地域医療構想について、どのような構想なのか、2025年に向けた急性期病床削減と回復期病床増床の関係性、病床機能ごとの病床数の推移・必要病床数、病床機能報告制度の報告ルール、地域医療構想の問題点について紹介します。高齢化が顕著な中、2025年の医療需要についてどのように推計され、2040年を展望した医療提供体制の改革はどのようになっていくのか将来像についても解説します。
このページの目次
地域医療構想とは
地域医療構想とは「2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計し、定めるもの」と示されています。2014年頃から本格議論されています。
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地域医療構想は「病床削減」が目的なのか
地域医療構想の話題としては、病床削減の部分が取り挙げられることが多いですが、地域医療構想は病床機能別に医療機関を①高度急性期、②急性期、③回復期、④慢性期の4つに分けて、2025年の人口分布や医療需要の推計で必要とされた病床数にそれぞれの病床を調整するというものです。後に触れますが、地域医療構想の推計の中で、高度急性期と急性期については需要に対して多くなっており、回復期については少ない状態なので、回復期病床への転換の推進理由の一つとなっています。
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地域医療構想の内容
2025年の医療需要と病床の必要量
- 高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4機能ごとに医療需要と病床の必要量を推計
- 在宅医療等の医療需要を推計
- 都道府県内の構想区域(二次医療圏が基本)単位で推計
目指すべき医療提供体制を実現するための施策
例) 医療機能の分化・連携を進めるための施設設備、在宅医療等の充実、医療従事者の確保・養成等
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病床機能報告制度
病床機能報告においては、病棟が担う医療機能をいずれか1つ選択して報告することとされています。実際の病棟には様々な病期の患者が入院していることから、病床機能報告ではその病棟でいずれかの機能のうち最も多くの割合の患者を報告することが基本とされています。
医療機能の名称 | 医療機能の内容 |
高度急性期機能 | 急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能
<高度急性期機能に該当すると考えられる病棟の例> 救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、小児集中治療室、総合周産期集中治療室であるなど、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟 |
急性期機能 | 急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能 |
回復期機能 | 急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能。 特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能(回復期リハビリテーション機能)。 |
慢性期機能 | 長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能
長期にわたり療養が必要な重度の障害者(重度の意識障害者を含む)、筋ジストロフィー患者又は難病患者等を入院させる機能 |
病床機能報告制度の報告ルール
※高度急性期・急性期に関連する項目の診療実績が全くない病棟は、「高度急性期」「急性期」機能を選択することができない。
※回復期機能については、「リハビリテーションを提供する機能」や「回復期リハビリテーション機能」のみではなく、リハビリテーションを提供していなくても「急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療」を提供している場合には、回復期機能を選択できる
※地域包括ケア病棟については、当該病棟が主に回復期機能を提供している場合は、回復期機能を選択し、主に急性期機能を提供している場合は急性期機能を選択するなど、個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして、医療機能を適切に選択する
※特定機能病院においても、病棟の機能の選択に当たっては、一律に高度急性期機能を選択するのではなく、個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして、医療機能を適切に選択する
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地域医療構想の実現プロセス
地域医療構想を実現するためには、医療機関が「地域医療構想調整会議」で協議を行い、機能分化・連携を進めます。
都道府県は、地域医療介護総合確保基金を活用し、地域医療構想調整会議での協議を踏まえた自主的な取組だけでは、機能分化・連携が進まない場合には、医療法に定められた都道府県知事の役割を適切に発揮していきます。
1地域における役割分担の明確化と将来の方向性の共有を「地域医療構想調整会議」で協議
個々の病院の再編に向け、各都道府県での「地域医療構想調整会議」での協議を促進。
① 救急医療や小児、周産期医療等の政策医療を担う中心的な医療機関の役割の明確化を図る
② その他の医療機関について、中心的な医療機関が担わない機能や、中心的な医療機関との連携等を踏まえた役割の明確化を図る
2「地域医療介護総合確保基金」により支援
都道府県は、「地域医療介護総合確保基金」を活用して、医療機関の機能分化・連携を支援。
・病床機能の転換等に伴う施設整備・設備整備の補助等を実施。
3都道府県知事による適切な役割の発揮
都道府県知事は、医療法上の役割を適切に発揮し、機能分化・連携を推進します。
医療法に定められている都道府県の権限
② 協議が調わない等の場合に、地域で不足している医療機能を担うよう指示(公的医療機関等)及び要請・勧告(民間医療機関)
③ 病院の開設等の許可申請があった場合に、地域で不足している医療機能を担うよう、開設等の許可に条件を付与
④ 稼働していない病床の削減を命令(公的医療機関等)及び要請・勧告(民間医療機関)
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病床機能ごとの病床数の推移・必要病床数
第1回医療政策研修会第1回地域医療構想アドバイザー会議(令和元年6月7日)によると、2025年見込の病床数は121.8万床となっており、2015年に比べ、3.3万床減少する見込みだが、地域医療構想における2025年の病床の必要量と比べ未だ2.7万床の開きがある状態です。
急性期病床削減と回復期転換の理由
2025年見込の高度急性期・急性期の病床数の合計は72万床であり、地域医療構想における2025年の病床の必要量と比べ18.8万床開きがある。一方で回復期については18.3万床不足しており、「急性期」からの転換を進める必要があります。
地域医療構想で算出された必要病床数に向けて、病床機能報告制度による医療機関からの報告と地域医療構想調整会議での議論を行い、必要病床数への調整が行われています。
さらに、各医療機関の診療実績データ(レセプトデータ)を分析し、公立・公的医療機関等の役割が当該医療機関でなければ
担えないものに重点化されているか、合意された具体的対応方針を検証し、地域医療構想の実現に必要な協議が行われます。
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2040年を展望した医療提供体制の改革について
医療提供体制の改革については2025年を目指した地域医療構想の実現等に取り組んでいるますが、2025年以降も少子高齢化の進展が見込まれ、さらに人口減に伴う医療人材の不足、医療従事者の働き方改革といった新たな課題への対応も必要です。2040年の医療提供体制の展望を見据えた対応を整理し、地域医療構想の実現だけでなく、医師・医療従事者の働き方改革の推進、実効性のある医師偏在対策の着実な推進が必要だと言われています。
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地域医療構想の問題点
日本の人口は近年横ばいであり、人口減少局面を迎えています。2060年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になると推計されています。
このような状況下で、今までは積極的に高齢者を救い治療することを進めてきていましたが、2050〜2060年頃には、治療すべき世代・疾患の方は治療をしつつも、高齢者に対しては病気を抱えつつもよりよく生活することや、支えて看取ることがかなり身近になることが予想されいます。
地域医療構想では、医療法で定められた都道府県の権限で、地域で不足している医療機能を担うよう指示できるなど、地域の都道府県知事が医療の状況を把握して調整が進められています。しかし、新型コロナウイルス感染症の対応などで医療機関の機能の調整を地域医療構想を前提とした医療機能の分担で計画通りに進めて問題ないかの疑念が生じました。
日本にとって高齢社会になることは避けられないことですが、医療的な介入が必要な感染症の急速な蔓延や、戦争やテロの多発などの有事の時に急性期の医療を担う医療機関の重要性が再び課題として浮上してきました。通常時であれば通常の医療需要に合わせてゆっくりと病床転換に備えることができますが、有事や大規模災害では機動的な医療力に問題点があります。
地域医療構想では、入院する病床がある医療機関を主として推計や計画が進んでいますが、新型コロナウイルス感染症の初期治療や入院を必要としない疾患の治療などは病床がない診療所やクリニックの役割も重要です。地域医療構想と同時進行で進む「地域包括ケアシステム」の構築には、かかりつけ医の存在や介護サービス事業者との連携など欠かせないのですが、こちらも連携の難しさに直面しています。
医療のことは行政と入院施設のある医療関連組織で議論が進みますが、介護分野やその他福祉・行政・保健分野とも足並みを揃えて医療需要に応え、早期治療、早期回復し、安心して生活期に移行していける体制づくりがこれからのあるべき姿ではないかと思います。
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