子ども食堂とは?ボランティアが貧困対策で行っているだけなのか
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近年、地域の居場所としての「子ども食堂」は全国各地で拡大し、いまや公立中学校数を上回る規模に達しています。

実数の把握・全国的な把握は、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが継続調査を行っており、2024年度の確定値は1万867箇所でした。医療・福祉の現場でも、「貧困対策のボランティア」という狭い理解だけでは実態を捉えきれず、子どもの孤立防止、食支援、地域の多世代交流、相談・見守りのハブなど多面的な役割を担う場としての認識が広がっています。

しかし、子ども食堂がこのような役割まで担う場になったのには、近年の日本が抱える価値観や思想、政治的な課題も多くあるように感じます。

この記事では、法的な位置づけ、資金の流れ、公的補助の有無、運営主体、そして「儲かるのか」という素朴な疑問まで、医療福祉の専門サイトの読者に向けて一次情報を踏まえて体系的に解説します。

子ども食堂とは?法律上の定義はない

「子ども食堂」には厳密な法律上の定義はありません。

支援団体のむすびえは「子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂」を広義の定義として示し、子どもだけに限定せず多世代が集う地域の居場所として運営されるケースが多数派であることを明言しています。

こうした柔軟性が、地域ごとに異なるニーズに即した形での広がりを可能にし、結果として全国的な拡大につながっています。報道ベースのイメージに引きずられて「困窮家庭のためだけの場」と捉えるのは不正確で、実際には交流・見守り・孤立防止の機能を備えたコミュニティ拠点として運用される例が目立ちます。

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子ども食堂は制度上の施設ではないが、衛生法規と行政通知に基づく運営配慮は必須

子ども食堂は社会福祉法上の公的施設区分ではなく、法令で定義づけられた行政サービスでもありません。

そのうえで、国は2018年の厚生労働省通知で、子ども食堂の意義を確認し、関係機関の連携と運営上の留意点(衛生・保険加入・関係制度との連携など)を技術的助言として示しました。衛生面では、開催形態に応じて保健所への相談・営業許可や届出の要否確認、衛生管理の実施が求められます。厚生労働省の「子ども食堂における衛生管理のポイント」は、開設前の保健所相談、食品衛生責任者講習の活用、加熱・冷却・アレルギー対応等の実務的手順を詳細に整理しています。そのため、子ども食堂は法的な施設種別ではない一方で、食品衛生法などの一般法令の遵守は食を提供する上では大切になります。

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子ども食堂を運営しているのは誰が多いのか

子ども食堂の運営主体は任意団体、地縁団体、NPO、社会福祉法人、宗教法人、企業のCSR・社員ボランティアなど多岐にわたります。行政通知は、社会福祉法人が地域公益的取組として子ども食堂の運営に関与することがあり得ると明記し、学校・教育委員会、地域包括ケアの関係部局などとの情報共有・連携を促しています。

現場では、地域の社会福祉協議会(社協)や学校、民生委員・児童委員、医療・介護事業者、フードバンク等との水平連携が運営基盤を支える形が一般的です。

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資金はどう回っている? 参加費・寄付・補助金・助成金・食支援の組み合わせ

子ども食堂の資金循環は「現金収入」と「現物支援」の複合です。現金は参加費、個人・企業寄付、共同募金・財団等の助成、公費補助、イベント収益などで構成され、現物はフードバンクや企業・農家からの食品寄贈、会場無償提供、ボランティアの労働提供などが含まれます。政府は食品ロス削減の政策枠組みの中で、フードバンクや子ども食堂等への食品寄附を促進し、国・自治体の役割(関係部署の連携、活動支援、普及啓発)をガイドラインに明記しています。寄附食品の取扱いは安全性の担保が前提で、合意・トレーサビリティ等のルール整備が推奨されています。

主要な資金・資源ルート

区分 内容 主な例
参加費・会費 無料~低額の参加費、賛助会費 各食堂の料金設定
民間寄付 個人・企業・CSR寄付、物資寄贈 赤い羽根共同募金、企業寄付、食品寄附
公的資金 自治体補助、公募型交付金、国の民間団体支援事業 地方自治体の子ども食堂補助要綱、こども家庭庁の公募事業
助成金 財団・企業財団等の助成 赤い羽根福祉基金×企業助成 等
現物・人的資源 フードバンクからの食材、会場無償提供、ボランティア稼働 食品寄附ガイドラインに基づく取扱い

表に示した公的資金の具体例として、こども家庭庁の「ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業」の公募、都道府県・市町村の子ども食堂補助要綱(愛知県、高知県、八戸市など)が確認できます。民間助成では、中央共同募金会(赤い羽根)の基金や企業連携枠が継続的に実施されています。

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子ども食堂の運営は「お金・物資・人手」を合わせて初めて成り立つ

むすびえの2024年公表資料では、全国の実地調査と実態調査を組み合わせ、会食型の活動が全国で年間約73億円規模で運営されていると推計しています。また、個々の食堂の年間運営費は、現金支出に加え、物資寄贈やボランティア稼働(マンパワー)を金額換算した総量で捉える必要があり、1か所あたりで見ると現金・物品・人的資源が合算で数百万円規模になるとの推計が示されています。過去の農水省アンケートでも、自己負担をあてた経験が過半という結果が出ており、資金繰りの脆弱性は継続的課題です。

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子ども食堂はボランティアだけ?

多くの子ども食堂はボランティアに支えられていますが、それだけではありません。活動の継続性と安全性(食品衛生、アレルギー対応、事故時対応)を担保するには、責任ある人には謝金や人件費を支払うことは合理的であり、実際運営に関わるすべての人が完全にボランティアであったり、全部持ち出しの資金でやっているというところは稀です。

むすびえの定義が示すとおり、子ども食堂は民間の自発的な取組であり、法令に基づく行政サービスとは異なるため、地域の裁量で最適な体制(無償・有償の混合、委託の受託など)を設計できます。

体制 概要 留意点
無償中心 参加費・寄付+ボランティアで実施 担い手の燃え尽き、世代交代、安全管理の持続可能性
混合(有償コア+ボランティア) 企画・衛生・会計等の中核業務を有償化 人件費を賄う安定財源の確保
事業受託・補助活用 自治体事業の委託や補助で運営の一部を公費化 要綱・交付要件の遵守、収支透明性の確保
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助成金で儲かっているのでは?実際は?

基本的には子ども食堂は利益最大化を目的とした事業ではありません。補助金や助成金は、原則として使途や精算が厳格に定められ、対象外経費や補助率の上限があり、他の補助との重複禁止や収入控除のルールもあります。

すごい額の補助金が出ているのではないかと勘繰る人もいると思いますが、例えば東京都の子供食堂推進事業を調べてみると、月1回以上定期的に10名以上参加できる規模で開催することを条件とし、必要経費に対して年間数十万円規模となっており、すごく儲かるというほどの補助は出ていないと考えられます。もちろん、クラウドファンディングなどの寄付の場合には、コンセプトやプレゼン、その運営者の人脈などによっては大きな金額が動く場合もあると思います。

むしろ実務では、物価高や人手不足で「運営資金が不足する」「食材が足りない」といった困りごとが上位に挙がっており、黒字が恒常的に積み上がる構造ではありません。

一部のケースでは、子ども食堂は見込み客を集めるためや、慈善事業を行っている実績作りのような運営で、同じ建物内で別の事業を行っておりそちらとの相乗効果を狙っているのではないかという形もうかがえます。

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「貧困対策のボランティア」を超えた地域インフラとは言われるが

子ども食堂は、狭義の貧困対策に留まらず、孤立の予防、食と健康の維持、学びや体験の機会提供、多世代交流と見守りのネットワーク形成など、地域包括ケアの裾野を広げる役割を担っています。

単にひとり親世帯等の貧困対策というわけではなく、女性の社会進出、個人主義、核家族化で自分の親や親戚にも頼らない生き方、地域との関係性の希薄化など、今まで日本の政策や思想のもとで進められてきた子育ての困難化・ゆがみから生まれたのが子ども食堂のように感じます。親世代も自分たちの仕事が一番で、子どもはできるだけ見たくないという価値観も強くなってきています。昔ならば近所や親戚に預けたりできましたが、それも現代ではできない風潮が広がっています。近所や親戚に預けるくらいならば、子どもが一人でご飯食べる方が良いし、子ども食堂的な便利なところがあるならばそっちに行ってもらいたいと、不思議とそのような気持ちになる人が多いのが現代人です。親のすねをかじることも嫌で、親の価値観や生活習慣を子どもに引き継がせるのも嫌で、とにかく自分たちで何とかするしかないと思い、それができないならば子どもには我慢してもらうこともやむを得ない、ジジババ世代がでしゃばると強く批判・非難して誰にも貸しを作らず、自分たちだけで何とかするという価値観が醸成されてしまいました。

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省庁や政治家が、子ども食堂から原因と日本の課題を見出し議論すべき

国は、家族や世帯をなるべく分断し、個人や小さい世帯として生きていくことを選びやすいような政策を進めています。個人主義という思想の下で言えば、国はその希望に沿ったようなことをやっているのかもしれませんが、子どもを育てることを考えれば、あらゆる人の価値観や人柄に触れ、地域や血縁による安定した関係性も持っている方が、精神的な安心やアイデンティティの面での成長へのメリットは大きいです。

子ども食堂ができる背景は、貧困による子どもの食や栄養面を考えて「ひもじい思いをさせないようにご飯くらい地域で食べさせる」という思いで運営し始めた方が多いと考えられますが、それを越えて今の日本の思想や歪み、政治の偏りを補い、再発見するために、子どもと育児世代の置かれた状況の危うさに気付いた人たちが広げていったものとも考えられます。子ども食堂にはいろいろな原因と課題が詰まっています。

本来は、子ども家庭庁などの省庁や政治家が、子ども食堂を分析して政治的な課題を見つけ出すべきですが、今の国の立場は他人事のように食品の衛生面を気を付けるように、保険には入った方がいいよと指針を出したりしているだけで、調査も支援もNPOが担っている不思議な状態なのです。

 

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