ストライキとは?やり方、日本での事例、日本でストライキが少ない理由

ストライキとは、労働者が団結し、労働条件の改善を求めて業務を停止する行為です。日本では、憲法第28条により労働基本権として認められていますが、欧米と比較するとストライキの件数は少ない傾向にあります。では、日本においてストライキを実施するための条件や手順はどのようになっているのでしょうか?また、過去にはどのようなストライキが行われ、なぜ日本ではストライキが少ないのか?本記事では、日本の法律や事例に基づき、ストライキの仕組みや実例、実施の際のポイントについて詳しく解説します。

ストライキとは?

ストライキ(労働争議の一種)は、労働者が団結し、労働条件の改善や経営側との交渉を有利に進めるために業務を停止する行為です。ストライキは英語で「strike」と言います。「ストライキを行う」は 「go on strike」や「stage a strike」という表現がよく使われます。

労働組合が主導することが多く、使用者(経営側)に対して賃金の引き上げ、労働環境の改善、解雇の撤回などを求める目的で行われます。日本では「争議行為」とも呼ばれ、労働者の権利として法律で一定の範囲で保障されています。

ストライキは、世界各国で重要な労働運動の手段として活用されているが、日本ではその実施件数が比較的少ないとされています。その背景には、法的規制や労使関係の慣習が関係していると考えられます。

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日本におけるストライキの法的枠組み

日本では、ストライキを行う権利は日本国憲法第28条で「労働基本権」として保障されています。

具体的には、労働組合法や労働関係調整法によって争議行為のルールが定められており、合法的に行うためには一定の手続きが必要となります。

ストライキが合法と認められるためには、次の要件を満たす必要があります。

団体交渉を経たうえでの実施

ストライキは、労働組合が団体交渉を行い、それでも要求が受け入れられない場合に最後の手段として実施されるべきとされています。労働組合法では、労働組合が正当な交渉手続きを経ずにストライキを行うことは違法とされる場合もありますので、団体交渉を行い交渉がうまくいかなかったときに手続きを経てストライキを計画し実行するという順序を守ることは大切です。

正当な目的に基づいていること

ストライキは、賃金や労働条件の改善労働者の権利を守るなどの目的で行う必要があります。政治的な目的(例えば、政府の政策への抗議)を主たる目的とする場合、正当な争議行為とは認められない可能性があります。

暴力行為を伴わないこと

ストライキに際して、施設の破壊や他の労働者に対する強制行為などが行われた場合、刑法に違反する可能性があります。日本の判例でも、暴力や威圧を伴うストライキは「正当な争議行為」とは認められないことが多いです。

職場封鎖(ロックアウト)との関係

会社側がストライキへの対抗策として、労働者の就労を一方的に禁止する「ロックアウト」を実施する場合があります。この点については、労働者の権利と使用者の権利のバランスを考慮しながら判断されます。

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日本でのストライキのやり方と手順

ストライキを実施する際の具体的な手順は、労働組合の内部規則や労使協定によるが、日本の法律に基づいた一般的な流れは以下のとおりである。

1.団体交渉の申し入れ

労働組合は、使用者に対して賃金の引き上げや労働条件の改善などの要求を正式に伝え、交渉を開始する。使用者が交渉に応じない場合、労働委員会などの調整機関を通じた話し合いを求めることもある。

2.労使交渉の決裂と争議行為の決定

交渉が決裂した場合、労働組合はストライキの実施を決定する。通常、組合員の投票などの手続きを経て、組織としてストライキを実施する意思を確認する。

3.使用者への通知

ストライキを実施する場合は、事前に使用者側に通知することが望ましい。突然のストライキは混乱を招くため、法的に問題にならないよう、適切な手続きを踏むことが重要である。

4.ストライキの実施

指定された日程で労働者が業務を停止し、ストライキを実行する。ストライキの際には、労働組合が統制を取り、無秩序な行動を避けることが求められる。

5.交渉の再開と解決

ストライキを実施した後も、労働組合は引き続き使用者側と交渉を行い、妥協点を探る。合意に達すればストライキを終了し、通常業務に戻る。

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日本におけるストライキの事例

日本では、ストライキは欧米に比べて少ないものの、歴史的にいくつかの重要な事例がある。

国鉄スト(1975年)

日本国有鉄道(国鉄)では、1975年に大規模なストライキが行われた。これは、労働条件の改善や組織再編に対する反発を背景に実施されたが、政府との対立が深まり、その後の国鉄分割民営化の引き金となった。

全日空パイロットのストライキ(1990年代)

航空業界では、パイロット組合が賃金交渉の一環としてストライキを実施した例がある。空港の運航に影響を及ぼすため、社会的な注目を集めた。

JP労組のストライキ(2018年)

日本郵政グループの労働組合(JP労組)は、賃金交渉のためにストライキを計画したが、最終的には回避された。この事例は、日本の労使関係において、ストライキが交渉の一部として機能していることを示している。

北海道の業務スーパー7店舗のストライキ(2024年)

2024年7月18日から北海道の業務スーパー7店舗でストライキが行われ、運営会社である(株)ケヒコが破産を申請した。ストライキの背景には、社長による資金の私的流用や不採算事業への投資による経営悪化があった。労働組合は社長の交代や無償での株式譲渡を要求。一方、経営側は資金繰りの悪化を理由に倒産と従業員の解雇を希望した。労働組合は無期限ストを宣言し、営業再開の見通しは立たなかった。

ヤマト運輸の倉庫従業員が熱中症対策訴える1人ストライキ(2024年)

2024年8月19日、兵庫県尼崎市のヤマト運輸の倉庫で働く男性社員が、熱中症対策の不備を理由にストライキを実施した。男性は労働組合「総合サポートユニオン」に所属し、倉庫内の気温が40度を超えることを問題視。ファン付き作業服の支給や環境改善を求め、本社前で街宣活動も行った。勤務先との団体交渉では空調服の支給は認められず、ヤマト運輸側は気温計の故障を指摘し、室温は最高36度だったと主張。男性は、倉庫内の風通しが悪く熱中症の症状に苦しむ中、高齢の非正規雇用者も同様の環境下で働いていると訴えた。ヤマト運輸は「個別事案への回答は控える」とコメントし、対策を巡る対立が続いた。

千葉県船橋市の船橋二和病院の医師・看護師によるストライキ(2025年)

2025年1月24日、千葉県船橋市の船橋二和病院で、医師・看護師が労働条件の改善を求めストライキを実施。病院経営者だけでなく厚生労働省にも社会保障費増額を求めた。労働組合の飯田執行委員長は、コロナ後の経営悪化により病院倒産が増える可能性を指摘し、全国の医療労働者に行動を呼びかけた。病院は患者減や補助金廃止で年間5億円の赤字を見込み、建て替え中止を決定。さらに、労働時間延長や退職金削減などの就業規則変更を提案しているが、法的問題で未実施。冬のボーナスは過去最低の0.9か月分となり、人員不足による病棟閉鎖も発生。厚労省は補正予算で1床あたり約4万円の補助金を早期支給する方針を示し、追加措置も検討すると回答した。

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日本でストライキが少ない理由

日本では、欧米に比べてストライキが少ないとされる。その背景には、以下のような要因がある。

労使協調の文化

日本の労働環境では、労働組合と使用者が対立よりも協調を重視する傾向がある。年功序列や終身雇用の慣行が根強いことも、労働者が強硬な手段に訴えにくい理由の一つである。

法律による制約

日本の労働法はストライキを認めているが、厳しい手続きを要求しており、違法なストライキは労働者に不利益をもたらす可能性がある。このため、多くの労働組合はストライキよりも交渉や調停を優先する。

社会的な圧力

ストライキを行うことで、労働者が社会的な非難を受ける場合がある。特に、公共交通機関やインフラに関わる業種では、利用者の不便を考慮し、ストライキを回避する傾向が強い。

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正当なストライキの場合の法律上の保護(労働組合法)

正当なストライキは、労働組合法(労組法)に基づき、以下の3つの側面から法律上の保護を受けることができる。

刑事免責

正当な争議行為を行った労働組合の役員や組合員は、刑事罰を科されることはない。これは、労働基本権として憲法第28条および労組法第1条第2項により保障されている。

民事免責

ストライキによって使用者側に損害が生じた場合でも、正当な争議行為であれば、使用者は労働組合や組合員に対して損害賠償を請求することはできない(憲法第28条、労組法第8条)。

不当労働行為の禁止

使用者は、正当なストライキを理由に組合員に対して解雇や減給などの不利益な扱いをしてはならない。また、使用者が組合のストライキ決定に介入することも禁止されている(憲法第28条、労組法第7条)。もし使用者がこのような不当労働行為を行った場合、労働委員会による救済措置を受けることが可能である(労組法第7条、第27条)。

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ストライキに関するよくある質問と回答(Q&A)

ストライキをすると賃金はもらえますか?
ストライキに参加した場合、原則として賃金は支払われません。これは「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づくもので、労働を提供していない時間分の賃金請求権は発生しません。ただし、労働協約や労働慣行によって一部支給される場合もあります。また、家族手当などの支給対象になるかどうかは、判例や労働協約の内容によって異なります。
正当なストライキとはどのようなものですか?
正当なストライキと認められるには、以下の条件を満たす必要があります。
・労働組合が主体となって行うこと
・賃上げや労働環境の改善など、労働組合の目的に沿う正当な理由であること
・暴力行為や違法行為を伴わないこと(労組法第1条第2項)
・組合員の無記名投票で過半数の賛成を得ること(労組法第5条第2項第8号)
・団体交渉を尽くし、労働協約で定められた事前手続きを踏んでいること
ストライキをする際の注意点は?
ストライキを実施する前に、以下の点を確認することが重要です。
・労働組合の手続きを守り、組合員の投票で決定すること
・争議行為の手段が正当であること(暴力行為は禁止)
・団体交渉を尽くし、労働協約で決められた事前手続きを行うこと
・公益事業(病院、私鉄、電気・ガスなど)の場合は、少なくとも10日前に労働委員会や厚生労働大臣・都道府県知事へ通知が必要(労調法第37条)
公共サービスに関わる業種ではストライキは可能ですか?
一部の公益事業では、ストライキを制限する法律があります。例えば、
・電気・ガス事業:供給を止める「停電スト」などは禁止(スト規制法第2条)。
・鉱業:落盤やガス爆発防止施設の正常運営を妨害する行為は禁止(労調法第36条)。
・病院・交通機関:ストライキの10日前までに通知しなければならない(労調法第37条)。
これらの業種では、労働者の権利と公共の利益のバランスを考慮しながら争議行為を行う必要があります。
ストライキの通告はどのように行いますか?
ストライキの決定後、労働組合は使用者に対して正式な通告を行います。多くの場合、ストライキ実施の計画や目的を明確に伝えるため、組合内に「闘争委員会」を設置し、争議の計画・対策を管理します。
争議行為が長期化した場合、解決のために何ができますか?
争議の早期解決には、以下の点が重要です。
・団体交渉を継続し、解決の糸口を探る
・労使間の連絡窓口を確保し、交渉の機会を逃さない
・過度な対立を避け、争議後の関係回復を考慮する
・労働協約で争議行為のルールを事前に決めておく(事前通告や安全確保の手続き)
・労働委員会のあっせん・調停を活用し、第三者の仲介を求める
争議行為を禁止されるケースはありますか?
はい、以下のような場合には争議行為が禁止されることがあります。
・労働協約で「有効期間中はストライキを行わない」と定められている場合(平和義務条項)
・争議行為が公的な安全や人命に影響を及ぼす場合(例:鉱山の安全設備を妨害するスト)
・特定の法律でストライキが制限されている業種(例:電気・ガス事業、石炭鉱業)
労使紛争が解決しない場合、どのような手段がありますか?
労使間の自主的な解決が原則ですが、解決が難しい場合は以下の方法があります。
・労働委員会のあっせん・調停・仲裁:中立的な立場の第三者が労使間の交渉をサポート
・都道府県の労働センターの支援:行政機関を通じた相談や調整
・裁判所での争議:最終的には法的手段で解決を求めることも可能

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まとめ

ストライキは、労働者の権利として憲法や労働組合法で保障されていますが、正当な手続きを経ることが重要です。特に、公益事業では制約があるため、事前の準備とルールの確認が必要です。また、争議行為が長期化しないよう、労使間の交渉を継続し、必要に応じて労働委員会などの支援を活用することが望まれます。

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