精神科訪問看護とは?目的・条件、指示書や計画書

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精神科訪問看護は、精神疾患を抱える方が地域で安心して生活を続けられるよう、看護師等が自宅を訪問して療養上の支援を行うサービスです。統合失調症やうつ病、双極性障害などの精神疾患のある方のほか、その家族等も対象となります。
一般の訪問看護(身体疾患中心)とは、対象・指示書・算定する療養費・担当できる職種など、制度上の仕組みが異なります。この記事では、精神科訪問看護の目的・対象・条件・指示書・計画書について、厚生労働省の通知・告示・Q&Aに基づいて解説します。
精神科訪問看護とは
精神科訪問看護とは、精神疾患を有する方またはその家族等に対して、主治医(精神科の医師)の交付する精神科訪問看護指示書と精神科訪問看護計画書に基づき、訪問看護ステーションの看護師等が自宅等を訪問して療養上の世話や指導を行うサービスです。
医療保険(訪問看護療養費)が適用され、精神科訪問看護基本療養費として算定されます。
精神科訪問看護は、1986年(昭和61年)に「精神科訪問看護・指導」として保険医療機関における精神科医師・看護師等による訪問が制度化されたことを起点に発展してきました。現在は訪問看護ステーションからの精神科訪問看護が制度の中心となっています。
訪問看護とは、病気や負傷で自宅での継続的な療養が必要な人を対象に、看護師やその他の医療従事者が患者の自宅を訪れて、日常の世話や医療的な支援を提供するサービスです。このサービスは、病院や診療所、訪問看護ステーションによって実施されます。利用者の状態に応じて、医療保険や介護保険が適用され、患者のニーズに基づいた適切なケアが行われます。
訪問看護とは?
訪問看護のサービスは、利用者の年齢や疾患、状態に応じて、医療保険または介護保険が適用されますが、介護保険の給付は医療保険の給付に優先されます。ただし、末期の悪性腫瘍を患う方、重症心身障害児者、または急性増悪の状態にある者については、主治医の指示に基づいて医療保険からの給付で訪問看護が行われます。精神科訪問看護が必要な方についても医療保険での訪問看護の対象になります。
関連記事:訪問看護とは 指示書の内容、介護保険・医療保険・精神科の違い
精神科訪問看護の目的・できること
精神科訪問看護の主な目的は、精神疾患のある方が地域で安心して自立した生活を送れるよう支援することです。入院から地域生活への移行、再入院の予防、家族への支援が3つの柱となります。
具体的に提供するケアには以下のものが含まれます。
なお、精神科訪問看護では原則として点滴等の医療処置は行わず、精神面・生活面のケアが中心となります(医師の指示がある場合は身体的処置も行います)。
対象となる疾患・利用できる条件
精神科訪問看護指示書の交付を受けて訪問看護が利用できるのは、精神疾患を有する方です。対象となる主な精神疾患は以下のとおりです。
特定の疾患名に限定されているわけではなく、「精神疾患を有する者」として主治医(精神科の医師)が訪問看護の必要性を認め指示書を交付することで対象となります。
厚生労働省告示(訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法)では、精神科訪問看護基本療養費の対象を「指定訪問看護を受けようとする精神疾患を有する者又はその家族等」と定めており(算定方法の留意事項・保医発0305第4号)、「精神科の医師が訪問看護の必要性を認め指示書を交付した場合」に算定できます。
通院中の人でも精神科訪問看護を利用できる?
外来通院中の方でも精神科訪問看護を利用できます。
精神科訪問看護指示書は「入院中以外の精神疾患を有する患者」を対象に交付されるもの(診療報酬の算定方法に係る通知・保医発0305第4号)であり、外来通院中であることは利用の妨げにはなりません。
むしろ精神科訪問看護は、外来通院しながらも自宅での生活に支援が必要な方(服薬管理が難しい、生活リズムが乱れている、家族関係に問題がある等)を主な対象の一つとしています。
精神科訪問看護指示書の交付にあたり制度上求められるのは、「精神科を標榜する保険医療機関の精神科の医師が、診療に基づき訪問看護の必要性を認める」ことです(保医発0305第4号)。外来通院先が精神科以外の科であっても、精神科の主治医が必要性を認めて指示書を交付すれば精神科訪問看護を利用できます。
認知症は精神科訪問看護の対象か
原則として認知症が主傷病である場合は精神科訪問看護の対象外です。
厚生労働省通知「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」(老老発0327第1号・保医発0327第8号)では、以下のように規定されています。
精神疾患を有する患者であり、精神科訪問看護指示書が交付された場合は、要介護被保険者等の患者であっても算定できる。ただし、認知症が主傷病であって精神科訪問看護指示書が交付された患者については算定できない。
認知症の方の訪問看護は、要介護認定がある場合は介護保険の訪問看護として対応することが原則です。
ただし、「精神科在宅患者支援管理料」を算定している医療機関の利用者については例外として、認知症が主傷病であっても精神科訪問看護の対象になります。このケースに該当するかどうかは主治医への確認が必要です。
また、認知症と統合失調症の両方の診断がある場合などは、「主傷病が何か」の判断が重要になります。
精神科訪問看護と一般の訪問看護の違い
精神科訪問看護と一般の訪問看護(身体疾患対象)は制度上いくつかの重要な違いがあります。
| 項目 | 精神科訪問看護 | 一般の訪問看護 |
|---|---|---|
| 算定する療養費 | 精神科訪問看護基本療養費 | 訪問看護基本療養費 |
| 指示書の種類 | 精神科訪問看護指示書(精神科医が交付) | 訪問看護指示書(主治医が交付) |
| 特別指示書 | 精神科特別訪問看護指示書 | 特別訪問看護指示書 |
| 担当できる職種 | 保健師・看護師・准看護師・作業療法士・精神保健福祉士(病院・診療所からのみ) | 保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 |
| 保険適用 | 医療保険(精神科訪問看護指示書交付で優先) | 介護保険または医療保険 |
| 退院後3か月間の訪問回数 | 週5日まで算定可能 | 退院後の特例なし(原則週3日) |
| 事業所の届出 | 地方厚生局への精神科訪問看護基本療養費に係る届出が必要 | 特別な届出不要(訪問看護ステーションとしての指定のみ) |
| GAF尺度の記載 | 月初回の訪問時に記載が必要 | 不要 |
| ケアの中心 | 精神面・生活面の援助(点滴等の医療処置は原則行わない) | 身体面のケア・医療処置も含む |
特に重要な違いは担当できる職種です。一般の訪問看護では理学療法士・言語聴覚士による訪問も算定できますが、精神科訪問看護では理学療法士・言語聴覚士は担当できません。代わりに作業療法士による精神科訪問看護が認められています。
精神科訪問看護の担当職種
訪問看護ステーションから精神科訪問看護基本療養費を算定して訪問できる職種は以下のとおりです。
単独で訪問できる職種(算定対象)
単独訪問では算定できない職種(複数名訪問の同行者としてのみ)
なお、精神保健福祉士は病院・診療所からの精神科訪問看護(精神科訪問看護・指導料)については訪問の担い手となります。
精神科訪問看護ができる職員の要件
精神科訪問看護基本療養費を算定するには、当該職員が「精神疾患を有する者への看護について相当の経験を有する」ことが必要です。具体的には以下のいずれかを満たす必要があります。
研修のカリキュラムは厚生労働省が定めており、「精神疾患を有する者に関するアセスメント」「病状悪化の早期発見・危機介入」「精神科薬物療法に関する援助」「GAF尺度による利用者の状態の評価方法」など8項目が含まれます。
精神科訪問看護指示書とは
精神科訪問看護指示書は、精神科訪問看護を開始するために主治医から交付される書類です。
精神科訪問看護指示書は誰が交付できるか
精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師のみが交付できます(診療報酬の算定方法に係る通知・保医発0305第4号)。内科医や家庭医(かかりつけ医)が交付することはできません。
有効期間
精神科訪問看護指示書の有効期間は最長6か月以内です。1か月の指示を行う場合は有効期間の記載は不要です(診療報酬の算定方法に係る通知・I012-2)。
指示書の主な記載事項
傷病名コードの記載(2024年改定)
2024年(令和6年)4月の診療報酬改定から、訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書の「主たる傷病名」の欄に「傷病名コード」の記載が追加されました。厚生労働省の「傷病名マスター検索」で該当するコードを確認できます。
認知症への対応
前述のとおり、認知症が主傷病の場合は精神科訪問看護指示書の対象外です。主傷病名に認知症のみが記載された精神科訪問看護指示書は無効となる場合があります。ただし精神科在宅患者支援管理料を算定している利用者は例外です。
精神科訪問看護指示料の算定
精神科訪問看護指示書を交付した医師(精神科の医師)の所属医療機関は、「精神科訪問看護指示料」(月1回)を算定できます。
精神科特別訪問看護指示書とは

精神科特別訪問看護指示書は、精神症状が急性増悪し頻回の訪問看護が必要と精神科医が判断した場合に交付される指示書です。
精神科特別訪問看護指示書が交付された場合には、交付の日から起算して14日以内について、日数の制限なく(毎日)訪問することができます。月1回に限り、14日を限度として算定できます。
なお、一般の訪問看護における「特別訪問看護指示書」と同様の位置づけですが、精神科訪問看護に特化した様式です。精神科特別訪問看護指示書が交付された利用者については、利用者の病状等を十分に把握し、一時的に頻回に訪問看護が必要な理由を看護記録に記載するとともに、主治医との連携を密に行うことが求められます。
精神科訪問看護計画書とは
精神科訪問看護計画書は、精神科訪問看護指示書に基づいて訪問看護ステーションが作成する計画書です。精神科訪問看護基本療養費を算定するには、精神科訪問看護計画書の作成が必要です。
精神科訪問看護計画の作成者の要件
精神科訪問看護計画書は、「相当の経験を有する保健師等(准看護師を除く)」が作成するものとされています(訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について)。准看護師は作成者になれない点に注意が必要です。
計画書の主な記載事項
精神科訪問看護報告書との関係
計画書に基づいて提供した訪問看護の内容は、精神科訪問看護報告書として毎月記録・管理します。精神科訪問看護報告書には以下を記載します。
精神科訪問看護基本療養費とGAF尺度
精神科訪問看護基本療養費は、訪問看護ステーションが精神科訪問看護を提供した場合に算定する医療費です(医療保険適用)。訪問を行った職種・同一建物かどうか・1日の訪問回数によって金額が異なります。
基本的な区分は以下のとおりです。
| 区分 | 主な対象 |
|---|---|
| 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ) | 同一建物居住者以外への訪問 |
| 精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ) | 同一建物居住者への訪問 |
| 精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ) | 複数名訪問・入院中の外泊時など特定のケース |
(精神科訪問看護基本療養費(Ⅱ)は2018年に廃止)
GAF尺度の記載義務
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅲ)を算定する場合は、訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書に、当該月の初回訪問時におけるGAF尺度により判定した値を記載することが算定要件となっています(厚生労働省近畿厚生局「訪問看護療養費の取扱いの理解のために」)。
GAF尺度(Global Assessment of Functioning)とは
GAF尺度(Global Assessment of Functioning)とは、精神機能を社会的・心理的・職業的機能という側面から1〜100の数値で評価するスケールです。数値が大きいほど精神面が良好と判断されます。
2024年改定では、GAF尺度のスコアが40以下の利用者数が月に5人以上いることが、訪問看護管理療養費1の算定要件の一つになりました。GAF尺度は記録管理の観点からも重要性が高まっています。
訪問回数の制限
精神科訪問看護基本療養費の算定は、原則として週3日が上限です(訪問看護基本療養費を算定する日と合算して週3日)。
ただし以下の場合は週3日を超えて算定できます。
| 条件 | 算定できる日数 |
|---|---|
| 退院後3か月以内(退院日は含まない) | 週5日まで算定可能 |
| 精神科特別訪問看護指示書が交付された場合 | 14日を限度として毎日算定可能(月1回) |
| 別表第七に掲げる疾病等(難病等)に該当する場合 | 週4日以上算定可能 |
退院後3か月以内の週5日算定は精神科訪問看護固有の特例であり、一般の訪問看護にはない制度です。退院直後の不安定な時期に集中的な支援ができる仕組みとなっています。
保険の適用(医療保険が優先)
精神科訪問看護指示書が交付された場合は、要介護認定を受けている利用者であっても医療保険が優先されます。
これは一般の訪問看護と大きく異なる点です。一般の訪問看護は要介護認定がある場合は原則として介護保険が優先されますが、精神科訪問看護指示書が交付された場合は医療保険(精神科訪問看護基本療養費)での算定が優先されます。
ただし前述のとおり、認知症が主傷病の場合は医療保険の精神科訪問看護基本療養費は算定できず、介護保険が適用されます(精神科在宅患者支援管理料を算定する医療機関の利用者は例外)。
自立支援医療(精神通院医療)との関係
精神科訪問看護には、自立支援医療(精神通院医療)が適用されます。自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患(てんかんを含む)で通院による精神医療を続ける必要がある方の医療費自己負担を軽減する制度です。訪問看護療養費にも適用されるため、該当する利用者の自己負担が軽減されます。
よくある質問(Q&A)
精神科訪問看護指示書は「精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師」しか交付できません。精神科に通院しておらず精神科の主治医がいない場合は、まず精神科・心療内科を受診し、主治医に精神科訪問看護の必要性を相談することが最初のステップになります。
通院しているクリニックの医師(精神科を担当する医師)に「訪問看護を利用したい」と相談してください。医師が必要性を認めた場合、訪問看護ステーションに宛てた精神科訪問看護指示書を交付してもらいます。その指示書を持参または送付した訪問看護ステーションが精神科訪問看護を開始します。
同一日に精神科訪問看護基本療養費と訪問看護基本療養費の両方を算定することは原則できません。ただし週のうち曜日を分けて両者を組み合わせることは可能な場合があります。保険種別や算定ルールは複雑なため、担当する訪問看護ステーションや主治医に確認してください。
原則として入院中は算定できません。ただし、退院を予定している入院患者が一時的に外泊(1泊2日以上)する際に訪問看護を行った場合は「外泊中の訪問看護」として1回算定できます。
いいえ。精神科訪問看護基本療養費は、地方厚生(支)局長に届出を行った訪問看護ステーションのみが算定できます。届出には「精神疾患を有する者への看護について相当の経験を有する」職員(保健師・看護師・准看護師・作業療法士)が必要です。利用を検討している訪問看護ステーションに届出の有無を確認してください。
精神科の医師が診療に基づいて訪問看護の必要性を認め、精神科訪問看護指示書を交付した場合は対象となります。発達障害は精神科・心療内科で診療されることも多く、主治医(精神科の医師)が指示書を交付できる立場であれば対象になりえます。
まとめ
精神科訪問看護のポイントをまとめます。
参考法令・資料
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和6年3月5日保医発0305第4号)
- 訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて(令和2年3月5日保医発0305第4号)
- 訪問看護計画書等の記載要領等について(令和6年3月27日保医発0327第6号)
- 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について(老老発0327第1号・保医発0327第8号)
- 令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)(厚生労働省)
- 令和3年度 訪問看護療養費の取扱いの理解のために(厚生労働省近畿厚生局)
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