姿勢反射障害とは 症状や評価のやり方、リハビリの方法

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病院や施設で働いていると、今にも転びそうな方を見かけることがあります。前傾姿勢だったり、小刻みに歩行をしていたりといった特徴があります。このような方は、転びそうになった時に姿勢を調整できないことが考えられます。このような不安定な状態になってしまうことを、姿勢反射障害と呼びます。

この記事では、姿勢反射障害の病態や、リハビリの方法などについて書いていきます。

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姿勢反射障害とは

私たちは体が傾いたときや、転びそうになった時に、反射的に体に力を入れたり、手足を出したりして、転ばないようにしたり、転倒の衝撃に備えたりします。これらのことを姿勢反射と言います。このような反応が出なくなり、体が傾いてもそのままだったり、転びそうになっても手足が出なかったりして転んでしまいます。姿勢反射障害があると、立位や歩行時にいわゆる「バランスが悪い」状態になりますが、姿勢反射障害の場合にはバランス能力の中でも「姿勢が傾いたときに反射・対応ができない」というバランス能力低下が顕著な状態です。

姿勢反射障害の原因

姿勢反射障害の原因としては、運動に関わる神経に問題があったり、神経伝達物質の分泌が出なくなったりすることが多くの原因です。中でも中脳の黒質が変性することで、ドパミンという神経伝達物質が減少します。するとパーキンソン病の状態になり、進行すると姿勢反射障害が出現してきます。根本的な原因は、いまだにわかっていません。
また、パーキンソン病でなくても、薬の影響などで姿勢反射障害を含むパーキンソン病と似たような症状が出ることもあり、そのような状態のことをパーキンソニズムと呼びます。

姿勢反射障害の評価

姿勢反射障害の評価としてはPull testというものがあります。
その他にも、バランスを見る評価はあります。Berg Balance ScaleMini-BESTestという評価もあります。

あくまで姿勢反射障害の評価になるので、これらの評価をただ行うのではなく、反応的姿勢制御ができるかどうかを検査していくという意識が必要です。

これらの評価で、反応的姿勢制御の評価に関わる部分を詳しく解説していきます。

姿勢反射障害の評価方法① Pull test

Pull testの検査のやり方

  1. 検査をする前に、あらかじめ被検査者に後ろに引くことを説明します。
  2. 被検査者は、転倒しないように努力し、必要であれば足を踏み出してもよいことを説明します。
  3. 実際にこの検査を行う前に、一度は練習しておきます。
  4. 被検査者の姿勢は、足は軽く広げておき、良い姿勢を保ちます。
  5. 検査者は、被検査者を素早く、力強く後方へ引きます。
  6. 検査者は被検査者を受け止める用意をしておきますが、少なくとも3歩被検査者が足を出せるような距離を取るようにします。
  7. もし被検査者を支える自信がなければ、検査者の背後にもう一人サポートする人についてもらいます。

姿勢反射障害の評価方法② Mini-BESTest

Mini-BESTestの検査のやり方

【代償的な修正ステップ-前方】

  1. 被検査者は足を肩幅に広げて、手は体の脇におきます。被検査者は、限界を超えて、検査者の手に寄りかかり、体を傾けます。
  2. 検査者が手を離したら、転ばないように足を踏み出すなど、必要なことは何でもして良いことを被検査者に説明します。
  3. 実際に手を離して、バランス反応が出るかどうか評価します。

※Mini-BESTestでは、代償的な修正ステップの評価を前方・側方・後方の3方向で評価します。側方は左右で別々に評価します。前方の評価と同様に、側方・後方も評価を行なっていきます。検査方法は前方の評価方法と、側方・後方の評価方法は同じなため割愛します。

姿勢反射障害の座位姿勢への影響

これまで姿勢反射障害とはどのようなものか、評価方法はどのようなものがあるか触れてきました。
では、患者さんに姿勢反射障害が認められたとして、姿勢にどのように影響してくるのでしょうか。解説していきます。

① 前傾姿勢になりやすい

姿勢反射障害が出るような患者さんは、骨盤が後ろに倒れ、猫背になり、顎が上がる典型的な悪い姿勢になりやすいです。このような姿勢になる時には、椅子の高さやテーブルの高さを調整し、適切な高さにすることで姿勢を修正しやすくなります。高さの調整が困難な場合は、クッションや足台を用いて高さを調整していきます。

② 側方へ崩れやすい

姿勢反射障害が出るような患者さんは、前方だけでなく、左右に傾いても自分で修正することができないため、どんどん姿勢が崩れていくこともあります。姿勢反射障害が出るほど機能が低下している患者さんにとっては、2つのことを同時に行うことが困難になっている場合も多いです。そのため、食事をしていたり、着替えをしていたりすると、その動作に集中し、姿勢の修正が後回しになってしまうこともあります。このような場合には、肘掛付きの椅子やクッションを用いて側方に対する安定性を向上させたり、介護者からの定期的な声かけや外部刺激を入れていき、姿勢の修正を促していきます。

姿勢反射障害の歩行への影響

歩行能力の低下は、運動量が低下したり、死亡率が増加したり、良い影響はありません。姿勢反射障害は、歩行にどのような影響があるのでしょうか。解説していきます。

① 歩く速度が遅い

姿勢反射障害が出ている患者さんは、健常者と比べて歩く速度が遅いのが特徴です。歩幅も短くなり、すり足になってきます。

② すくみ足・突進現象

歩く速度が遅いだけでなく、すくみ足や突進現象といった特徴的な歩行になることがあります。
すくみ足は、特定の環境で足が出なくなってしまうことを言います。患者さんは1歩を踏み出したいのですが、床に足がくっついてしまったように足が出なくなります。歩行開始時、方向転換時、目標物に近づいた時などに出やすいとされています。
突進現象は、歩行をしているとだんだんと速度が速くなってしまい、自分ではコントロールができなくなってしまう状態になることを言います。突進現象が出てしまうとコントロールが難しくなるので、突進現象を予防していく考えが重要です。

突進現象の予防方法

突進現象を予防するための対応策は下記の通りです。

1. 歩行速度が速くなってきた段階で一度立ち止まる。
2. 腕を大きく振ったり、歩幅をなるべく大きくしたり、動作を大きくする。
3. 前傾姿勢にならないように良い姿勢を意識する。
4. 歩行のリズムが一定になるように意識する。

姿勢反射障害に対するリハビリの方法

姿勢反射障害の症状などについてまとめてきました。ここではリハビリの方法についてまとめていきます。
姿勢反射障害が出る患者さんのリハビリのポイントは、筋力の維持と、姿勢の維持です。
リハビリをする時の注意点としては、自律神経障害を合併している患者さんもいるかもしれないので、低血圧やめまい、ふらつきに注意していきます。

1. 椅子での背伸び

椅子に腰掛け、両手を大きくバンザイします。
この時、腰ばかりが反り返るのではなく、背中の反り返りがしっかりと出るように意識します。

2. 椅子での足踏み

股関節を曲げる筋肉を鍛えるトレーニングです。
椅子に浅く腰掛けて、できるだけ大きく太ももを持ち上げます。
左右交互に繰り返していきます。
太ももを持ち上げる時に上半身が後ろに倒れないようにすることがポイントです。

3. 体幹の回旋運動

仰向けに寝た状態で膝を立て、左右へ倒していきます。
腰が痛くならない程度の角度で行います。反動をつけずにゆっくりと行うことがポイントです。

まとめ

これまで姿勢反射の病態や評価、リハビリについて述べてきました。姿勢反射障害は進行性のものであり、徐々に歩行や姿勢維持が困難になっていきます。症状の進行を抑えたり、新たな症状が出た時にすぐに対処できるようになったりするためには、正しい知識が必要です。今回の記事が、少しでも姿勢反射障害に関わる方の参考になれば幸いです。

参考文献

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