2025年1月から介護事業者を対象に新たに導入される「介護事業財務情報データベースシステム」により、すべての介護事業者が経営情報の報告義務を負うことになります。このシステムのもとになっている「介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析等の制度」の目的や導入の背景、そして介護事業者に求められる具体的な対応について、本記事で詳しく解説します。
このページの目次
介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析等の制度とは?
介護サービス事業者の経営情報の調査と分析の制度は、令和6年4月1日に施行された制度で、原則全ての介護サービス事業者を対象に、介護施設・事業所における収益や費用、職種別の給料、職員の人数などを介護事業財務情報データベースシステムに提出し、都道府県を通じて厚生労働省が集計し、国民に分かりやすく公表するというものです。
令和6年(2024年)は主に介護事業財務情報データベースシステムと事業所の会計決算の準備期間となっており、報告期間は2025年1月から開始となります。
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「介護事業財務情報データベースシステム」とは?
介護事業財務情報データベースシステムは、介護サービス事業者が毎会計年度終了後に都道府県知事に経営情報に関するデータを報告するために使用するデータベースです。介護事業財務情報データベースシステムの整備は国(厚生労働省)が行います。報告された経営情報の調査・分析は都道府県と厚生労働省で行うという役割分担が想定されています。
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介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析等の制度ができた経緯
2040年を見据えた人口動態等の変化、生産年齢人口の減少と介護現場における人材不足の状況、人口感染症などによる介護事業者への経営業を踏まえた支援、制度の持続性などに的確に対応するとともに、物価上昇や災害、侵攻感染症などに当たり経営影響を踏まえた的確な支援策の検討を行う上で3年に1度の介護事業経営実態調査を補完する必要があるという考えのもと、介護サービス事業者の経営情報の収集とデータベースの整備をし、収集した情報を国民に分かりやすくなるよう属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表する制度を創設することとなりました。
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介護サービス事業者経営情報の4つの報告データ
介護サービス事業者経営情報の報告データは、介護事業財務諸表データベースシステムを利用して大きく分けると以下の4つのデータ(介護サービス事業者経営情報)をを報告することとなります。「損益計算書等データ」「届出対象事業所データ」に関しては、対応している会計ソフトからCSVまたはJSON形式のファイルを出力して、それを介護事業財務諸表データベースシステムに登録する形もできるよう設計されています。「事業所連絡先データ」「追加情報データ」は介護事業財務諸表データベースシステムにログインして画面入力で登録することしかできません。
報告データ | 報告データの説明 | 入力形式 |
損益計算書等データ | 介護サービス事業者の収益及び費用の情報を報告。 報告項目は各会計基準にを指定している。 |
画面入力 ファイル登録 |
届出対象事業所データ | 「損益計算書等データ」に含まれる届出対象とした事業所情報(介護事業所番号、介護事業所名、サービス種類コード)を登録。 | 画面入力 ファイル登録 |
事業所連絡先データ | 「届出対象事業所データ」に含まれる介護事業所の連絡先(メールアドレス)を登録 | 画面入力 |
追加情報データ | 報告に関連する情報として以下の追加情報を登録
|
画面入力 |
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介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析等の制度の報告対象となる介護サービス事業者
介護サービス事業者の経営情報の報告対象となる介護サービス事業者は、原則、全ての介護サービス事業者が報告対象です。
① 訪問介護
② 訪問入浴介護
③ 訪問看護
④ 訪問リハビリテーション
⑤ 通所介護、通所リハビリテーション
⑥ 短期入所生活介護
⑦ 短期入所療養介護(則第 14 条第4号に掲げる診療所に係るものを除く。)
⑧ 特定施設入居者生活介護(養護老人ホームに係るものを除く。)
⑨ 福祉用具貸与
⑩ 特定福祉用具販売
⑪ 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
⑫ 夜間対応型訪問介護
⑬ 地域密着型通所介護
⑭ 認知症対応型通所介護
⑮ 小規模多機能型居宅介護
⑯ 認知症対応型共同生活介護
⑰ 地域密着型特定施設入居者生活介護(養護老人ホームに係るものを除く。)
⑱ 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
⑲ 複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
⑳ 居宅介護支援
㉑ 介護福祉施設サービス
㉒ 介護保健施設サービス
㉓ 介護医療院サービス
㉔ 介護予防訪問入浴介護
㉕ 介護予防訪問看護
㉖ 介護予防訪問リハビリテーション
㉗ 介護予防通所リハビリテーション
㉘ 介護予防短期入所生活介護
㉙ 介護予防短期入所療養介護(則第 22 条の 14 第4号に掲げる診療所に係るものを除く。)
㉚ 介護予防特定施設入居者生活介護(養護老人ホームに係るものを除く。)
㉛ 介護予防福祉用具貸与
㉜ 特定介護予防福祉用具販売
㉝ 介護予防認知症対応型通所介護
㉞ 介護予防小規模多機能型居宅介護
㉟ 介護予防認知症対応型共同生活介護
ただし、小規模事業者などに配慮する観点から事業所施設の全てが以下のいずれかに当てはまる介護サービス事業者は報告対象から除外されます。
- 過去1年間で提供を行った介護サービスの対価として支払いを受けた金額が100万円以下
- 災害その他都道府県知事に対し報告を行うことができないことについて正当な理由があるもの
報告を求める対象となる介護サービス事業者経営情報
報告を求める対象となる介護サービス事業者経営情報は、介護保険法第 115 条の 44 の2第2項の規定に基づき報告を求める内容が定められています。
※は、任意記載の項目です。
事業所又は施設の名称、所在地その他の基本情報
(1)事業所又は施設の名称
(2)法人等の名称
(3)法人番号
(4)介護事業所番号
(5)介護事業所で提供しているサービスの種類
(6)法人等の会計年度末
(7)法人等の採用している会計基準
(8)消費税の経理方式
事業所又は施設の収益及び費用の内容
(1)介護事業収益
①うち施設介護料収益 ※
②うち居宅介護料収益 ※
③うち居宅介護支援介護料収益 ※
④うち保険外収益 ※
(2)介護事業費用
①うち給与費
ア)うち給与
イ)うち役員報酬 ※
ウ)うち退職給与引当金繰入 ※
エ)うち法定福利費 ※
②うち業務委託費
ア)うち給食委託費 ※
③うち減価償却費
④うち水道光熱費
⑤うちその他費用
ア)うち材料費 ※
ⅰ)うち給食材料費 ※
イ)うち研修費※
ウ)うち本部費 ※
エ)うち車両費 ※
オ)うち控除対象外消費税等負担額 ※
(3)事業外収益 ※
①うち受取利息配当金 ※
②うち運営費補助金収益 ※
③うち施設整備補助金収益 ※
④うち寄付金※
(4)事業外費用 ※
①うち借入金利息 ※
(5)特別収益 ※
(6)特別費用 ※
(7)法人税、住民税及び事業税負担額 ※
事業所又は施設の職員の職種別人数その他の人員に関する事項
(1)次の職種ごとのその人数(常勤・非常勤別)
① 管理者
② 医師
③ 歯科医師
④ 薬剤師
⑤ 看護師
⑥ 准看護師
⑦ 介護職員(介護福祉士)
⑧ 理学療法士
⑨ 作業療法士
⑩ 言語聴覚士
⑪ 柔道整復師・あん摩マッサージ師
⑫ 生活相談員・支援相談員
⑬ 福祉用具専門相談員
⑭ 栄養士・管理栄養士
⑮ 調理員
⑯ 事務職員
⑰ その他の職員
⑱ 上記のうち介護支援専門員・計画作成担当者
⑲ 上記のうち訪問介護のサービス提供責任者
(2)(1)に掲げる職種ごとの給与及び賞与 ※
その他必要な事項
(1)複数の介護サービス事業の有無
(2)介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
(3)医療における事業収益 ※
(4)医療における延べ在院者数 ※
(5)医療における外来患者数 ※
(6)障害福祉サービスにおける事業収益 ※
(7)障害福祉サービスにおける延べ利用者数 ※
詳細は令和6年8月2日厚生労働省発出の「介護保険法第 115 条の 44 の2の規定に基づく介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等に関する制度に係る実施上の留意事項について」でご確認ください。
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介護サービス事業者経営情報の報告フローとデータベースシステムの画面例
介護事業所担当者は介護事業財務情報データベースシステムを利用して「損益計算書等データ」「届出対象事業所データ」「事業所連絡先データ」「追加情報データ」の4つを登録することで介護サービス事業者経営情報の登録が完了します。こちらは介護事業財務情報データベースシステムでの報告を行う画面の例です。
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まとめ
ここまで紹介したように、2025年の1月から介護事業財務情報データベースシステムが稼働し、全ての介護事業者は原則「損益計算書等データ」「届出対象事業所データ」「事業所連絡先データ」「追加情報データ」の4つを登録することが義務化されます。介護サービス事業者は会計年度終了後3月以内に報告を行う必要が出てきます。介護事業財務情報データベースシステムでたくさんの情報を画面入力する場合には、業務の負担が膨大に増えることが予測されます。2024年の間は会計ソフトから外部インターフェースファイルを取り出せるようにするシステム対応や、介護事業財務情報データベースシステムの開発が継続されるとともに、データベースシステムの運用マニュアルが発出されるなど準備期間のような形になります。
とにかく負担が多くならないようにうまく整備が進むと良いと思いますが、会計ソフト側も厚生労働省の指定する外部インターフェースファイルの形式で出力できるようにシステム対応するのはかなり負担の大きいことです。厚生労働省は科学的介護情報システム「LIFE」でも事務負担を重くしてしまったため介護事業財務情報データベースシステムは負担が大きくなりすぎずに準備されていくと良いなと思っています。
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