身体拘束廃止未実施減算の内容、介護保険施設で必ず行うこと

 

令和6年度の介護報酬改定では、「身体拘束廃止未実施減算」に関する規定が一層強化されました。利用者の尊厳を守るため、介護施設では具体的な取り組みが求められています。

身体拘束廃止未実施減算とは?

「身体拘束廃止未実施減算」とは、介護施設が身体拘束を適切に廃止するための基準を満たさない場合に適用されるペナルティです。利用者の尊厳と安全を確保するため、施設運営において身体拘束の適正化を徹底することを目的としています。令和6年度の介護報酬改定では、この減算規定がさらに強化され、短期入所系サービスや多機能系サービスにも適用が拡大されました。

減算の目的

身体拘束廃止未実施減算は、利用者が安全で尊厳ある生活を送れるようにするため、施設全体で身体拘束の廃止に向けた具体的な取り組みを推進することを目的としています。適正なケアの実施は、施設運営の信頼性向上にも繋がります。

 

 

対象サービスと減算率

身体拘束廃止未実施減算は、施設が厚生労働大臣が定める基準に適合していない場合に適用されます。

施設系サービス・居住系サービス

減算率:所定単位数の 10%

平成30年度に減算率が見直され、厳格化されました。

短期入所系サービス・多機能系サービス

減算率:所定単位数の 1%

令和6年度の改定で新たに規定が追加されたことから、短期入所系サービス、多機能系サービスでの身体拘束廃止未実施減算は、以下の基準を満たせなかった場合に、令和7年4月1日から適用されます。

これにより、すべての施設で身体拘束廃止に向けた取り組みが求められるようになりました。

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厚生労働大臣が定める基準

身体拘束廃止未実施減算に該当しないためには、以下の基準を満たしておくことが必要です。これらは施設運営の透明性と利用者の権利擁護を目的としています。

身体拘束等の適正化のための委員会設置

  • 身体拘束等の適正化のための委員会を、3か月に1回以上開催し、結果を職員に周知する。
  • 利用者の安全確保と身体拘束廃止の両立を議論する場です。

適正化のための指針整備

  • 身体拘束ゼロを目指す具体的な目標と方針を明文化します。
  • 職員全体で共有し、施設運営に反映させます。

職員研修の定期実施

  • 身体拘束の廃止と代替ケアの具体例を学び、実践力を高めます。
  • 年間計画に基づき、体系的に実施することが重要です。

これらの基準は、介護施設の質を向上させるだけでなく、利用者の安全と尊厳を守る重要な柱となります。

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身体拘束実施時の留意点

緊急やむを得ない場合でも、以下の三要件を満たす必要があります。

切迫性

生命や身体の安全が切迫した危険な状況であること。

非代替性

他に代わる方法がなく、拘束以外の手段では対応できない場合。

一時性

必要最低限の時間で、一時的な措置に留めること。

記録と保存義務も重要です。拘束の詳細を記録し、2年間保存することが義務付けられています。これにより、施設運営の透明性が確保されます。自治体の条例によっては保存年数が異なる場合もあるので注意しましょう。

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令和6年度改定の新設ポイント

短期入所系サービスや多機能系サービスにも新たに減算規定が設けられた点が大きな特徴です。これにより、身体拘束廃止への取り組みが、全施設に対して強く求められるようになりました。施設種別や提供サービスに関係なく、利用者の尊厳を守るための統一的な基準が設けられています。

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介護施設で必ず行うべき取り組み

介護施設が身体拘束廃止に向けた取り組みを適切に行うためには、厚生省令で定められた基準に基づき、具体的な回数や頻度を守りながら以下の取り組みを実施することが求められます。

施設サービス計画に基づき、利用者の状況に応じた適切なケアを提供する

要介護状態の軽減または悪化防止を目的としたサービスを実施する。
利用者一人ひとりの心身の状況に応じた処遇を妥当に行う必要があります。

身体拘束や行動制限を原則行わない

例外として、利用者または他の利用者の生命や身体を保護するために、緊急やむを得ない場合に限り実施可能。
これに該当する場合でも、必要最小限の範囲で行うべきです。

身体拘束の詳細な記録を義務付ける

実施の態様、時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録する。
記録は施設運営の透明性を確保し、適正化への継続的な改善を図るため、2年間保存することが求められます。

委員会の定期開催

3か月に1回以上、身体拘束の適正化を検討する委員会を開催します。
テレビ会議やオンラインツールを利用して柔軟に実施可能です。
会議の結果を介護職員や従業員全員に共有し、全体での意識向上を図ります。

身体拘束廃止に向けた具体的な方針の作成と共有

身体拘束廃止を目指すための具体的な指針を策定し、施設全体で周知します。
指針には、身体拘束を行わないための代替手段や緊急時の対応策を明記します。

職員研修の実施

身体拘束の適正化に向けた研修を少なくとも年1回以上実施します。
研修内容には、代替ケアの具体例や利用者への適切な対応策、緊急時の判断基準を含めます。
研修の受講状況を記録し、全職員が対象となるよう徹底します。

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まとめ

令和6年度の改定を受け、身体拘束ゼロを目指す取り組みが全施設で求められています。減算の回避だけでなく、利用者の尊厳を守るための施設全体の姿勢が重要です。継続的な意識改革と実践を通じて、利用者本位の介護を実現していきましょう。

 

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