医療・看護・介護の現場でよく耳にする「キーパーソン」という言葉。しかし、具体的にどんな役割を果たすのか、誰がなるべきなのかを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。キーパーソンは、患者さんや利用者さんにとって重要な意思決定や情報共有を担う存在であり、家族や支援者の中でも特に信頼される役割を果たします。本記事では、医療や介護に関わる方々が知っておくべきキーパーソンの意味、選び方、法的な位置づけ、さらにはトラブルを防ぐためのポイントまで詳しく解説します。
このページの目次
キーパーソンとは
医療・看護・介護の現場でよく耳にする「キーパーソン」という言葉は、患者さんや利用者さんにとって重要な役割を担う人を指します。特に、治療方針や介護サービスの内容についての意思決定、情報の共有、緊急時の対応など、本人をサポートする中心的な存在として位置づけられます。
日本では高齢化社会の進展とともに、医療・介護現場で家族や支援者の役割がますます重要になっています。その中で、キーパーソンの存在は、本人の意思を尊重しながらも円滑な支援体制を築くうえで欠かせないものとなっています。
広告
キーパーソンの意味
「キーパーソン(Key Person)」は直訳すると「重要な人物」という意味です。医療・看護・介護分野では、主に以下の役割を担います。
意思決定の補助 | 患者さんや利用者さんが自分で判断できない場合、医療方針や介護サービスに関する決定をサポートします。 |
情報の橋渡し | 医療スタッフ、介護職員、家族などの間で情報を共有し、コミュニケーションの中心となります。 |
緊急時の対応窓口 | 急変時の連絡先や、緊急の判断が必要な際の相談相手となります。 |
キーパーソンは必ずしも「法的代理人」や「後見人」ではなく、あくまで支援の中心的な役割を担う人という位置づけです。
広告
キーパーソンになる人
キーパーソンは、以下のような人がなることが一般的です。
家族(親、配偶者、子ども、兄弟姉妹など)
最も多いのは、家族の中で本人と親しい関係にある人です。特に同居している家族や、日常的にサポートしている人が選ばれることが多いです。
親族以外の信頼できる人
独居の高齢者や家族との関係が薄い場合、友人や信頼できる知人、近隣住民などがキーパーソンになることもあります。
成年後見人や身元引受人の代行をしている業者や団体
法的な支援が必要な場合は、成年後見人が意思決定のサポートを行うこともあります。また、
重要なのは、本人の意思を尊重し、適切な判断ができる信頼関係があることですが、例えば家族の場合でも、自分たちの生活もある中でキーパーソンとしての役割も果たそうとすると、キーパーソン自身の家庭やプライベートが制限されてしまうようなこともありえるので、本人の意思を尊重しつつも現実的なところに落とし込んで本人も納得がいくような人がキーパーソンになることが望ましいです。
広告
キーパーソンの言い換え
医療・介護の現場では、「キーパーソン」という言葉のほかにも、以下のような言い換えが使われることがあります。
- 主要連絡先(Primary Contact)
- 代理人(Representative)
- 家族代表(Family Representative)
- 支援者(Supporter)
- 緊急連絡先(Emergency Contact)
施設や病院によって異なる場合がありますが、役割の本質は同じで、「本人を支える重要な存在」という点で共通しています。
広告
キーパーソンの決め方
キーパーソンを決める際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
本人の意思の尊重
可能であれば、本人が信頼する人を指名するのが最も望ましい方法です。意思表示が難しい場合は、本人の過去の意向や家族間での話し合いが参考になります。
家族間の合意形成
家族が複数いる場合は、話し合いのうえで誰が適任かを決めることが大切です。意見の不一致がある場合は、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーなどの専門家に相談するのも有効です。
地域包括支援センターへの相談
判断が難しい場合は、地域包括支援センターに相談し、第三者の意見を取り入れることでスムーズに決定できます。
広告
キーパーソンの法的根拠
キーパーソンという役割自体には、明確な法的根拠は存在しません。ただし、以下の制度や法律が関連する場合があります。
成年後見制度(民法)
本人の判断能力が著しく低下している場合、家庭裁判所の審判を経て成年後見人が選任されることがあります。
医療同意に関するガイドライン
厚生労働省の指針では、家族や信頼できる支援者が本人の意思を尊重して意思決定を支援することが推奨されています。
介護保険法
介護サービスの契約や意思決定の際に、家族や代理人が支援することが想定されています。
あくまでキーパーソンは「意思決定の支援者」であり、法的な代理権は持たないことを理解しておく必要があります。
広告
家族以外もキーパーソンになれる?
キーパーソンは必ずしも家族である必要はありません。特に以下のようなケースでは、家族以外が選ばれることもあります。
- 独居の高齢者や家族との疎遠な関係
- 家族が遠方に住んでいる場合
- 本人が友人や近隣住民を信頼している場合
この場合でも、重要なのは「本人が信頼しているかどうか」という点です。本人の意向が明確であれば、家族以外の人でも問題ありません。
広告
キーパーソンの役割一覧
キーパーソンの役割はメインは本人の意思決定の補助になりますが、実際に病院や介護施設などでキーパーソンを決める上では、親族の意見のまとめ役や生活上の支援などまで含めて捉えられる傾向があります。以下のようなキーパーソンの役割がありますが、家族がキーパーソンになっている場合でも、本人の意思決定の補助に関しては長男が行ったり長女が行ったりして、普段の生活で必要な日用品の買い物や安否確認などは他の家族がやったりなど役割分担しているケースも多いです。
医療機関や介護業界に勤めている人であればキーパーソンと聞いてどんなことをやるのかなんとなくイメージがつくと思いますが、一般の方からするとキーパーソンがどんな役割を担うかはよくわからないと思います。
病院や介護施設側としては、キーパーソンになる人に対してどこまでキーパーソンに役割を担っていただくか、責任を持っていただくかをしっかりとすり合わせをしておくことが重要 です。
医療者や介護従事者の価値観だと、自分たちの仕事外のことはキーパーソンがやって当たり前と考えてしまいがちですが、キーパーソンだからと言って本人ができないこと全てを押し付けてしまうのは良くないのです。主に以下のような役割が発生する可能性があることを踏まえて事前にどこまで対応していただけるかを確認しておきましょう。
役割 | 具体的な内容 |
---|---|
意思決定の補助 | 医療方針や治療内容に関する意思決定の支援 |
介護サービス利用やケアプラン作成への意見提供 | |
情報の共有・管理 | 医療機関、介護事業者、家族間の情報伝達 |
定期的な経過報告や連絡調整 | |
緊急時の対応 | 病状急変時の緊急連絡先として対応 |
緊急入院や手術時の説明同意への立ち会い | |
生活支援・心理的支援 | 本人の生活状況の把握と必要な支援(買い物や衣類の準備など) |
本人や家族のメンタルサポート | |
契約・手続き支援 | 介護サービス契約や入院手続きのサポート |
介護保険や医療費助成などの行政手続きの支援 | |
家族間の調整役 | 家族内の意見調整や話し合いの仲介 |
家族会議の企画や進行役 | |
本人の権利擁護 | 本人の意思や希望が適切に反映されるようサポート |
不適切な医療・介護サービスからの保護 |
広告
キーパーソンとトラブルになる事例
キーパーソンの選定や役割をめぐって、以下のようなトラブルが発生することがあります。
家族間の意見対立
キーパーソンを決める際に、多くの場合では医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどが面談を通じて最も協力を得られそうな人や本人に近い人を選んでいることが多いです。その他にも親族がいる場合でも、面談の際にいただいた意見を中心にキーパーソンになってもらうことを決めていきます。しかし、現実には後から「私がキーパーソンになろうと思っていたのに聞いていなかった」といことや、家族間での意見がまとまっていない状態でキーパーソンに意見を求める形になり「一人だけで決めてしまった」など、兄弟姉妹間で介護方針や治療内容について意見が対立し、トラブルに発展することがあります。
医療や介護の場ではなるべく早くキーパーソンを決めなくてはならないという状況になりますが、後から他の登場人物が現れて揉めることがないように、キーパーソンになる方がその他の親族や親しい方たちの意見を代表していただけるように説明を行いましょう。
情報の共有不足
キーパーソンが情報を独占し、他の家族や親族に適切に伝えないこともあります。病院や介護事業者側はキーパーソンに対して適切に情報提供を行ったり相談の機会を設けていて、その他のご親族にも情報共有をしてくださいとお伝えしている場合でも、その他の親族の方に情報が伝わっていなくて不信感が生まれることがあります。
意思決定の不一致
本人の意思が十分に尊重されず、キーパーソンの独断で重要な決定が行われることも問題としてあります。
法的権限の誤解
キーパーソンが「法的代理人」と誤解され、契約行為などでトラブルになるケースもあります。
トラブルを防ぐためには、家族間での十分なコミュニケーションと、専門職との連携が重要です。
広告
キーパーソンと法定代理人の違い
医療・看護・介護の現場では「キーパーソン」と「法定代理人」という言葉が登場しますが、両者は役割や権限に大きな違いがあります。キーパーソンは、患者さんや利用者さんの意思決定を支援し、情報共有の中心となる人物で、家族や信頼できる人が担うことが多いです。しかし、法的な代理権はなく、治療の同意や契約行為には制限があります。
一方、法定代理人は、法律に基づいて正式に認められた代理権を持つ人物であり、親権者や成年後見人などが該当します。本人に代わって医療同意や契約などの法的行為を行う権限があるため、キーパーソンとは異なり、法的効力を持つ決定が可能です。
キーパーソンと法定代理人の比較表
項目 | キーパーソン | 法定代理人 |
---|---|---|
役割 | 本人の意思決定を支援し、情報共有の中心となる | 本人に代わって法的行為(契約、医療同意など)を行う |
法的権限 | なし(あくまで意思決定の支援者) | あり(民法などに基づく正式な代理権を持つ) |
選任方法 | 家族や本人の希望、医療・介護現場での話し合いによる | 裁判所の審判(成年後見人など)や法律上の権利(親権者)で決定 |
医療同意の可否 | 基本的に不可(医療機関によっては家族同意として扱う場合も) | 可能(正式な代理権があるため法的効力を持つ) |
主な該当者 | 家族、友人、信頼できる支援者 | 親権者、成年後見人、保佐人、補助人 |
変更の容易さ | 家族間の話し合いで変更可能 | 法的手続きが必要(家庭裁判所への申立てなど) |
キーパーソンは日常的な支援や意思疎通において重要な役割を果たしますが、法的な決定が必要な場面では法定代理人の関与が不可欠となることを理解しておくことが大切です。
まとめ
キーパーソンは、医療・看護・介護の現場で本人の意思決定を支援し、重要な情報の橋渡し役として欠かせない存在です。法的な代理権は持たないものの、家族や支援者との信頼関係をもとに、本人の生活の質を守るための重要な役割を果たします。
- 本人の意思を最優先に考えることが大切
- 家族間の合意形成と情報共有がトラブル防止の鍵
適切なキーパーソンを選び、支援体制を整えることで、本人にとって最良の医療・介護環境を実現できるでしょう。
ケアマネジャーの転職は、ケアマネ専門の転職サイトを利用しよう
ケアマネジャーの転職はケアマネ専門の転職サイトの利用が安心です。自分で求人を探したり、人づてに紹介してもらったりする場合、本心では希望している条件をいろいろ我慢してしまいがちになります。転職サイトを挟むことで、希望に合う職場を見つけてもらい、見学・面接対策・条件調整なども行ってもらえるので、希望理由や面接対策で悩んだりすることも減ります。新人ケアマネも、ベテランのケアマネも専門の転職サイトの方がケアマネの求人情報を多く持っています。
居宅介護支援事業所では人手不足状態、ケアマネージャー、主任ケアマネージャー資格を有する人の求人が増えています。多くの転職サイトは介護の仕事のおまけのような感じでケアマネの転職支援をしていますが、ケア求人PECORIだけはケアマネ専門なので、登録して電話面談するときにもケアマネとしての状況や今後の働き方、賃金の相場などを相談しやすいです。
「ケア求人PECOLI」は、ケアマネージャー専門の転職サイトという大変珍しいサービスで、ケアマネに特化して全国の転職支援を行っています。他の転職サイトに登録しても、よい求人が見つからなかったり、電話の人と話が合わなかったりしてうまくいかなかったケアマネも、すぐ登録できるので一度登録してピッタリな求人・転職先の紹介を受けてみましょう。(運営:株式会社PECORI 職業紹介許可番号(厚生労働大臣認可):13-ユ-308091)