介護保険施設等指導指針【2022年4月改正・厚生労働省】

介護保険法に基づく介護保険施設及び事業者に対する指導監督については、「介護保険施設等の指導監督について」(平成 18 年 10 月 23 日老発第 1023001号当職通知)を参考に都道府県または市町村により行われてきましたが、社会保障審議会介護保険部会「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」における意見等を踏まえ、実地指導における標準化・効率化に資する取り組み等を推進する観点から、2022年3月31日に、新たに、「介護保険施設等指導指針」を定め、厚生労働省から公表されました。実地指導の全体像が見えると、心配も少し減るのではないでしょうか?

実地指導と監査とは

実地指導とは

実地指導とは、介護保険事業者として指定を受けている事業者に対して、都道府県や市区町村などの担当者が介護保険サービス事業所へ出向き、適正な事業運営が行われているか確認することです。しかし、この2022年の介護保険施設等指導指針改正で、必ずしも事業所の実地で指導するわけではなく、オンライン等の活用等も明記されました。

監査とは

監査とは、介護保険法に基づくサービス提供や各自治体条例などの関係法令などで定める、各対象サービスの取扱いや給付費用の請求などのに関する事項について、不正や著しい不当が疑われる場合に、事実関係を的確に把握し、公正かつ適切な措置を採ることを目的として実施されるものです。

介護保険施設等指導指針

2022年3月31日、厚生労働省老健局 総務課介護保険指導室は「介護保険施設等指導指針」を公表しました。以下は一部略をして記載しています。

第1 目的

この指導指針は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が介護保険法第23条又は健康保険法等の一部を改正する法律附則第130条の2第1項の規定によりなおその効力を有するものとされた同法第26条の規定による改正前の法第23条の規定による居宅サービス等、地域密着型サービス(これに相当するサービスを含む。)、居宅介護支援(これに相当するサービスを含む。)、施設サービス、介護予防サービス(これに相当するサービスを含む。)、地域密着型介護予防サービス(これに相当するサービスを含む。)若しくは介護予防支援(これに相当するサービスを含む。)をいう。以下同じ。)を担当するサービス担当者等に対して行う保険給付に関する文書その他の物件の提出若しくは提示の求め若しくは依頼、又は質問若しくは照会に基づく指導、及び厚生労働大臣又は都道府県知事が居宅サービス実施者等に対して行う居宅サービス等の内容並びに介護給付及び予防給付に係る費用(介護報酬)の請求に関する報告若しくは当該居宅サービス等の提供の記録、帳簿書類その他の物件の提示及び質問に基づく指導について、基本的事項を定めることにより、居宅サービス等の利用者又は入所者若しくは入居者の自立支援及び尊厳の保持を念頭において、居宅サービス担当者等及び居宅サービス実施者等の支援を基本とし介護保険施設等が行う介護給付等に係る居宅サービス等(以下「介護給付等対象サービス」という。)に関するサービスの質の確保及び保険給付の適正化を図ることを目的とする。

第2 指導方針

指導は、介護保険施設等に対し、

  • 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
  • 「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)
  • 「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11月厚生省令第39号)
  • 「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)
  • 「介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成30年厚生労働省令第5号)
  • 「健康保険法等の一部を改正する法律附則第130条の2第1項の規定によりなおその効力を有するものとされた指定介護療養型医療施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第41号)
  • 「指定地域密着型介護サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)
  • 「指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準」(平成18年厚生労働省令第35号)
  • 「指定地域密着型介護予防サービスの事業の人員、設備及び運営並びに指定地域密着型介護予防サービスに係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準」(平成18年厚生労働省令第36号)
  • 「指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準」(平成18年厚生労働省令第37号)
  • 「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)
  • 「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第20号)
  • 「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)
  • 「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第126号)
  • 「指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第127号)
  • 「指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第128号)
  • 「指定介護予防支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第129号)
  • 「厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成27年厚生労働省告示第93号)

等(以下「基準等」という。)に定める介護給付等対象サービスの取扱い、介護報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを方針とする。

第3 指導形態等

指導の形態は、次のとおりとする。

1 集団指導

集団指導は、都道府県知事又は市町村長が主体となり、指定又は許可の権限を持つ介護保険施設等に対し、介護給付等対象サービスの取扱い、介護報酬請求の内容、制度改正内容及び高齢者虐待事案をはじめとした過去の指導事例等に基づく指導内容について、年1回以上、一定の場所に集めて講習等の方法により行う。なお、オンライン等(オンライン会議システム、ホームページ等。以下同じ。)の活用による動画の配信等による実施も可能とする。

2 運営指導

(1)運営指導の形態

運営指導は次のア~ウの内容について、原則、実地に行う。また、都道府県知事又は市町村長が単独で行うものを「一般指導」とし、厚生労働大臣及び都道府県知事若しくは市町村長、又は都道府県知事及び市町村長(指定都市及び中核市の長を除く。)が合同で行うものを「合同指導」とする。
なお、ア~ウの実施については、効率的な実施の観点から、それぞれ分割して実施することも差し支えない。

ア 介護サービスの実施状況指導

個別サービスの質(施設・設備や利用者等に対するサービスの提供状況を含む)に関する指導

イ 最低基準等運営体制指導

基準等に規定する運営体制に関する指導(ウに関するものを除く。)

ウ 報酬請求指導

加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導

(2)実施頻度

運営指導は、原則として指定又は許可の有効期間内に少なくとも1回以上、指導の対象となる介護保険施設等について行う。なお、居宅サービス(居住系サービスに限る。)、地域密着型サービス(居住系サービス又は施設系サービスに限る。)又は施設サービスについては、3年に1回以上の頻度で行うことが望ましいものとする。

(3)運営指導の内容

運営指導の実施に当たっては、基準等への適合性に関し、介護保険施設等による自己点検を励行するものとし、上記(1)ア及びイについては、介護サービスの質の確保、利用者保護等の観点から重要と考えられる標準的な確認すべき項目(以下「確認項目」という。)及び標準的な確認すべき文書(以下「確認文書」という。)に基づき実施する。なお、サービス種別毎の確認項目及び確認文書については別に定める。
また、運営指導(上記(1)ア及びイに限る。)においては、確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めないものとする。

第4 指導対象

指導は全ての介護保険施設等を対象とし、効率的な指導を行う観点から、その選定については一定の方針に基づき行う。

(1)集団指導の対象

集団指導は、都道府県知事又は市町村長が指定、許可の権限を持つ全ての介護保険施設等を対象に行う。なお、都道府県知事又は市町村長は、その指導内容等により、サービス種別毎の実施や新規指定又は管理者の変更があった介護保険施設等を対象として別途実施する等、より一層内容の理解が図られるよう努める。

(2)運営指導の対象

ア 一般指導

一般指導は、実施頻度や個別事由を勘案し、原則毎年度、計画的に実施できるよう都道府県知事又は市町村長が、介護保険施設等を選定する。

イ 合同指導

合同指導は、一般指導の対象とした介護保険施設等の中から選定する。

(3)都道府県知事及び市町村長の連携

都道府県知事及び市町村長は互いに連携を図り、必要な情報交換を行うことで適切な集団指導及び運営指導の実施に努めるものとする。

第5 指導方法等

1 集団指導

(1)実施通知

都道府県知事及び市町村長は、集団指導の日時、場所、出席者、指導内容等を文書により当該介護保険施設等に対して原則として2月前までに通知する。

(2)指導方法

実施に当たっては、介護保険施設等に対して、指導内容の理解を深めるため質問や個別相談等の機会を設ける等、工夫するとともに、実施体制等により単独での実施が困難な場合は、都道府県又は市町村が合同で実施することを検討する。また、都道府県知事又は市町村長が集団指導を実施する場合、その内容について都道府県管内での整合を図るため、相互に事前の情報提供を行う等、連携を図るものとする。
なお、集団指導に参加しなかった介護保険施設等に対しては、使用した資料の送付等により確実に資料の閲覧が行われるよう情報提供するとともに、オンライン等の活用による動画の配信等による場合は、配信動画の視聴や資料の閲覧状況について確認する。

2 運営指導

(1)実施通知

都道府県知事及び市町村長は、指導対象となる介護保険施設等を決定したときは、次に掲げる事項を文書により当該介護保険施設等に原則として1月前までに通知する。
ただし、指導対象となる介護保険施設等において高齢者虐待が疑われる等の理由により、あらかじめ通知したのでは当該介護保険施設等の日常におけるサービスの提供状況を確認することができないと認められる場合は、指導開始時に次に掲げる事項を文書により通知する。

① 運営指導の根拠規定及び目的
② 運営指導の日時及び場所
③ 指導担当者
④ 介護保険施設等の出席者(役職名等で可)
⑤ 準備すべき書類等
⑥ 当日の進め方、流れ等(実施する運営指導の形態、スケジュール等)

(2)指導方法

運営指導は、関係者から関係書類等を基に説明を求め面談方式で行う。なお、施設・設備や利用者等のサービス利用状況以外の実地でなくても確認出来る内容(最低基準等運営体制指導及び報酬請求指導に限る。)の確認については、情報セキュリティの確保を前提としてオンライン等を活用することができる。活用に当たっては、介護保険施設等の過度な負担とならないよう十分に配慮する。

(3)運営指導の留意点

ア 所要時間の短縮等

運営指導の所要時間については、確認項目を踏まえることで、一の介護保険施設等当たりの所要時間をできる限り短縮し、介護保険施設等と自治体双方の負担を軽減し、運営指導の頻度向上を図る。

イ 同一所在地等の運営指導の同時実施

同一所在地や近隣に所在する介護保険施設等に対する運営指導については、できるだけ同日又は連続した日程で行うなどにより効率化を図る。

ウ 関連する法律に基づく監査の同時実施

老人福祉法等介護保険法に関連する法律に基づく監査との合同実施については、介護保険施設等の状況も踏まえた上で、自治体の担当部門間で調整を行い、同日又は連続した日程で行うことを一層推進する。

エ 運営指導で準備する書類等

運営指導において準備する文書は、原則として、前年度から直近の実績に係るものとし、介護保険施設等に対して運営指導の事前又は当日に提出を求める資料及び書類の写等については1部とし、自治体が既に保有している文書(新規指定時、指定更新時及び変更時に提出されているもの等)については再提出を求めない。
また、介護保険施設等において作成、保存等が行われている各種書面について、当該書面に代えて電磁的記録により管理されている場合は、ディスプレイ上で内容を確認することとし、別途、印刷した書類等の準備や提出は求めない。

オ 利用者等の記録等の確認

利用者等へのサービスの質を確認するためにその記録等を確認する場合は、特に必要と判断する場合を除き、対象は原則として3名以内とする。ただし、居宅介護支援事業所については、原則として介護支援専門員1人あた
り 1 名~2名の利用者についてその記録等を確認する。

カ 事務受託法人等の活用

実施体制等により単独での実施が困難な場合や第3の2(2)で規定する実施頻度で実施することが困難な場合は、法第24条の2第1項第1号に規定する指定市町村事務受託法人及び法第24条の3第1項第1号に規定する指定都道府県事務受託法人の活用や地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の7に規定する機関等の共同設置を行うなど、複数の市町村と合同で実施すること等について検討すること。

(4)指導結果の通知等

運営指導の結果、人員、施設及び設備又は運営について改善を要すると認められる事項がある場合、介護報酬請求について不正には当たらない軽微な誤りが認められ過誤による調整を要すると認められる場合には、後日文書によってその旨を通知する。

(5)報告書の提出

都道府県知事又は市町村長は、当該介護保険施設等に対して、文書で通知した事項については、文書により報告を求めるものとする。

第6 監査への変更

運営指導を実施中に以下に該当する状況を確認した場合は、運営指導を中止し、直ちに「介護保険施設等監査指針」に定めるところにより監査を行い、事実関係の調査及び確認を行うものとする。

1 都道府県知事及び市町村長が定める介護給付等対象サービスの事業の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準に従っていない状況が著しいと認められる場合又はその疑いがあると認められる場合

2 介護報酬請求について、不正を行っていると認められる場合又はその疑いがあると認められる場合

3 不正の手段による指定等を受けていると認められる場合又はその疑いがあると認められる場合

4 高齢者虐待等により、利用者等の生命又は身体の安全に危害を及ぼしていると認められる場合又はその疑いがあると認められる場合

第7 指導にあたっての留意点

指導は、別に定める指導に関するマニュアルに基づき行うものとし、特に次の事項に留意するものとする。

1 高圧的な言動は控え、改善が必要な事項に対する指導や、より良いケア等を促す助言等については、介護保険施設等との共通認識が得られるよう留意する。

2 適正な事業運営等に関し効果的な取り組みを行っている介護保険施設等については、積極的に評価し、他の介護保険施設等へも紹介する等、介護サービスの質の向上に向けた指導を行う。

3 運営指導は、基準等に基づき行うものとし、担当職員の主観に基づく指導や、当該介護保険施設等に対する前回の指導内容と根拠なく大きく異なる指導は行わない。

4 運営指導における個々の指導にあたっては、具体的な状況や理由を聴取し、根拠規定やその趣旨・目的等について懇切丁寧な説明を行う。

5 運営指導の際、介護保険施設等の出席者については、必ずしも事前に通知した者に限定することなく、実情に詳しい従業者や介護保険施設等を経営する法人の労務・会計等の担当者が同席することは差し支えない。

まとめ

この内容は、都道府県または市町村が介護保険事業者を指導するときに確認する指針であり、2022年4月にこの指針に改定されたことから、今後行われる運営指導はこの内容に沿って行われることとなるでしょう。今までの高圧的であらさがしを行うようなイベントから少しずつ変わっていくと良いですね。実地指導や集団指導などがなんであるのかわからない人も、一度この指針を見ておくと、行政の担当者の人がどんな目的で、何を意識して指導しているのかがわかり、余計な恐怖心などがなくなるのではないかと思います。

今回の指針変更により、自治体と介護保険サービス事業者の溝がうまり、書類の隅々を指摘されるネガティブな点ばかりでなく、サービスの質の確保及び保険給付の適正化に向けて建設的な関係性が広まっていくと良いですね。