高額療養費支給制度とは?医療費自己負担いくら以上が対象か、年収ケース別で解説

 

高額療養費支給制度は、医療費の自己負担が過重にならないよう家計をサポートする重要な仕組みです。
2025年8月から、この制度が大きく改正され、所得区分が13段階に細分化されることで、より公平な負担が実現すると言われていますが、データを見ると、後期高齢者医療制度などで医療費負担がもともと低い設定となっている中で、高齢者への高額療養費支給は多額となっており、本当にこの見直しが適切であるのかは疑問があります。本記事では、高額療養費支給制度の基本的な仕組みや、改正後の自己負担限度額、今後の制度改革で注目すべき観点について、年収別の具体例、年代別の支給額などのデータを挙げながらわかりやすく解説します。

高額療養費支給制度とは?

高額療養費支給制度は、医療費の自己負担が家計に過重なものとならないよう、一定の月額を超えた部分を後日保険者から払い戻す制度です。この仕組みは、日本の公的医療保険制度の一環として、全ての被保険者が利用可能です。

高額療養費支給制度の対象

同じ月内に同じ保険者の下で医療機関や薬局を利用し、自己負担額が限度額を超えた場合。

支給方法(払い戻し)

窓口で支払った後に、超過分が事後申請により払い戻されます。(保険者から償還払い)

払い戻しは、医療機関等から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行われるため、診療月から3ヵ月以上かかります。

高額療養費支給方法(払い戻し)

高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)

限度額

所得区分に応じて異なる自己負担限度額が定められています。2025年8月から、この制度の見直しが予定されており、所得区分を13段階に細分化し、自己負担限度額の引き上げが検討されています。

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制度を利用するための手続き

高額療養費制度を利用するには、以下の手続きが必要です。

限度額適用認定証の取得

事前に保険者(健康保険組合や国民健康保険窓口)から認定証を取得することで、窓口での支払額を限度額までに抑えることが可能です。

マイナ保険証を利用している場合は認定証・申請が不要になる

限度額適用認定証が無い場合、窓口で一旦支払いを行った後に、保険者に申請して払い戻しとなる仕組みでしたが、マイナ保険証を利用の場合は、医療機関等はオンライン資格確認で限度額の区分が確認出来る為、自己負担限度額までの支払いとなります。

申請書類の提出

窓口で通常通り支払った場合、保険者に申請書類を提出し、後日払い戻しを受けます。例えば、1月10日から2月10日まで診療を受けた場合、①1月10日~1月31日 ②2月1日~2月10日 で自己負担額をそれぞれ分けて、自己負担限度額を超えた分が払い戻しされます。(それぞれの月の分の申請が必要です)

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ケース別 年齢・年収ごとの自己負担限度額

年齢・年収ごとの自己負担限度額ごとの患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(現行2024年1月時点)は以下のようになっています。健康保険と国民健康保険で標準報酬や所得の計算方法が異なるため、あくまでも控除などをしない年収の目安となります。

70歳未満の方の区分

患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(現行)
年収区分 負担割合 月単位の上限額(円)
年収約1,160万円〜 3割 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
多数該当: 140,100円
年収約770〜約1,160万円 3割 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
多数該当: 93,000円
年収約370〜約770万円 3割 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
多数該当: 44,400円
〜年収約370万円 3割 57,600円
多数該当: 44,400円
住民税非課税 3割 35,400円
多数該当: 24,600円

70歳以上75歳未満の方の区分

患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(現行)
年収区分 負担割合 月単位の上限額(円)
年収約1,160万円〜 3割 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
多数該当: 140,100円
年収約770〜約1,160万円 3割 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
多数該当: 93,000円
年収約370〜約770万円 3割 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
多数該当: 44,400円
〜年収約370万円 2割 57,600円
多数該当: 44,400円
住民税非課税 2割 24,600円
住民税非課税(所得が一定以下) 2割 15,000円

75歳以上の方の区分

患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(現行)
年収区分 負担割合 月単位の上限額(円)
年収約1,160万円〜 3割 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
多数該当: 140,100円
年収約770〜約1,160万円 3割 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
多数該当: 93,000円
年収約370〜約770万円 1割※ 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
多数該当: 44,400円
〜年収約370万円 1割※ 57,600円
多数該当: 44,400円
住民税非課税 1割※ 24,600円
住民税非課税(所得が一定以下) 1割※ 15,000円

※ 課税所得が28万円以上かつ年金収入+その他の合計所得金額が200万円以上(複数世帯の場合は320万円以上)の者については2割。

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【現行】70歳未満・年収約370万円~約770万円の場合(3割負担)の高額療養費支給の例

【現行】70歳未満・年収約370万円~約770万円の場合(3割負担)の高額療養費支給の例

医療保険制度改革について 厚生労働省 保険局 令和6年12月12日 第189回社会保障審議会医療保険部会 資料2

医療費100万円かかった場合

窓口負担30万円 保険給付70万

自己負担限度額 80,100円+(1,000,000円-267,000円※)×1% = 87,430円

窓口で支払いした金額は 300,000円 だが、申請することにより後から 300,000円ー87,430円=212,570円の払い戻し(高額療養費支給)を受けられる。

マイナ保険証の場合や、限度額適用認定証を医療機関等の窓口に提出している場合は、1か月の窓口での支払いは87,430円までになる。

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直近の1年間に3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けている場合の多数該当について

高額療養費制度では、直近1年間に同一世帯内で3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けている場合、4ヵ月目以降の自己負担限度額が軽減される「多数該当」という仕組みがあります。この多数該当が適用されると、通常の限度額よりも低い金額が設定され、医療費負担がさらに軽減されます。

例えば、現行制度の場合、一般所得区分の場合、通常の限度額が57,600円であるのに対し、多数該当が適用されると44,400円に引き下げられます。この適用は家計へのさらなる負担軽減を目的としており、医療費の継続的な支出が必要な世帯にとって大きな助けとなります。適用を受けるには、保険者に確認し必要な手続きを行うことが求められます。

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2025年8月以降の改正案ポイント

2025年8月から、高額療養費支給制度の所得区分が13段階に細分化され、自己負担限度額の見直しが行われます。これにより、所得水準ごとに負担の公平性がさらに高まるとされています。

厚生労働省が示す改正後の大きなポイント

  • 所得階層が7区分から13区分に増加。
  • 能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障を構築する観点から負担能力に応じた負担を求める仕組みとする。
  • 平均的な収入を超える所得区分については、平均的な引き上げ率よりも高い率で引き上げる。
  • 平均的な収入を下回る所得区分の引き上げ率は緩和するなど、所得が低い方に対して一定の配慮を行う。

 

2025年8月に予定される高額療養費制度の見直しの方向性(案)のイメージ

2025年8月に予定される高額療養費制度の見直しの方向性(案)のイメージ

医療保険制度改革について 厚生労働省 保険局 令和6年12月12日 第189回社会保障審議会医療保険部会 資料2

2025年8月から、高額療養費制度の見直しがあると話題になっていますが、この図を見てもわかるようにどう見てもただ負担が増えているようにしか見えないものです。

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75歳以上の後期高齢者の医療保険の在り方にもメスを

医療制度間の財政として、現役世代が支払った後期高齢者への支援金で後期高齢者の医療費を賄っている状況であることは近年話題になっています。その状況を示した厚生労働省の資料がこちらです。

医療制度間の財政として、現役世代が支払った後期高齢者への支援金で後期高齢者の医療費を賄っている状況

医療保険制度改革について 厚生労働省 保険局 令和6年12月12日 第189回社会保障審議会医療保険部会 資料2

厚生労働省の資料では、70歳未満を中心に作成されていますが、75歳以上の後期高齢者に対する高額療養費の在り方についても国民の理解を得れるよう説明の必要性を感じます。もともと、後期高齢者医療制度で自己負担が少ないケースが多く、後期高齢者の約95%が年間に何らかの外来受診をしており、さらに半数は年に11回以上受診している状況です。高齢者の健康管理や心身の心配を解消していくための定期受診は仕方のないことですが、高額な医療費がかかる医療行為や、延命などについて、何歳まで認めていくのかも議論が必要と考えます。

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7割以上の高額療養費支給が高齢者に渡っている可能性が濃厚

高額療養費の推移 厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」

医療保険制度改革について 厚生労働省 保険局 令和6年12月12日 第189回社会保障審議会医療保険部会 資料2

高額療養費の支給件数は後期高齢者と市町村国保が多く、支給金額でも市町村国保と後期高齢者が高い状況です。

市町村国保に関しては、職場の健康保険(健康保険組合や共済組合など)に加入している人や生活保護を受けている人、後期高齢者医療制度の対象となる人などを除くすべての人、つまり会社員ではく自営業の方や、短時間の労働の方、現役を引退された方、無職の方などであり、市町村国保の加入者の約4割が65歳以上です。

2024年の高齢化率は、総人口に占める65歳以上の人口の割合で、29.3%と約3割ですが、約2兆3,000万円の高額療養費支給金額のうち、約1兆8,000万円が市町村国保・後期高齢者医療制度期に支給されているため、額にすると7割以上の高額療養費支給が高齢者に渡っている可能性が高いです。年を取れば重大な疾患にかかり全てを直したり延命したりしようとすれば多大な医療費がかかってしまいます。しかし、寿命という考え方もできる年齢で医療提供して延命することについて、どこまで保険を適用して対応するのかは今の日本で忖度なしにしっかりと議論しなければなりません。医師の組織としては高齢者でも誰でもいいので医療を提供して診療報酬を得たいですし、医療の力で病に打ち勝ちたいという気持ちもあると思います。政府としても選挙での高齢者の投票率が多い中で医療という分かりやすいもので投票してもらいたいという思惑は容易に想像できますが、このような利権構造や価値観にもメスを入れる時が来ていると感じます。

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まとめ

高額療養費支給制度は、家計に大きな安心をもたらす重要な仕組みです。2025年8月以降の改正により、所得に応じた細かい区分が設けられ、より公平な制度となるとは言われていますが、ほぼ全世代・全所得で限度額の引き上げとなる案が示されています。

若年者が受ける高額医療と、後期高齢者が受ける高額医療は意味合いが異なってくるため、負担能力に応じた負担が公平であるかは再考すべきですし、所得が高く高額な保険料を納めている人ほど恩恵の少ない仕組みであるため非難は多く出そうな施策です。

 

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