様で、日本語版のMMSEは 株式会社日本文化科学社 から「MMSE-J(日本語版 精神状態短時間検査)」として販売されています。この日本語版は、原版出版社であるPAR社との正式な契約に基づいて作成されていることが明記されています。
記録用紙は50名分で7,700円で販売されています。
関連リンク:日本語版MMSE「MMSE-J(日本語版 精神状態短時間検査)」|株式会社日本文化科学社
そのため、施設内でMMSEを実施する際には、インターネットや書籍から設問を写したものを独自に配布したり、無断でコピーした用紙を使ったりする運用は避ける必要があります。特に、研修資料やマニュアルに設問をそのまま掲載することは、著作権上の問題が生じる可能性があります。
実務上は、「正規版の検査用紙を使用して評価を行い、記録には点数や所見のみを残す」という形で運用している施設が多く、この方法であれば著作権上のリスクを抑えつつ、臨床的にも十分な情報を共有することが可能です。
MMSEは非常に有用な評価尺度である一方、歴史が長いがゆえに、昔ながらの感覚で使われ続けてしまっている検査でもあります。現在の制度や著作権の位置づけを理解したうえで、施設として適切な形で導入・運用することが重要です。
心配な場合には、厳格な利用の決まりを設けていないHDS-Rを用いる方が自由度が高く運用できると思います。
まとめ
MMSEは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのコメディカルや看護師などの養成校でも認知症のスクリーニング検査としてメジャーなものであると紹介されている評価方法の一つですが、実際に利用する際には著作権の問題があります。評価スケールに著作権があるということを養成校の教員が知らなかったりして指導していないため、現状では知らないうちに著作権フリーな評価方法と誤解されてMMSEが広まってしまっている状況にあります。
同じような例として、日本での介護者の介護負担を評価するスケールとして在宅介護の分野などでよく使われていた、国立長寿医療研究センターが開発をした「Zarit介護負担尺度(ZBI)」が評価尺度の使用にあたっても、国立長寿医療研究センターが著作権を主張しテキストや質問紙票の購入が必要になったという例があります。
こちらも在宅介護の分野ではメジャーな評価方法になり、自治体のホームページなどでも評価用紙がダウンロードできるようになっていましたが、各自治体に利用の有料化が周知されることによりこの評価を利用する頻度が減ってしまっていると感じます。
評価スケールの開発には多大な時間と労力がかかっているので仕方のないことですが、途中から有料になったり利用に制限がかかったりすると、どうしても利用を躊躇してしまう部分があります。いい仕組みができるといいのですが…。


