「流涎(りゅうぜん)」という言葉を聞いたことはありますか?多くの方が「りゅうえん」と読み間違えてしまいますが、正しくは「りゅうぜん」と読みます。本記事では、流涎の正しい読み方やその使い方について詳しく解説します。また、流涎の原因や症状、医療や介護の現場での対応方法、リハビリのポイントなど、専門知識を交えてわかりやすく説明します。医療・介護職の方や、ご家族のケアに役立てたい方は、ぜひご覧ください。
流涎とは何か?
流涎の読み方は「りゅうえん」ではない
まず最初に、「流涎」の正しい読み方は「りゅうぜん」「りゅうせん」です。涎(よだれ)という漢字に「延(えん)」が含まれているので「りゅうえん」と間違われることが多いですが、正確には「りゅうぜん」と読みます。これは、唾液が異常に口から流れ出る状態を指す医学用語で、日常的にも使われるため、正しい読み方を覚えておくことが重要です。英語で表現すると流涎(よだれを垂れ流すこと)は「sialorrhea」となります。似た言葉で、「涎(ぜん)を垂らす」という表現があり、唾液が口から垂れ落ちることを指します。
流涎の意味とその背景
「流涎」とは、唾液が過剰に分泌されて口腔内に溜まり、それが口から漏れ出てしまう状態を指します。特に、嚥下(えんげ:飲み込むこと)の機能低下、神経系の障害で口腔機能に関する感覚や運動麻痺が生じることなどが原因となることが多く、高齢者や脳血管疾患、神経疾患を持つ方、子どもにも見られます。よだれの問題は、社会的な活動に支障をきたすだけでなく、皮膚炎などの二次的なトラブルも引き起こすことがあります。
流涎の医療的な状態
流涎は様々な原因で起きますが、主に「過剰な唾液分泌」、「唾液の嚥下障害」、「口唇閉鎖不全」のいずれか、もしくはこれらが複合的に作用することで生じることが多いです。
過剰な唾液分泌
特定の疾患や薬の影響で唾液が過剰に分泌される場合があります。
唾液の嚥下障害
脳卒中や神経変性疾患などによる嚥下機能の低下で、唾液が口腔内に溜まりやすくなります。
口唇閉鎖不全
麻痺や筋力低下により、唇がうまく閉じられない場合、唾液が口から漏れやすくなります。この状態は、脳神経障害や加齢、外傷などが原因で起こることがあります。
これらの要因が組み合わさって流涎が発生することが多く、患者ごとに異なる原因を見極めて適切な対応を行うことが求められます。
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流涎の原因について
流涎を引き起こす主な要因・疾患
流涎の原因は多岐にわたりますが、以下のような要因や疾患が主な原因となります。
神経疾患
パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中などの神経疾患が原因となることが多いです。
口腔・歯の問題
義歯の不適合や歯の欠損、口腔内の炎症が唾液のコントロールを難しくします。
嚥下機能の低下
加齢や筋力低下、脳の損傷によって嚥下が難しくなり、唾液が口の中に溜まってしまいます。
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流涎の程度を評価する基準
流涎を評価するための明確な標準スケールがあるわけではなく、医師や看護師が臨床経験をもとに用いる独自の評価方法や、その場の実用性に合わせて簡易的な段階分けを行うことが一般的です。「軽度」「中等度」「重度」という分類は、患者の日常生活への影響やケアの必要性を判断するための目安とする段階的な評価方法であり、正式な研究に基づくものではありません。
軽度 | 唾液が口腔内に留まるが、時折漏れる程度。 |
中等度 | 唾液が頻繁に漏れ、タオルやティッシュで拭く必要がある。 |
重度 | 常に唾液が漏れ続け、頻繁に拭く必要がある。 |
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流涎の治療と対策
流涎に対する医療的アプローチ
医療的な対策には、薬物療法(抗コリン薬などによる唾液分泌の抑制)、ボツリヌス毒素注射、または手術療法(唾液腺の一部を除去または転移)があります。これらの治療法は、患者の状態に合わせて選択されます。
看護における流涎対策
看護現場では、流涎に対して、口腔ケア、嚥下訓練、体位調整などが重要です。患者の体位をやや前屈にすることで、唾液の漏れを軽減できます。また、口腔ケアを行うことで唾液の粘性が変わり、流涎を防ぐ効果も期待できます。
自宅でできる流涎対策
自宅でできる対策としては、姿勢の改善や嚥下訓練が効果的です。嚥下訓練としては、軽く首を上げたり下げたりする運動や、口周りの筋肉を鍛える体操が推奨されます。
流涎の対策としてできるリハビリ方法などについては、この記事の後半で紹介します。
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流涎と唾液の関係
唾液の役割と機能
唾液は、食べ物の消化を助けるほか、口腔内を清潔に保つ役割を持っています。唾液の過剰な分泌が原因で流涎が起こるため、そのコントロールが重要です。
流涎の生理学的メカニズム
唾液は、耳下腺、顎下腺、舌下腺などから分泌されます。これらの分泌腺が過剰に刺激される、または唾液の嚥下がうまくいかないと、流涎が起こります。
流涎と唾液分泌の調整
薬物や神経刺激療法により、唾液分泌を抑制・調整することが可能です。また、嚥下訓練や口腔ケアも効果的です。
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流涎と嚥下の関係
流涎と嚥下の基本関係
流涎(りゅうぜん)と嚥下(えんげ)は密接な関係があります。嚥下は、口腔内にある食べ物や唾液を適切に食道へ運ぶための一連のプロセスであり、この機能が低下すると唾液がうまく飲み込めずに流涎が発生します。ここでは、嚥下のメカニズムや流涎が起こる原因、治療方法について詳しく解説します。
嚥下のメカニズムと流涎の関係
流涎の問題を考慮して、嚥下の5期モデルにおける各段階のメカニズムと流涎の関連性を説明した表です。この表はあくまでも食事の時や水分を摂取する時などを前提としています。流涎の問題は何もしてない時や話をしている時などによだれが口から垂れてしまうことがよく問題やご本人の辛いこととして上がりやすいですが、食事を食べる時にも涎が出てきてしまうことも問題や課題となることもしばしばあります。
段階 | 内容 | 流涎との関連 |
---|---|---|
第1期 先行期 | 食べ物の認知や食欲を感じる前の段階で、唾液が分泌される | 食事の有無に関係なく唾液が分泌されるため、認知機能が低下し口唇閉鎖不全がある場合、唾液を飲み込む指示が脳から出ず、口から流れ出てしまう。特に、認知症や脳神経系の疾患がある患者で顕著に現れる。 |
第2期 準備期 | 食べ物を口に取り込み、咀嚼して食塊を形成する段階 | この段階で唾液の分泌が促進されるが、嚥下や口唇閉鎖の機能が低下している場合、唾液が口外に漏れやすくなり、流涎の原因となる。特に、義歯の適合が悪い場合や咀嚼機能が低下している高齢者に多く見られる。 |
第3期 口腔期 | 舌で食塊を口の奥に送り込む段階 | 舌の筋力や運動機能が低下している場合、唾液と食塊をうまく口腔後方に送ることができず、口腔内に唾液が溜まりやすくなる。その結果、口腔内の唾液が溢れ出て流涎を引き起こす。 |
第4期 咽頭期 | 食塊を咽頭から食道へ送り込む段階(ごっくん動作) | 脳卒中や脳神経疾患による嚥下反射の遅延や感覚障害により、唾液が飲み込まれずに口腔内に残る。結果として、唾液が口から流れ出やすくなり、持続的な流涎につながる。 |
第5期 食道期 | 食塊が食道を通り胃に運ばれる段階 | 食道の機能が低下している場合、唾液の飲み込みが不十分となり、口腔内に唾液が溜まりやすくなる。唾液が食道にうまく送り込まれないと、再び口腔内に逆流し、流涎が発生する。 |
咀嚼から嚥下のメカニズムについては以下の記事で詳しく解説しています。
嚥下障害による流涎の医学的原因
嚥下障害が流涎を引き起こす場合、その原因となる疾患や状態は多岐にわたります。以下の表に主要な原因をまとめます。
原因 | 具体例 | 流涎への影響 |
---|---|---|
神経疾患 | パーキンソン病、ALS、脳卒中 | 嚥下反射や舌の動きが低下し、唾液を飲み込めない |
頭頸部手術後の合併症 | 頭頸部がん手術後など | 手術による神経や筋肉の損傷が嚥下機能を低下させる |
加齢 | 加齢性嚥下障害 | 筋力や嚥下反射の低下により唾液を適切に飲み込めなくなる |
嚥下機能訓練と流涎改善
嚥下機能訓練は流涎の管理と改善に不可欠です。以下の表に嚥下機能訓練の方法とその効果を示します。
訓練方法 | 内容 | 流涎への効果 |
---|---|---|
口腔筋トレーニング | 舌や口唇の筋力を強化する | 唾液のコントロール能力を向上させ、流涎を軽減 |
嚥下反射の強化訓練 | 冷たい飲み物や酸味のある食品を用いて訓練 | 嚥下反射を高め、唾液を飲み込む機能を向上 |
嚥下体操 | 舌や咽頭の動きを訓練する | 嚥下機能全体を向上させ、唾液の飲み込みを改善 |
嚥下障害と流涎の相互作用
嚥下障害があると流涎が起こりやすく、逆に流涎が続くと口腔内の衛生状態が悪化し、さらなる嚥下障害のリスクとなります。以下の表でその相互作用をまとめます。
嚥下障害の影響 | 流涎への影響 |
---|---|
嚥下反射の低下 | 唾液が飲み込めなくなり、口腔内に溜まる |
筋力低下 | 唇や舌の動きが不十分で唾液が漏れ出る |
誤嚥のリスク増加 | 流涎による口腔内の湿潤環境が細菌感染を招く |
医療現場での評価と対策
嚥下と流涎の関係を評価するための検査方法は以下の通りです。
検査方法 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
嚥下造影検査(VF) | X線で嚥下の動きを確認する | 嚥下機能の詳細な評価 |
嚥下内視鏡検査(VE) | 内視鏡を用いて喉の動きを観察する | 喉の筋肉や反射の状態を観察 |
これらの検査を用いて、嚥下機能の状態を正確に評価し、適切な治療や訓練を行うことが、流涎の管理において非常に重要です。
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流涎に対するリハビリ方法
流涎(りゅうぜん)に対するリハビリ方法は、原因に応じて異なります。ここでは「過剰な唾液分泌」「唾液の嚥下障害」「口唇閉鎖不全」の3つの原因に対するリハビリ方法を具体的に説明します。
過剰な唾液分泌に対するリハビリ方法
リハビリ方法 | 具体的な方法 |
---|---|
舌の動きを抑制する訓練 | 舌を上下、左右にゆっくりと動かし、舌の動きをコントロールする。 口を閉じて舌を軽く前歯の裏に当てる位置で維持する。 |
唾液を適切に飲み込む訓練 | 30秒ごとに意識して唾液を飲み込む練習を繰り返す。 タイマーを使って訓練。 |
リラックス法 | 腹式呼吸を行い、ゆっくり息を吸い、長く吐き出すことで唾液分泌を抑える。 |
唾液の嚥下障害に対するリハビリ方法
嚥下体操 | 首を軽く上下に動かしながら唾を何度も飲み込む。 舌を前後に突き出し引っ込める動作を10回程度繰り返す。 |
スプーン嚥下訓練 | スプーンで少量の水や食べ物を使って嚥下練習を行う。 スプーン先端に少量の水を乗せて飲み込む練習。 |
ガーグリング(うがい)訓練 | 水を口に含み声を出しながらうがいをすることで、咽頭や喉頭の筋肉を鍛える。 |
口唇閉鎖不全に対するリハビリ方法
口唇閉鎖訓練 | ストローで吸う動作を繰り返すことで唇の閉鎖力を強化。 また、紙を唇で挟み5秒間維持する。 |
舌抵抗訓練 | 舌を前歯の裏側に押し付け、5秒間維持。その後リラックスし、10回程度繰り返す。 |
口唇体操 | 唇を「いー」「うー」と動かす運動を1日数回、5分程度行い口唇の閉鎖力を高める。 |
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まとめ
「流涎(りゅうぜん)」の正しい読み方や、原因・対策を理解し、適切なケアを行うことは、患者のQOL向上に繋がります。医療・介護従事者として、正確な知識と対応法を身につけることが大切です。
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