介護分野の機能訓練指導員のリハビリに医師の指示書は必要か
 

機能訓練指導員が行う機能訓練に医師の指示が必要か、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)、柔道整復師などがデイサービス(通所介護)・老人ホームでの機能訓練・リハビリ業務についての見解をまとめました。
デイサービス(通所介護)や老人ホーム(特別養護老人ホーム、特定施設)などでも、自立支援や介護予防を重視しリハビリや機能訓練を通してADLやQOLの向上を目指している施設が増えてきました。
理学療法士作業療法士の場合には、必ず医師の指示が必要だと養成校で習って社会に出てきたため、通所介護や老人ホームでの機能訓練業務で不安になる方も多いかと思います。
柔道整復師等の場合には自己判断で進められる業務範囲もありますが、機能訓練については内容や進め方についてどうやってよいのか迷うかと思います。
基本的には誰でもできることは、医師の指示なしで機能訓練として提供しても問題ないということだと解釈しています。
誰でもできることとは、医行為などの法律で制限されている範囲以外の内容という意味です。もちろん計画や提供内容を説明し、同意の上で実施することが前提です。
私の私的な意見も入っていますが、厚生労働省の通達や法律も引用しながら、その根拠と実際の業務について考えていきたいと思います。
※本記事は、機能訓練指導にあたり医師の指示が必要なのかどうかについての考え方を示したものであり、実際に指示の有無等で問題になった場合など、当サイトは一切責任は負いませんのでご了承の上読み進めてください。

名称独占資格、理学療法士だと名乗って良いと厚生労働省が明言

理学療法士・作業療法士は名称独占だということで、自分は理学療法士・作業療法士だと名乗ることが許されています。
どう解釈したのかわかりませんが、医師がいない限りは理学療法士は理学療法士だと名乗ってはいけないという勘違いが業界全体に発生していました
平成25年に改めて通知がなされましたが、日常生活でも、仕事場でも有資格者は資格をもってるのですから療法士だと名乗っても平気です。それが名称独占資格です。
配置上機能訓練指導員と呼ばれる場合もあるかもしれないですが、理学療法士ですと自信を持って言ったほうが経験上 箔がつきます。

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医政医発 1127 第3号 平成 25 年 11 月 27 日 厚生労働省医政局医事課長

理学療法士の名称の使用等について(通知)

理学療法士が、介護予防事業等において、身体に障害のない者に対して、転倒防止の指導等の診療の補助に該当しない範囲の業務を行うことがあるが、このように理学療法以外の業務を行うときであっても、「理学療法士」という名称を使用することは何ら問題ないこと。 また、このような診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときは、医師の指示は不要であること。

機能訓練のプログラムで医行為に該当しないことは指示なく行える

理学療法士及び作業療法士法(抜粋)での定義のおさらい

(定義)
第二条  この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
2  この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。
3  この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。
4  この法律で「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。
(業務)
第十五条  理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項 及び第三十二条 の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。
2  理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない。
3  前二項の規定は、第七条第一項の規定により理学療法士又は作業療法士の名称の使用の停止を命ぜられている者については、適用しない。

上記に引用しましたものは、法律です。理学療法士・作業療法士として働く中での専門性について載せています。理学療法士や作業療法士は、医師の具体的な指示がない場合には「マッサージ」は行えません。マッサージはあん摩マッサージ指圧師にだけ許された業務だからです。
普通に社会人として職業をもって生きる中では、自分の専門の仕事と、仕事に付帯する雑務と、お客さんから求められて柔軟に対応する仕事があります。
法律で保護されているのは専門的な部分であり、付帯する業務や、ニーズに合わせて生まれる仕事には普通に応えていいです。
一般的に機能訓練プログラムとして行われているメニューである、一緒に歩く練習をする、ストレッチする、筋トレする、日常生活の動きや活動を一緒に練習するなど、別に医行為でも何でもありませんので医師の指示なく、ケアプランと職場のルールに従って行えます。

医師・歯科医師しか行うことができない「医行為」とは

医行為(いこうい)は「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為」とするのが通例である。
同じ内容に思われるが「医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生じるおそれのある行為」 という表現もある。
引用:wikipedia医行為

機能訓練においても、「医師の医学的判断および技術がなければ人のからだに危険を与えてしまうということ」は医行為なのでできません。
普通に仕事していてもそうですが、危険な整体・筋が切れるくらいのストレッチ、過負荷になる運動などは行いませんよね。
どこからが医行為なのかのイメージは「介護職員が実施可能な医療的ケアの具体例(厚労省通知)」でつかめるかと思います。稀にありますが、「足が痛いんですけど…」と質問されて、「○○の薬を塗って」などは機能訓練指導員としてはNGです。
これらの解釈は、医行為でないため医師法などの法律に抵触する可能性は低いというものであり、グレーゾーンやリスキーなことは同意、説明、記録、関連機関への問い合わせなどで後々問題にならないかのリスク管理を行う方が望ましいです。

リスク管理と医師の意見、リスクについてはチーム・本人家族と共有を

機能訓練においては、既往歴や生活歴を見ながら、それぞれのリスク管理で危険な行為は控えればよいと考えることができます。
リスク管理としては、業界でスタンダードとなっている「リハビリ・機能訓練の中止基準 運動強度と目標心拍数の求め方」は抑えて業務にあたった方がよいです。
ただ、既往歴を見て普通のリスク管理より厳重な管理が必要な場合もあるため、その場合は医師に相談してどのようなことが禁止かなどを確認しておく必要はあります。
これは介護サービスを利用する方全員に対してすべきことですが、ケアマネおよび家族から生活上の注意点や後遺症による制限などを聞き、チームで共有しておきます
療法士としての専門性で潜在リスクに気付けた時は、本人に聞き、ケアマネ・家族に相談し、医師からの生活上の助言・指示をもらい、担当者会議等を通して本人家族を含む他職種で共有しましょう。
ただ、機能訓練として行う中では、日常生活動作・生活機能向上がメインテーマになるので、細かな機能訓練やリスキーな内容の比率は少なくなるかと思います。
また、ケアプランやケアの方針で専門的に生活な立場から

治療目的のリハビリを希望された場合は医師に相談はした方がベター

治療目的のリハビリを強く希望する場合や、既往歴を見て内容の立案に困った場合は、まずは本人・家族に相談です。
利用者は医療機関に何らかの形でかかっていることがほとんどですし、実施に当たり医師などに相談したいと伝えれば相手も応えてくれることでしょう。
安静が必要な時は、「安静にしなさい」という医師の指示が出ますし、難病など専門的で高度な医学的リハビリテーションが必要ならば医師から紹介してもらえることもあります。。

自分だけで進めない、ケアマネジャー中心にケアプランに沿ったチームケアを

機能訓練の内容に迷ったり悩んだ場合、ケアマネジャーが立案したケアプランに沿ってサービス提供するのがセオリーなので、ケアマネジャーには話を通しましょう。
多くの場合ケアマネジャーの方が自分の仕事だと思ってくれて、間に立って進めてくれます。
介護保険では、介護事業者に対してケアプランで治療という内容は無いかと思いますので、落としどころはみんなで見つけていきましょう。
機能訓練指導員は、からだやこころのことを親身になって支える仕事なので、行ってみたい活動や社会参加など、QOLの向上にも関われます。
もしケアプランで定められた機能訓練の目標と、本人の望む生活に乖離があるときは「QOLとは 介護のケアマネジメント・ケアプランでも本当の希望を」の記事のようにポジティブな機能訓練へ導けるようにチームケアに働きかけていきましょう。

医師の指示は原則なくても機能訓練業務はできるが医師はチームで最重要

心筋梗塞後の利用者が、デイサービスにおいて機能訓練として過負荷のマシントレーニングを行い、心臓が止まってしまったという恐ろしい話も耳にします。

後からトラブルになっても困ってしまいますし、医師の意見のもとリスクの説明・ケアマネや家族などとの情報共有をあらかじめしておく方が良いです。
往診のDr、主治医などに相談し、情報と指示をもらって、チームで共有してから行えば、心配も減りますし目標やリスク共有ができて理想的ではないでしょうか。
また、本人や家族、看護師などチームでスク管理については情報共有しておくことが望ましいです。看護師の介護分野の仕事には医学的な面を考えながらご利用者が安心して生活を送ってもらうことを倫理として備えている方が多くいます。
機能訓練指導加算として機能訓練に携わる場合には、主目的は生活機能向上です。その中でリスクについてご本人にも理解してもらっていくことは大切ですし、実現可能な目標を立てることにも役立ちます。

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