基準費用額とは
基準費用額とは、施設における食費、居住費の平均的な費用を勘案して定められた額です。
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの施設系サービスにおける⾷費・居住費の平均的な費⽤額は、消費税の改定や社会情勢の変化などを踏まえて変化しています。厚生労働省は、全国の介護保険施設の費用についてデータを集め、標準的な費用を計算して基準費用額を決めています。
なぜ基準費用額を決めているかを考えてみると、以下のような理由が挙げられます。
- 利用者の自己負担になる食費・居住費の標準値を決め、適正な価格設定をさせること
- 標準的な食費・居住費の支払いが難しい低所得者に適正な補助給付を行う指標にすること(負担限度額認定)
基準費用額の決め方・内訳
食費の平均的な費用
特養などの施設でかかる食費について、調理員等の費用と材料費等を調査して、一人あたりの1日の食費の平均的な費用を算出しています。
食費の基準費用額(月額)
2019年に厚生労働省が発表したデータによると、各介護保険施設の食費の標準的な月額・日額は以下のようになっていました。
基準費用額 (月額) |
基準費用額 (日額) |
|
食費 | 42,317円 | 1,392円 |
施設系サービスにおける⾷費・居住費の平均的な費⽤額の推移
居住費の平均的な費用
特養などの施設でかかる居住費については、減価償却費と光熱水費を調査して、一人あたりの1日の居住費を平均的な費用を算出しています。
居住費の基準費用額(月額)
2019年に厚生労働省が発表したデータによると、各介護保険施設の居住費の標準的な月額・日額は以下のようになっていました。
基準費用額 (月額) |
基準費用額 (日額) |
|
特養の多床室 | 25,992円 | 855円 |
老健・療養の多床室 | 11,461円 | 377円 |
特養の従来型個室 | 35,598円 | 1,171円 |
老健の従来型個室 | 50,707円 | 1,668円 |
療養の従来型個室 | 50,707円 | 1,668円 |
ユニット型個室的多床室 | 50,707円 | 1,668円 |
ユニット型個室 | 60,982円 | 2,006円 |
施設系サービスにおける⾷費・居住費の平均的な費⽤額の推移
基準費用額の決め方
このように一月を30.4日として、日額を掛け合わせることで基準費用額の月額で、月額を30.4日で割ると日額になるという関係性で決められています。
食費や居住費は介護保険からの給付ではなく原則は自己負担
介護保険施設でも生活にかかる費用である「食費」や「居住費」は介護保険からの給付ではなく、自己負担で賄われることになっています。
低所得者向けに自己負担金額の限度を定め差額を補助する制度がある
低所得者は食費や居住費の支払いが難しいことが想定されるため、標準的な費用の額である基準費用額をもとにして、自己負担金額の限度を定めて、差額を介護保険から給付するという仕組みがあります。これを負担限度額認定と言います。
食費・居住費について、利用者負担第1~第3段階の方を対象に、所得に応じた負担限度額が設定されており、該当する可能性のある人は介護保険施設を利用する前に申請して、負担限度額認定を受けることで限度額を超える費用は自己負担でなく介護保険から給付されます。
低所得でない場合に特養や老健、ショートステイの利用は基準費用額程度の生活費がかかる
基準費用額とは、標準的な費用のことなので、施設により多少高い場合や安い場合がありますが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などのユニット型個室の施設では月6万円ほどの居住費がかかります。食費も月に4万円ほどかかるわけです。
このほかに介護保険の施設サービス利用料の自己負担分などがかかりますので、費用が安く済むといわれている特別養護老人ホームでも、負担限度額の認定が受けられない方は月13万円くらいが月額利用料の最低ラインになります。一定の所得がある人にとっては、特養に入居するという選択がすごくお得であるというわけではないこともあるのです。