権利擁護(アドボカシー)とは?基礎と介護福祉での具体例を解説

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権利擁護は、「けんりようご」という読み方をします。権利擁護(アドボカシー)とは、ご利用者の代弁や弁護を行うこと、支援を通じて権利を守ることを意味します。憲法・法律で規定された基本的人権と権利擁護、介護福祉サービスと権利擁護の意味、権利擁護のための具体的な制度活用事例(成年後見人制度、日常生活自立支援事業、身体拘束ゼロ作戦・身体拘束廃止、高齢者虐待防止)を紹介します。

権利擁護とは何ですか

権利擁護は、「けんりようご」という読み方をします。権利擁護(アドボカシー)とは、ご利用者の代弁や弁護を行うこと、支援を通じて権利を守ることを意味します。

権利擁護のことをわかりやすくいうと、ご利用者の身の安全、自由な気持ち、社会参加の機会、幸せでいたい気持ちなど、みんながあたりまえに持っている権利が侵害されないように守ることです。

身の安全などはもちろんですが、その人がもついろいろな権利、「自由権」「社会権」「参政権」「財産権」「幸福追求権」などを守り、高齢者の尊厳を保持し、その人らしく暮らし続けていくことができるようにすることが権利擁護です。介護や福祉などの分野では、相談援助に携わる中で、支援の対象となるご利用者の権利擁護に対する役割があります。高齢者の増加、認知症高齢者の増加により、権利擁護の重要性が増しています。

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憲法・法律で規定された基本的人権と権利擁護

日本国憲法は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定しています。基本的人権は生まれながらにして持っているものとして、すべての国民に平等に保障されています。また憲法は幸福追求権を保障しており、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とも規定しています。高齢になると、一人暮らしでの生活困難さ、判断力の低下、認知症などの理由により、人権や権利を行使できず、むしろ侵害されやすい状況になります。特に判断力の低下した高齢者は、虐待や悪質商法の被害などの権利侵害にあいやすいです。

1 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。

2 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに養護者への支援が専門的知識に基づき行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の確保及び資質の向上を図るため、関係機関の職員の研修等必要な措置を講じるよう努めなければならない。

3 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護に資するため、高齢者虐待に係る通報義務、人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。

高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 第3条

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介護福祉サービスと権利擁護の意味

介護や福祉のサービスは契約によって導入されていますが、判断能力が低下した人や、自分で選択ができない環境に置かれている人にとっては、その自分で生活を選ぶと言うこと自体をどのように支援するかと言う課題があります。ケアマネジャーや介護の仕事をしている人、相談支援の仕事をしている中でも、権利擁護をしているつもりで身の安全などの「生きる権利」に重点を置きすぎたマネジメントを行うことにより、実は利用者本人を自由な選択や参加の機会などの権利を侵害することになっていることもあります。

介護や福祉の理想的なあり方としても「その人らしい生活」が挙げられますが、これは本来は人から押し付けられた生活ではなく本人が主体的に選択肢作っていく生活のことです。介護が必要になったり支援が必要になったりしても、生命や財産を守り、安全や社会参加の権利が侵害されないように救うという範囲にとどまらず、ご本人の生き方を尊重し、本人の自己実現や自己決定の尊重を保証するようなものでなければならないです。

入院中の精神障害者の権利擁護

精神障害者の権利擁護とは、精神に障害があり医療的な管理が必要な状態だとしても、同じく基本的な人権を受け、公正に扱われることを守ることを目指すものです。まず、医療では自己決定権が尊重され、患者が自分の治療方法や看護を自分で選べることが大切にされています。また、特に精神疾患の場合には、人権尊重として身体や心を傷つける行為、無視すること、または差別することは禁止されています。患者の個人情報がきちんと守られ、個々の空間が尊重されるプライバシーの保護も求められています。

入院中の精神障害者では、退院が適切に促されず、情報提供も不足するという状況が過去にあったため、患者教育と情報提供も重要視されるようになりました。患者が自分の病状や治療方法について理解できること、そして社会復帰のための教育を受けられることが大切にされています。もし不適切な扱いや人権侵害があった場合は、裁判を起こす権利や申し立ての権利が守られます。

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権利擁護のための具体的な制度活用事例

介護保険制度ができ、その中でのサービス提供や運営の基準の中にも権利擁護の観点は含まれています。本人の選択や同意を確認したり、権利が侵害された時に苦情を入れることができる窓口があったり、ケアプランなどでも本人の希望に沿ったケアが提供される様を組み立てる仕組みになっています。近年は高齢者虐待の防止などについても法が整備されたりして権利擁護の取り組みが体系的に進み始めています。

成年後見人制度

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分であるために意思決定が困難なものの判断能力を、成年後見人等が補っていく制度です。

成年後見人制度は、判断能力が不十分な人たちが消費者被害にあったり、相続などの法律問題に巻き込まれてして不利益を被らないようにすること、また虐待などの深刻な権利侵害から本人を擁護したり、本人の意思決定や自己決定の支援を含んだ全般的な制度です。市町村レベルでも権利擁護センターや後見支援センターなどが開設されたりして、介護保険に関わる人たちを支える仕組みも出来てきています。

介護保険サービス利用と成年後見人の関係性

成年後見人制度と介護保険制度には密接な関係があります。介護保険制度では介護保険サービスを利用する時には原則利用者との契約によってサービスが提供されますが、利用者に契約能力がない場合サービスの契約を結べないという課題があります。出来だけ本人の希望や意思決定を尊重しつつも家族などが契約に同席や代理をして介護保険サービスと契約を結びスタートするということもできますが、そのような手段が難しい方にとっては成年後見の制度はますます重要性と可能性の高まる制度となると考えます。

成年後見人・補助人・補佐人

認知症や精神疾患の重症度により、判断能力には差があります。申し立てを受けた家庭裁判所は医師の診断等により、能力の段階に応じて類型を審判します。
判断能力を欠くことが常の場合は、成年後見人を選任する後見類型という分類となり、財産管理に関するすべての法律行為について後見人には広範な代理権と取消権が付与されます。
保佐・補助は本人による申し立ても可能となっており、保佐・補助という名のとおり、定められた一定の事項については代行できます。また、法律・契約行為については補助人・補佐人から同意を得ない場合は無効となることもあります。

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業とは、都道府県の社会福祉協議会や政令指定都市の社会福祉協議会は実施主体となって展開されている授業です。内容としては、日常的金銭管理、重要書類の預かり、福祉サービスの利用援助などです。この制度の特徴は、日常生活自立支援事業の利用者が契約締結能力を有する判断能力が不十分な人である点であり、日常生活全般にわたる援助に関わっています。認知症が進行して判断能力が不十分な状態から契約能力がない状態に至った場合には成年後見人制度の活用の可能性について検討されます。

身体拘束ゼロ作戦・身体拘束廃止

介護施設なのでは緊急やむを得ない場合を除き身体拘束が禁止されましたが、身体拘束も虐待の一種であると考えられています。虐待の一種ということはつまりご利用者の権利侵害であるということです。

厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」において「身体拘束ゼロへの手引き」が取りまとめられたことから、「身体拘束ゼロ作戦」を推進し、身体拘束廃止に向けて積極的な取組みを進められています。

高齢者虐待防止法に基づいた対応(高齢者虐待防止シェルター)

近年、高齢者虐待への対応は非常に大きな課題となっています。2006年4月に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」が施行されました。この法律が出来虐待の定義と種類(身体的虐待、介護の放棄、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待)、市区町村の責任、養護者支援の必要性などが明確化されました。

高齢者虐待の防止については、役所、地域包括支援センター、施設や病院、地域と連携し継続的に観察・働きかけていくことが大切です。高齢者の安全確認や事実確認を行い立ち入り調査などを実施した上で事例分析を行い、より積極的な介入として保護者との分離として緊急入院や緊急入所が必要と判断された場合には、老人福祉法に基づく「やむを得ない事由による措置」でのショートステイや特別養護老人ホームへの入所させるという制度もあり、このような対応をとった事例もあります。

高齢者虐待防止法に関連する事項として、2012年10月に障害者虐待の防止、「障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)」が施行されました。

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介護福祉分野での権利擁護の課題

介護や福祉の事業所では、実際知らず知らずのうちに権利侵害が起きていることもあります。職員の要因として利用者との親密感やストレス、制度、知識の不足などがあります。
固定的で行き詰まった介護施設などで、ご利用者の権利を擁護するということは、施設の運営方法を批判するという事にもなります。本来は侵されるべきでないご利用者の権利が強く制限されることが当たり前になっている環境もあります。

介護施設などでは人手不足だから仕方ないという声も耳にすることがありますが、権利擁護についての基礎知識を身につけ、相談や援助を行う中で権利を侵害してはならないという前提のもとで建設的なケアの方針や運営体制が作れるように工夫していくことが重要だと考えます。在宅で家族が会合を行っている場合などでは、介護者の抱える負担やストレスなどを周囲にいる専門職や相談職などが状況を理解し無理のない適切なサービス利用や息抜きの機会、福祉制度の利用などのきっかけを作りながら、要介護者が出来るだけ自分の生き方の選択をできるよう意識していきましょう。

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