ノーマライゼーションの理念とは 8原理・障害福祉施策や法律の例

 

ノーマライゼーションという理念を知っていますか?1950年代後半に提唱された「障害者はあたりまえの、普通の、生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築する」という理念のことです。ノーマライゼーションの歴史、8原理、バリアフリーの違い、障害福祉や介護・障害児教育でのノーマライゼーションの例、日本の厚生労働省・総務省の方向性について紹介します。

ノーマライゼーションの理念とは

ノーマライゼーションとは、「障害者はあたりまえの、普通の、生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築する」という社会理念のことです。

ノーマライゼーションの提唱者はデンマークのニルス・エリク・バンク・ミケルセンで、1950年代後半に提唱されました。

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ノーマライゼーションの歴史

1950年代後半に、デンマークのニルス・エリク・バンク・ミケルセンは、知的障害者の入所施設の生活が非人間的な環境にあることを問題として、知的障害者の生活条件を一般市民と同じにすべきであるという考え方を打ち出しました。知的障害者も「あたりまえの」「普通の」生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築するという考えでした。

この考えをノーマライゼーションの理念と呼び、施設に入所する障害者の生活がまだ非人間的で差別的であった価値観の中で注目を集めました。

さらに、スウェーデンでノーマライゼーションの運動に携わったベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションの原理を整理し、8つの原理に集約してわかりやすく世界に発信しました。

ノーマライゼーションの理念は、北欧、北米をはじめ、先進諸国に広がり、具体的には脱施設化と施設解体、地域生活の実現という障害者福祉政策の転換への影響力となりました。またノーマライゼーション発祥の地、デンマーク、スウェーデンは、ともにこれらを推進していく活動に、知的障害のある子どもを持つ親や知的障害のある当事者自身が参画していきました。

このように、ノーマライゼーションには歴史があり、諸国での社会理念としても取り入れられて進歩しています。

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ベンクト・ニィリエの「ノーマライゼーションの8原理」

ベンクト・ニィリエはノーマライゼーションの運動に携わる中で、障害者であっても、住居や教育、労働環境、余暇の過ごし方など、日常生活の条件をできる限り、障害のない人と同じような条件にすることを目的とし、わかりやすくかつ現実的な原理として「ノーマライゼーションの8原理」を提唱しました。

  1. 一日のノーマルなリズム
  2. 一週間のノーマルなリズム
  3. 一年間のノーマルなリズム
  4. ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
  5. ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
  6. ノーマルな性的関係
  7. ノーマルな経済水準とそれを得る権利
  8. ノーマルな環境形態と水準

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ノーマライゼーションとバリアフリーの違い

ノーマライゼーションとバリアフリーは似た言葉であり意味が混同しやすいので違いを紹介します。高齢者、障害者などの社会参加・活動を妨げている物理的、精神的な障害を取り除くために設備やシステム、制度を整備することをバリアフリーといいます。

ノーマライゼーションが「障害者はあたりまえの、普通の生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築する」という社会理念であるのに対し、バリアフリーは「段差にスロープやエレベーターをつける」「点字や点字ブロックの整備」「障害者に偏見の目を向けない」などの手段という違いがある言えます。

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ノーマライゼーションとユニバーサルデザインの違い

ノーマライゼーションとは、「障害者はあたりまえの、普通の、生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築する」という社会理念のことです。ユニバーサルデザインの考え方と近い内容です。

ノーマライゼーションは、障害のある人という対象に対して当たり前に普通の生活をできるという社会システムの側面が強い言葉であることに対し、ユニバーサルデザインはいろいろな特性を持つ人で構成される社会全体で、誰でも利用しやすい、生きやすい設計をあらかじめ作っていくという意味なので、対象が少し違います。一方で、ノーマライゼーションの理念でも、ユニバーサルデザインの考え方でも、障害の有無等に関わらず、みんなが暮らしやすい世の中を目指すという方向性は似ています。

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ノーマライゼーションの例

バリアフリーは障害を小さくする手段なので実例はわかりやすいと思います。一方、ノーマライゼーションは理念であるという違いがあるため、実例を挙げることは難しいのですが、以下のような制度化や取り組みがノーマライゼーションに基づくものである言えるのではないかという例を紹介します。

障害福祉や介護におけるノーマライゼーションの例

日本では、障害者自立支援法が「障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から障害者基本法の基本的理念」に沿って、2006年4月に施行されました。。

地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるために、障害者の日常生活や社会生活を総合的に支援するための法律として2013年4月に障害者総合支援法が施行されました。2016年4月には、障害者差別解消法が施行され「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進すること」が目的として掲げられています。

障害者や高齢者も、あたりまえの、普通の生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築するというために、その対象者の権利を擁護し、社会制度や自立とつなげる役割として支援相談員やケアマネジャーなどの仕事があります。

教育におけるノーマライゼーション(障害児対応)の例

教育分野におけるノーマライゼーションとしては、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備や児童生徒の特別な教育的ニーズに対応した就学指導の在り方の改善が行われています。わかりやすい例としては、学校教育法に規定されていた「特殊教育」や「特殊学級」などの名称や文言についても、差別的でありノーマライゼーションの理念には沿っていないため「特別支援学級」と呼ばれるようになりました。また、さらに障害児を区分するような形を変えていくために、通常の学級に籍を置き、各教科等の指導は主として通常の学級で受けながら、障害の状態等に応じた特別な指導を通級指導教室で受けるということも行われるようになりました。

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ノーマライゼーションと日本の厚生労働省・総務省の方向性

日本では、日本国憲法で基本的人権を保障することをベースとし、「障害者基本法」などの法律で障害者の自立や社会参加などを支援するための施策を定めています。

障害者基本法では、障害者福祉施策の基本となる事項と国や地方公共団体の責務を規定しており、医療、介護、年金、教育、職業相談、雇用の促進、住宅の確保、公共的施設のバリアフリー化、情報の利用におけるバリアフリー化、相談、経済的負担の軽減、文化的諸条件の整備などが施策として実行されています。

ノーマライゼーションは障害者福祉を支える理念となっているだけでなく、現代では社会福祉の理念としてもこのノーマライゼーションの考え方そのものが浸透してきています。しかし、実際の障害者支援の制度や支援内容を見てみると、障害者や弱者に対して、自立を阻害している要因や障害そのものをトレーニングして社会適応させるという側面もあります。

この記事でも紹介したように、ノーマライゼーションの理念は、障害者が普通の生活を送る権利があり、その生活を支える社会を構築することであるため、差別や不自由なく普通の生活を送れるようにする手段としてトレーニングや援助などがあるという理解が必要です。

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