就労継続支援について紹介します。共同作業所との違いや、就労継続支援A型・就労継続支援B型の対象やサービス内容、平均工賃、事業所がサービス提供した場合の基本報酬単位数などを紹介します。就労継続支援の難しさと、国から障害福祉サービス費が支給される安泰のビジネスモデルとして金儲け目的で参入することが増えているなどの問題点についても考えていきます。
就労継続支援と共同作業所の違い
2006年10月から「障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)」によって新たなサービス体系となり、共同作業所は主に地域活動支援センターや就労移行支援事業所、就労継続支援A・B型事業所への移行が行われています。かつては共同作業所と呼ばれ、特別支援学校を卒業したあとに、障害のために進路が決まらなかったり、一度は一般の事業所に就職しても仕事になじめず、就業が継続できなかったりしている地域の障害者を対象に、働く場や生活・交流の場の確保をめざす民間事業所が共同作業所でしたが、現在は移行が進んでおり作業所と呼ばれる事業者は少なくなってきました。
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就労継続支援A型事業所とは
就労継続支援A型事業所とは、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う施設のことです。
通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援するという位置付けになっています。
就労継続支援A型事業所の対象
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者
就労継続支援A型事業所のサービス内容
就労継続支援A型事業所の基本報酬の見直し内容(令和3年度障害福祉サービス等報酬改定後)
基本報酬の算定に係る実績について、現行の「1日の平均労働時間」に加え、「生産活動」、「多様な働き方」、「支援力向上」及び「地域連携活動」の5つの観点から成る各評価項目の総
合評価をもって実績とする方式(スコア方式)に見直しが行われました。
評価指標 | 判定スコア | |
労働時間 | 1日の平均労働時間により評価 | 5点~80点で評価 |
生産活動 | 前年度及び前々年度における生産活動収支の状況により評価 | 5点~40点で評価 |
多様な働き方 | 利用者が多様な働き方を実現できる制度の整備状況とその活用 | 実績により評価 0点~35点で評価 |
支援力向上 | 職員のキャリアップの機会を組織として提供している等、支援力向上に係る取組実績により評価 | 0点~35点で評価 |
地域連携活動 | 地元企業と連携した高付加価値の商品開発、施設外就労等により働く場の確保等地域と連携した取組実績により評価 | 0点~10点で評価 |
就労継続支援A型事業所の基本報酬単位数(令和3年度障害福祉サービス等報酬改定後)
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定は、就労継続支援A型事業所の基本報酬を「1日の平均労働時間」に応じて算定していましたが、令和3年度の報酬改定後は5つの観点から成る各評価項目の総合評価をもって実績とする方式(スコア方式)に変更されました。
スコア合計点 | 基本報酬 |
170点以上 | 724単位/日 |
150点以上170点未満 | 692単位/日 |
130点以上150点未満 | 676単位/日 |
105点以上130点未満 | 655単位/日 |
80点以上105点未満 | 527単位/日 |
60点以上80点未満 | 413単位/日 |
60点未満 | 319単位/日 |
※ 従業員配置7.5:1、定員20人以下の場合の単位
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就労継続支援B型事業所とは
就労継続支援B型事業所とは、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う施設のことです。
就労継続支援B型事業所の対象
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 50歳に達している者または障害基礎年金1級受給者
③ ①及び②に該当しない者であって、就労移行支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者
就労継続支援B型事業所における障害種別
就労継続支援B型事業所における若年性認知症の支援事例
就労継続支援B型事業所では利用者の高齢化と共に、高次脳機能障害や若年性認知症のある利用者への
支援が報告されている。
○ 若年性認知症の支援については通常の就労継続支援B型に求められる利用者への支援以上に医療機関や
家族会といった外部機関との関係強化や、家族への支援が必要となる。
利用者数(N=21,932) 割合 身体障害 2,190 10.0% 知的障害 10,537 48.0% 精神障害 6,136 28.0% 難病 112 0.5% 発達障害 795 3.6% 高次脳機能障害 313 1.4% 若年性認知症 39 0.2% 就労継続支援に係る報酬・基準について≪論点等≫,厚生労働省障害福祉サービス等報酬改定検討チーム,2020年9月24日
令和元年度障害者総合福祉推進事業「就労系障害福祉サービスにおける諸課題の把握と事例整理に関する調査研究(PwCコンサルティング合同会社)
就労継続支援B型事業所のサービス内容
就労継続支援B型事業所の基本報酬の見直し内容(令和3年度障害福祉サービス等報酬改定後)
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定後は、「平均工賃月額」に応じた報酬体系になり、高工賃を実現している事業所を更に評価し、よりきめ細かく実績を反映するため8段階の評価を導入されます。
平均工賃月額 | 基本報酬 |
4.5万円以上 | 702単位/日 |
3.5万円以上4.5万円未満 | 672単位/日 |
3万円以上3.5万円未満 | 657単位/日 |
2.5万円以上3万円未満 | 643単位/日 |
2万円以上2.5万円未満 | 631単位/日 |
1.5万円以上2万円未満 | 611単位/日 |
1万円以上1.5万円未満 | 590単位/日 |
1万円未満 | 566単位/日 |
※従業員配置7.5:1、定員20人以下の場合の単位
就労継続支援B型事業所の新たな加算
【地域協働加算】(新設) 30単位/日
利用者の多様な働く意欲に応えつつ、就労を通じた地域での活躍の場を広げる取組として、就労や生産活動の実施にあたり、地域や地域住民と協働した取組を実施する事業所を評価。
【ピアサポート実施加算】(新設)100単位/月
就労を続ける上での不安の解消、生産活動の実施に向けた意欲の向上などへの支援を充実させるため、ピアサポートによる支援を実施する事業所を評価。
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令和元年度 就労継続支援の平均工賃(賃金)
この工賃には、工賃、賃金、給与、手当、賞与その他名称を問わず、事業者が利用者に支払うすべてのものが含まれます。
就労継続支援B型事業所の平均工賃は、平成18年度には平均工賃月額12,222円から、令和元年度16,369円まで引き上げられてきました。しかし、依然として時間額で223円となっており、工賃向上が望まれています。
平均工賃月額 | 平均工賃時間額 | |
就労継続支援A型事業所 | 78,975円 | 887円 |
就労継続支援B型事業所 | 16,369円 | 223円 |
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就労継続支援の難しさとビジネスモデル
この記事で紹介しましたように、就労継続支援の事業は、A型は雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う施設で、B型は就労の機会の提供や就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う施設です。
少ない工賃から障害福祉サービス利用料を事業者に支払わなければならない
かつては作業所として地域のNPOなどが事業を行っていましたが、障害者自立支援法の改定、そして障害者総合支援法の改定で、障害者の働く場が「障害福祉サービス」の枠組みに組み込まれ、利用する障害者が利用料を支払うような形に改変されてきました。公共性の高い事業ですが、このような障害福祉サービスの一つとしての枠組みになり、精神疾患などの比較的支援の程度が少ない方に対してちょっと支援していくことで障害福祉サービスの報酬がもらえるというビジネス面が強くなり、かつての作業証のように、本当に働きたい人が働く場、社会参加の場として機能が発揮しにくくなってきています。また、障害者総合支援法で障害福祉サービスとして整理されたことで、この記事でも紹介したように生活していくにはとても足りない工賃から、障害福祉サービス利用料を事業者に支払って残った分が生活費になるというひどい制度となっており、生活苦も課題となっています。福祉サービスでありながら、福祉としての機能が弱まっているのがこの分野のように感じます。
金儲けのビジネスモデルに巻き込まれて、就労する目的を見失わないように
就労継続支援や就労移行支援は、サービス管理責任者が一人一人の個別支援計画を作成して一般就労を目指していくということが本来の形ですが、低賃金で仕事してもらいさらに障害福祉サービスとして報酬ももらえるという金儲けのビジネスモデルととらえて運営されているケースもあります。近年では今まで福祉の事業などしたことが無かった企業などが、就労移行支援をフランチャイズで事業拡大するなども目立っています。特にA型事業所には、抑うつ症状、統合失調症、気分障害、発達障害、知的障害などの疾患を抱え就労を目指す方は軽度の方から重度の方までいらっしゃいますが、精神疾患で能力は一般の方と同じ程度の場合、軽作業や生産活動・就業に必要なスキルの指導をしたり、規律に慣れたりしながら働いているのと同じような状態でも実質タダ働き(工賃を利用者に渡すが、指導料を徴収など)で、やる気を失わせてしまうことなどひどいこともあります。また、利用者が通所した日数分、事業者は障害福祉サービス費を国に請求できる仕組みなので、体調が悪くても「就労するにはリズムに慣れないとだめですよ」と、無理して出席させるような悪徳業者もあります。
就労継続支援・就労移行支援は事業所選びが重要!
就労移行支援の目的を果たすために、しっかりと計画を立てて就労への支援を行っている事業者もいますので、就労移行支援を利用する場合には、自分がどうなりたいかをしっかり持ち、利用者側も事業者の事業への向き合い方をよく調べて通所する意味をあると思える場所を選んだ方が良いです。
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