看取り介護対応のご利用者に対するリハビリテーション介入例
 

平均寿命が延びたとは言え、誰しもがかならず最期を迎え、看取り対応や看取り前提でのケアの方針の中リハビリテーション介入をするケースも例が増えてきました。
最期を看取る経験は、医療職や介護職の方でないとなかなか経験することはないですよね。
また医療職や介護職で働いていても、決して慣れるものでもありません。
今回は「最期を看取る際に大事なポイント」について理学療法士の視点からお伝えしたいともいます。

看取りとは

看取りについての詳細はこちらの記事で解説しています。

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看取り介護でのリハビリ 動けないことによる苦痛を取り除く

最期を迎えるにあたり、本人の意識は朦朧となりご自身で身体を動かすのが難しくなっていきます。身体を動かせないと私達でも苦痛に感じてしまいますよね。
「寝たきり」と呼ばれる状態になると同じ場所に圧がかかるため、褥瘡予防を目的に「体位変換」が重要だと広く認識されるようになりました。

もちろん、褥瘡を防ぐために体位変換という受動的な対応策も大切なのですが、ご本人にとって少し能動的な対応として身体を動かせないことによる苦痛についても配慮して身体を動かす支援をすることが大切です。

最近では自動で体位変換を行える福祉機器(ベッド)もあるので利用して定期的に自分で少し寝返ることや、介助のときに声掛けをしてご本人の気になるところの身体を動かす補助をするのもいいでしょう。美容室でシャンプーしているときに「かゆいところはないですか」と声をかけてもらえて助かることがあるように、自分で思うように動けない人にとって、「少し姿勢変えますか?」と声をかけてもらえることはその何百倍もありがたいことです。また「手で触れる」ことも大切でさすったり、触れ合って手を重ねることでも苦痛は和らぐと言われています。

看取り介護でのリハビリ 関節拘縮の進行を予防する

看取りの状態で臥床時間が長くなると、動けないことにより身体の筋肉は固く、短くなります。
筋肉が固く、短縮する事で私たちの関節は曲げたり、伸ばしたりができなくなってしまいます。この状態を「関節拘縮」と呼びます。

 

具体的には股関節や肩関節が拡がらず更衣が難しくなる、指が閉じたまま、足首が常につま先立ちの様な形になるなどが考えられます。

 

著しい関節拘縮が生じることで、関節を動かす際に本人には、かなりの痛みが生じてしまいます。介助者や医療従事者が関節を適切に動かすことで、著しい拘縮は予防できる可能性がありますので拘縮予防について共有することも必要ですね。

また最近では「ポジショニング」のための様々な拘縮予防グッズもみられます。
適切な関節可動域運動とポジショニングを併用し関節拘縮や廃用症候群の進行を予防する事が大切です。

看取り介護での介入 身体の清潔を保持する

寝たきりの状態でも汗をかきます。また排泄に伴い身体が汚れてしまうこともあるでしょう。股関節や腋窩、手の指など関節拘縮が生じてしまうと特に不潔になりやすいため、更衣の際などに関節を動かし可動域を確保することが清潔の保持に繋がります。

口腔内のケアや爪を切ったりすることも大事です。関節を動かすことや口腔内のケアなど不安に思う事が多いかとは思いますが、療法士や看護師に相談し介護者も適切な方法を知っておくことが望ましいでしょう。

リラックス・衛生保持・浮腫などに効果的な「足浴」

足浴の目的としては様々ありますが、看取り対応の方にとっては入浴を満足にする体力が無かったり、生活の楽しみの一つなどに取り入れられています。

看取り対応の場合には、ご本人・ご家族などの気持ちをくみ取りながら、医師と相談して進めるようにしましょう。

  • 下腿から足部に付着した汚れや浸出液を落とし清潔を保つ。
  • 血行循環を促進させ代謝を促進する、浮腫などの症状の軽減を図る。
  • 温熱作用によりリラクゼーション効果や爽快感、安眠を促す。

看取り介護でのリハビリ 最期まで食事し味わう

食事は人間が生きていくうえで必ず必要な行為であり、楽しみである方も多いと思います。最期まで口から食べることができれば、経口摂取を確保することが大切です。また、胃瘻からの食事の場合でも、一部だけ口に含んだり、臭いを味わったりすることも行えます。胃ろうなどで経口摂取ができない方もいますが、数十年にわたり当たり前に食事をしていた人が味を感じる機会を失うということは苦痛は大きなものです。

嚥下機能が低下している場合は、「誤嚥性肺炎」の危険性もあるため、食事形態の工夫や食べる際の姿勢も注意する必要があります。その際は看護師や栄養士、言語療法士に相談することをおすすめします。

まとめ

最期を看取る機会は、なかなかあるものではありません。
「リハビリ」というと治療の過程をイメージする方も多いかもしれませんが、現在の身体機能を維持するためにも上記でお伝えしたリハビリ介入は必要です。

看取りケアはチームで分担してご本人の生活様式や人生で大切にしてきたことなどを考えながら、またご家族にとっても最期の時間を後悔なく親孝行の気持ちなどを反映させていくためにいろいろな想いが巡るケアの集大成です。個々のスタッフが行っていくことはひとつひとつの行為かもしれませんが、ひとりひとりの関わりがQOLにつながります。

実際のケアには介護職員、理学療法士、作業療法士、看護職員など様々な職種が携わると思いますが、ご本人やご家族の気持ちを十分に取り入れて医師やケアマネジャーを中心に関わっていきましょう。また、在宅で看取り対応を行う場合には最期の迎え方についてご本人やご家族の気持ちを十分に理解したうえで、緊急時の対応についていろいろな状況を想定して医師も含めて取り決めを行いましょう。

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