生活習慣病の種類と原因・リスクを知り、予防対策や運動療法を
 

生活習慣病の運動療法について考える前に、日本は高齢化が急速に進んで現在は全人口に対する高齢者の割合が20%を越え超高齢社会となりました。一般的に高齢者とは65歳以上を指しますが、人間の老化現象はそれ以前に始まります。骨格系などの身体機能は30~40歳代にピークを迎え、神経系は20歳代の前半にピークを迎え、これらの機能は加齢に伴って低下するといわれています。
これらの機能は、生活習慣と密接にかかわり、身体や精神にストレスを与えるような生活習慣を続けると、その変化は早くなり大病を患う可能性が高くなります。それを避けるためにも「死の四重奏」といわれる高インスリン血症、高脂血症、肥満、糖尿病を起こしにくい生活習慣を、意識や環境から変えていくことも考えなければなりません。
この記事では、そのような点を踏まえて、生活の中心となる在宅で継続して行える運動療法を考えていきます。

生活習慣病の定義

厚生省は1996年に生活習慣病とは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」である定義しました

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生活習慣病の捉え方(成人病からの変化)

厚生省は1957年に「成人病」を、「40~60歳の壮年者に多い病気、即ち年を取れば自然と加齢で出てくる病気」と定義し、その説明として「主として、脳卒中、がんなどの悪性腫瘍、心臓病などの40歳前後から急に死亡率が高くなり、しかも全死因の中でも高位を占め、40~60歳くらいの働き盛りに多い疾患」としました。しかし、成人病と呼ばれている病気は、以前からの悪い生活習慣によって起こることがわかり、1996年に厚生省は「成人病」から「生活習慣病」へと呼び名を改めた。この改正は、生活習慣病とは成人にのみ発生する病気ではなく、未成年期からの生活習慣が関わっているということを表しています。

生活習慣病に関わる因子と代表的な病気・疾患

生活習慣病には、食事、飲酒、喫煙、運動、睡眠の要素が関わるといわれています。
しかし、現代においては、食事・睡眠・運動を意識して改善しようとしても、仕事や家庭によりどうやりくりしても困難なこともあります
1日9時間デスクワークで働いて、3時間電車に揺られていたらいたら、あとはストレス解消で酒飲んでしょっぱいもの食べて寝るだけみたいな生活になってしまいますよね。
また、高齢者・要介護の方や幼児児童では、介護力や親の教養の問題などもあり問題となっています。
ここでは成人の生活習慣病に絞り、代表的な疾患としては、糖尿病、脳血管障害、心疾患、高脂血症、高血圧、肥満を挙げます。

生活習慣病に関わる病気の症状や医学的治療法

生活習慣病について考えるとき、医学的には疾患別に分類を行わないと症状や治療法が示せないため、上記の6つの代表疾患(糖尿病、脳血管障害、心疾患、高脂血症、高血圧、肥満)について簡潔に示します。

糖尿病の症状や治療法

糖尿病は代謝性疾患に属します。生活習慣病に含まれるのは、インスリン非依存型の2型糖尿病です。臨床症状は、初期には自覚がなく、病状が進行してかなりの程度の高血糖、尿糖がみられるようになると、全身倦怠感、口渇、多飲、夜間尿、多食などが現れます。日本糖尿病学会治療の目標では、健常者と変わらないQOLの維持と、健常者と変わらない寿命の確保にあるとしています。治療方法として、食事療法、低強度での有酸素運動を中心とした運動療法、薬物療法、インスリン療法を用います。

脳血管障害(脳梗塞・脳出血)の症状や治療法

動脈硬化や心筋梗塞が原因で起こる脳梗塞、高血圧症と動脈硬化により脳血管から出血する脳出血、高血圧や飲酒や喫煙により主に脳動脈瘤が破裂するくも膜下出血が主となります。これらは発症すると麻痺や意識障害などの後遺症が残ります。治療は急性期には薬物療法や、外科的治療が行われますが、後遺症に対しては早期から個別にリハビリテーションプログラムを立てて臨みます。

心疾患の症状や治療法

生活習慣病が引き起こすとされる心疾患は、主に虚血性心疾患です。高脂血症、高血圧、糖尿病などにより動脈硬化症が進行すると、心筋梗塞などのリスクが高まります。心筋梗塞では、心筋壊死による非常に強い胸痛発作があり、治療には抗凝固薬や線溶薬の投与、経皮・経管的冠動脈血行再建術などが行われますが、発症すると予後に大きな影響が生じるため未然に防ぐことが重要となります。

高脂血症の症状や治療法

高脂血症は脂質代謝血症ともいわれます。高脂血症は、空腹時の血性コレステロール値が220mg/dl以上、または同時血性トリグリセリド値が150mg/dl以上に増加した場合をいいます。高脂血症に加えてHDL(善玉コレステロール)の低下がある場合、血管内皮に蓄積したコレステロールが滞りやすくなり動脈硬化症が促進されてしまいます。これは心筋梗塞などの血管が詰まる病気のリスクファクターとなります。高脂血症の治療方法には、食事療法と運動療法が用いられます。改善が見られない場合には薬物療法が行われます。

高血圧の症状や治療法

生活環境因子が関係する本態性高血圧症が生活習慣病に含まれています。過食・食塩過剰摂取の食習慣、運動不足、ストレスなどと強く関連しています。高血圧とは、収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHg以上の状態をいいます。治療には、一般療法や薬物療法がおこなわれるが、この治療の目的は、高血圧の合併症の発症を抑制し、死亡率を低下させることである。

肥満(メタボリックシンドローム)の症状や治療法

肥満は体内の脂肪組織が過剰に増加した状態と定義されています。生命予後に対して問題がある場合には、疾患名として「肥満症」の診断名が付けられますが、軽度~中度はその予備軍として、メタボリックシンドロームといわれています。治療には食事療法や行動療法、運動療法が行われます。

予防・リハビリテーションとしての生活習慣病に対する運動療法プログラム

生活習慣病は、今まで送ってきた生活習慣による身体や精神へのストレスが原因となっています。上記の代表疾患として示した糖尿病、脳血管障害、心疾患、高脂血症、高血圧、肥満も、その疾患ごとにわけることはできず、すべてが密接にかかわりあっています。治療のプログラムも、あらゆる観点からリスクを管理し、生活に密着したものにすることが大切である。

肥満・糖尿病の運動療法

糖尿病のリハビリの目的、禁忌

糖尿病の運動療法では、血糖を下げることが求められると同時に、糖尿病患者の身体活動能力の向上も目指さなければなりません。運動療法は食事療法を完全に実施することが前提条件となり、食事を守れない症例では悪化を招きます。禁忌はケトアシドーシスのある症例、心血管障害、感染症を合併している例です。
運動は、エネルギー源として糖質と脂質の両方が利用される中程度かそれ以下の負荷で行います。また、筋で脂肪を効率よく利用させるには1回の運動時間を10分以上に設定します。

糖尿病のリハビリプログラムとリスク管理

糖尿病の運動療法としては、例えば家の近所を散歩、または通勤に自転車を取り入れたりして30分~1時間軽く運動することから開始します。歩行は有酸素運動として歩く速さは70~90m/minを基本に指導します。定期的に行われる血液検査結果や健康診断結果は治療効果と病態把握としてよく認識し、治療の励みとして利用します。万歩計やカロリーカウンターでどのくらい運動したかをチェックして記録する習慣をつけてもらえるように仕向けると良いです。足のケアについても指導し、靴は足に合った靴を確認し、石鹸で洗い清潔に保つことで壊疽を防ぐようにします。運動は、ボール競技やゴルフの素振りなど、趣味や関心に合わせていろいろ提示して新鮮な気持ちで治療的な生活習慣になるようにしていきます。低血糖には十分注意し、何らかの症状を示して倒れた場合には糖を高くする食品や薬を摂取できるように準備しておきます。

高血圧とその合併症に対する運動療法

高血圧の運動療法の目的、禁忌

高血圧の運動療法の目的は、合併症の発症を抑制し、死亡率を低下させることです。合併症として、心虚血や脳虚血があり、急性期には運動療法は禁忌となり、急性期を脱しても心電図や血圧に注意しながら運動を行わなければなりません。

高血圧とそれの合併症に対する運動療法プログラムとリスク管理

高血圧と、それらに起因する合併症の予防を目的として運動療法を行うときは、食事療法や一般生活の規制も同時に行われます。心身の疲労を避け、適度な休養を取らせることが原則となり、ストレスは避けなければなりません。そのため、有酸素運動で1日30分以上行えて、ストレスにならないでむしろストレス解消ができるような運動を行う習慣がつくと理想と言われます。目的なく散歩などをしても長続きしないため、家族の誰かとしゃべりながら散歩できるように勧めたり、カメラを持って行き写真を撮りながら散歩したりしたら楽しく続けられると良いかもしれません。患者の趣味や今までの生活を情報収集しながら、最適な治療法を見つけ出せるように支援します。

生活習慣病の「習慣」の捉え方はだんだん変わる

生活習慣病は、現在増加していますが、その理由には環境の変化が関係しています。私たちの周りには、生活を便利にするために作られた保存のきく高塩分の食品や、深夜も営業している飲食店など生活習慣を乱すものがたくさんあります。そのような中で生活習慣を乱すことなく暮らすには、趣味や楽しみを持ち、自分のリズムで毎日をいきいき過ごすような健全な精神が必要となります。生活習慣病の患者には、今までの自由だった生活に比べて規制や改善が行われますが、それによって人生の質が下がることは最小限にするようにすべくいろいろな薬剤や治療法が検証されています。
生活習慣病は「贅沢病」や「だらしない」だと思われがちですが、実際は・・・

  • 経済的な理由で良い食が手に入れられず塩分たっぷりのものを食べていたり…
  • 就労先がブラック企業で長時間労働を強いられていて食も睡眠も正せなかったり…
  • 食事と栄養の関係性などを考えるきっかけが全くなかった環境に育っていたり…
  • 家庭環境や人間関係により続くストレスから不眠や偏食・暴飲暴食で生活習慣が乱れてしまったり…

という、現代人のライフスタイルで誰にでも起きうる病気です。生活習慣としてによっては仕事や社会的な部分も考え直す必要もあるかもしれません。
糖尿病が増加していますが、一昔前は糖尿病の原因が炭水化物などだということは全く世間では知られていませんでした。みんな米は健康だと思っていましたし、塩分がなぜいけないかなんて考えることもありませんでした。
広い視野でたくさんの人生の楽しみ方を知り、体験し、それを応用して予防や治療として生活に取り入れていけたらよいですよね。生活習慣が十人十色であるように、その延長である治療法もいくつもあります。生活習慣病に関しては治療でしかたなくやっているという運動療法ではなく、自分から問題意識を持ち積極的に行えるような方法を考えられると良いですね。

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