ベースアップ評価料とは?ⅠとⅡの違い・対象職員・令和8年度(2026年)診療報酬改定

令和8年(2026年)6月施行の診療報酬改定で、医療従事者の賃上げを支える「ベースアップ評価料」が大幅に見直されました。対象職員の拡大、点数の引き上げ、継続賃上げ施設への優遇、そして賃上げを行わない施設への減算規定の新設と、令和6年度改定以来最大の変化です。
「ベースアップ評価料ⅠとⅡの違いが分からない」「新しい対象職員は誰か」「算定しないとどうなるか」など、この記事では、医療機関の経営者・事務担当者と、賃上げの恩恵を期待している現場職員の双方に向けて、令和8年度改定のポイントを整理します。
※ 厚生労働省の資料「令和8年度診療報酬改定の概要 全体概要版・賃上げ対応」を参考にしております。
ベースアップ評価料とは
ベースアップ評価料とは、保険医療機関に勤務する職員の賃上げ(ベースアップ)を支援するために診療報酬で評価される点数です。医療機関がこの評価料を算定して得た収入は、全額を対象職員の賃金改善に充てなければなりません。
令和6年度改定で初めて新設され、看護師・薬剤師・リハビリ職などの医療関係職種を対象として「2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップ実現」を目的として運用されてきました。令和8年度改定ではこれを引き継ぎ、目標を令和8・9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップ実現に設定し直しています。
ベースアップ評価料は医科・歯科・調剤・訪問看護それぞれに設けられており、施設類型ごとに種類や算定方法が異なります。本記事では主に医科の外来・在宅・入院における評価料を中心に解説します。
令和8年度診療報酬改定「ベースアップ評価料」 3つの変更点
① 対象職員の大幅拡大
令和6・7年度のベースアップ評価料では、対象職員は「主として医療に従事する職員(医師・歯科医師を除く)」とされていました。具体的には看護師・薬剤師・理学療法士・診療放射線技師・管理栄養士・医療事務作業補助者などが含まれていましたが、医師・歯科医師・事務職員は対象外でした。
令和8年度改定からは対象が「当該保険医療機関に勤務する職員(40歳以上の医師・歯科医師・薬局薬剤師、業務委託により勤務する者を除く。経営者・法人役員を除く)」へと拡大されます。これにより40歳未満の勤務医師・歯科医師・薬局薬剤師、および事務職員もベースアップ評価料の対象に加わります。
令和6・7年度は、事務職員や医師の賃上げ原資は初・再診料や入院料の増点によって対応されていましたが、令和8年度からはこれらも含めてベースアップ評価料の仕組みに統合されます。賃金改善計画書・実績報告書への記載対象も広がるため、事務担当者は給与総額の計算対象が変わる点に注意が必要です。
② 点数の大幅引き上げと継続賃上げ施設への優遇
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の点数が大幅に引き上げられます。また今回の改定から、継続的に賃上げを実施している医療機関(令和6年3月以降継続)にはより高い点数が設定される仕組みが導入されました。
| 算定区分 | 令和6・7年度(現行) | 令和8年6月〜(新規賃上げ) | 令和8年6月〜(継続賃上げ) | 令和9年6月〜(新規賃上げ) | 令和9年6月〜(継続賃上げ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 初診時 | 6点 | 17点 | 23点 | 34点 | 40点 |
| 再診時等 | 2点 | 4点 | 6点 | 8点 | 10点 |
| 訪問診療時(同一以外) | 28点 | 79点 | 107点 | 158点 | 186点 |
| 訪問診療時(同一) | 7点 | 19点 | 26点 | 38点 | 45点 |
令和9年6月以降は外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)で得られる額がおおむね2倍になるよう設計されています。継続賃上げを実施してきた医療機関と、新たに取り組む医療機関では点数に差がつくため、早期から賃上げに取り組んでいる施設が有利になる仕組みです。
③ 賃上げを行わない医療機関への減算規定の新設(入院)
入院医療における賃上げ対応は、令和8年度から仕組みが変わります。令和6・7年度の「入院ベースアップ評価料」に相当する分は入院基本料等に組み込まれて増点されますが、入院基本料に減算規定が新設されました。
以下のいずれかを満たさない医療機関は、入院基本料等が減算されます。
一例として、急性期一般入院料1では1日あたり121点減算となる見込みです。過去の賃上げの実績がなく、ベースアップ評価料も未届出の医療機関は、事実上の大幅な収入減になります。入院医療を行っている病院は、早急な対応が求められます。
外来・在宅ベースアップ評価料ⅠとⅡの違い
外来・在宅ベースアップ評価料には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があります。基本的な位置づけは令和8年度改定後も変わりません。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、初診・再診・訪問診療の際に算定する基本的な評価料です。受診1件ごとに算定するシンプルな仕組みで、事務負担が少なく、すべての外来・在宅医療機関が届け出やすい形となっています。令和8年度改定で届出手続きも簡素化され、賃金改善計画書(当該年度分)の提出が不要になるなど、取得しやすい制度になっています。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は、(Ⅰ)だけでは対象職員の賃金改善に必要な財源が不足する医療機関のための上乗せ評価料です。(Ⅰ)による見込み収益が、対象職員の適切な賃金改善に必要な額の50%未満である場合に(Ⅱ)を組み合わせて算定できます。職員数が多い割に外来患者数が少ない施設(大規模病院の外来など)で活用される場面が多い評価料です。
区分は令和8年6月から12区分(令和9年6月からは24区分に拡大)設けられており、必要な賃上げ額に応じた区分を届け出ます。区分が高いほど1件あたりの算定点数が高くなります。
入院ベースアップ評価料
入院医療を行う病院では、令和8年度改定で入院ベースアップ評価料の仕組みが大きく変わります。令和8年度の新水準の評価は、医療機関ごとの給与総額に応じて必要な賃上げ額が得られるよう設計されており、最大250区分(令和9年6月以降は500区分)の細かい設定になっています。
医療機関の対象職員の給与総額をもとに必要な賃上げ額を計算し、それに対応する区分を届け出る方式です。規模の大きい病院ほど給与総額が多く、区分数が多くなります。
訪問看護ベースアップ評価料
訪問看護ステーションでは「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)」が引き続き算定できます。令和8年度改定で点数が見直され、利用者1人につき月1回の算定で、継続的な賃上げ実績がある施設では現行の780円から1,050円に引き上げられる見込みです。
なお、介護保険で多くのサービスを提供する訪問看護ステーションは、診療報酬側での対応だけでは賃上げ原資が限られていましたが、令和8年6月以降は介護報酬においても処遇改善加算が新設される予定で(介護職員等処遇改善加算に訪問看護が新たに追加)、両方の仕組みを活用できる環境が整います。
薬局・歯科技工所への新設
調剤ベースアップ評価料(薬局向け)
令和8年度改定で薬局に「調剤ベースアップ評価料」が新設されます。これまで薬局の薬剤師・事務職員の賃上げは調剤報酬本体の増点で対応されていましたが、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と同様の算定体系へと移行します。薬局の薬剤師・事務職員が対象です。
歯科技工所ベースアップ支援料(歯科向け)
歯科技工所は医療機関からの委託を受ける立場であり、雇用関係が医療機関との間に直接存在しません。この特性を踏まえ、歯科技工所の歯科技工士の賃上げを図るため「歯科技工所ベースアップ支援料」が新設されます。製作委託時に一定の評価を行う形で、医療機関を通じた賃上げ支援の仕組みが設けられます。
使途の拡大、夜勤手当への充当が可能に
令和8年度改定からは、ベースアップ評価料(看護職員処遇改善評価料・外来・在宅ベースアップ評価料・入院ベースアップ評価料すべてが対象)で得た収入を、夜勤手当の増額に充てることが可能になります。これまではベースアップ(基本給等の引き上げ)への充当が原則でしたが、夜勤職員の確保が困難な医療機関にとっては処遇改善策として活用できる幅が広がります。
ただし、賃金改善の合計額の3分の2以上はベースアップ等(夜勤手当を含む)で行う必要があります。令和6・7年度まで認められていた「翌年度への繰り越し」規定は、令和8年度以降は廃止される点に注意が必要です。
ベースアップ評価料を算定しない場合のリスク
ベースアップ評価料は任意で届け出る制度ですが、算定しない場合のリスクは令和8年度から格段に高まっています。
外来・在宅医療機関では、継続賃上げ実績がない施設は点数が低く設定されるため、賃上げ原資の確保が困難になります。入院医療機関では、賃上げ未実施・届出なしの場合に入院基本料の減算という直接的な収入減になります。
さらに、算定の有無は採用競争にも影響します。職員が転職先を選ぶ際に「ベースアップ評価料を取得している施設かどうか」が判断材料になるケースが増えており、未取得施設は他院との給与格差が生まれやすくなります。
令和8年度の対応スケジュールと届出手続き
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年6月1日 | 令和8年度診療報酬改定施行。新点数・新ベースアップ評価料のスタート |
| 6月(施行月) | ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出。令和8年度分の賃金改善計画書の提出(令和8年度改定から計画書提出の簡素化が予定されている) |
| 8月頃 | 令和7年度分の賃金改善実績報告書の提出(前年度実績の報告)。令和8年度中間報告が求められる案も検討中 |
| 令和9年6月 | 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)・(Ⅱ)の点数が倍増。入院ベースアップ評価料の区分が最大500に拡大 |
令和8年度改定では届出手続きの簡素化が進められています。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)については、申請書・中間報告書・報告書の3書類への変更や、区分見直し計算の廃止などが検討されており、事務負担の軽減が図られる予定です。詳細は厚生労働省から発出される告示・通知で確認してください。
現場の職員にとって何が変わるか
「賃上げが実際にどれくらい給料に反映されるのか」という点は、職員にとって最も気になる点です。令和8・9年度の目標は各年度3.2%のベースアップですが、実際の支給額は医療機関の規模・患者数・給与総額・配分方法によって異なります。
看護師(月収30万円)を例にすると、3.2%は約9,600円の月収増に相当します。看護補助者・事務職員の目標は5.7%で、同じ月収なら約17,100円の増加に相当する計算です。ただしこれはあくまで目標値であり、医療機関が実際にどう配分するかによって一人ひとりの受取額は変わります。
勤め先がベースアップ評価料を届け出ているかどうかは、施設に直接確認するか、給与改定の有無で判断することになります。「賃上げがされていない」と感じた場合は、施設の届出状況を確認することが第一歩です。
まとめ
令和8年度診療報酬改定のベースアップ評価料の変更点を整理します。
詳細な点数・施設基準・届出様式は告示・通知で確認してください。厚生労働省の令和8年度診療報酬改定ページに関連資料が随時掲載されます。
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