2019年7月から順次「遺産相続」や「生前贈与」の法律が変わっていることを知っていますか?
特別の寄与(死亡した人の介護を行った人)の遺産の分配制度の創設、婚姻期間が20年以上の夫婦間における生前贈与の優遇、配偶者短期居住権など遺産相続の新制度を紹介します。
このページの目次
相続とは
民法では、人が死亡すると、その人の財産は相続人に承継されることとされており、このことを「相続」といいます。承継される財産には、預貯金や不動産などの積極財産だけでなく、銀行に対するローンなどの債務(消極財産)も含まれます。なお、債務の額が大きい場合などには、相続が開始されたことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述することにより相続放棄をすることができます。
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相続法とは
2018 年(平成 30 年)7 月に、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。民法には、人が死亡した場合に、その人(被相続人)の財産がどのように承継されるかなどに関する基本的なルールが定められており、この部分が「相続法」と呼ばれています。
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2018年7月に改訂された相続法制の見直しの概要
2018年7月の相続法制改正では、高齢化や社会の変化に対応するために、相続法制度に関するルールを大きく見直しています。この記事では、「民法(相続法)改正 遺言書保管法の制定 ~高齢化の進展等に対する対応~ 相続に関するルールが大きく変わります【作成:法務省】」を参考にまとめております。具体的には、以下のような点です。
被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点
- 配偶者居住権の創設
- 婚姻期間が 20 年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する観点
- 自筆証書遺言の方式緩和
- 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設 (遺言書保管法)
2019年/2020年から施行される遺言書についての制度変更については、「2019年 遺言書 の新制度 法務局で保管・パソコン文書も一部可能」の記事で詳しく解説しています。
そのほかの制度改正
- 特別の寄与の制度の創設
これらについてポイントと施行日をまとめていきます。
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配偶者居住権の新設 施行日:2020年4月1日(水)
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身または一定期間、その建物に無償で居住することができるようになります。被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。
現行の制度と新設される配偶者短期居住権の違い
配偶者が遺産として自宅などの居住建物を取得する場合には、預貯金などの他の財産を受け取れなくなってしまう制度になっていました。2020年4月1日からは配偶者は自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになります。
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婚姻期間が20年以上の夫婦間における生前贈与の優遇措置 施行日:2019年7月1日(月)
婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物・その敷地)を遺言で譲与・生前贈与をされた場合については、原則として遺産分割における配偶者の取り分が2019年6月までと比べて増えることになります。
生前贈与・遺言による譲与の取り扱いと新制度の違い
生前贈与等を行ったとしても、原則として「遺産を先渡ししたもの」として取り扱うため、遺産分割の際には生前贈与等をされた場合にも配偶者が最終的に取得する財産額は、贈与等がなかった場合と同じになってしまっていました。つまり、今までの制度だと、配偶者に生前に自宅などを譲渡しておいても、遺産を分割するときには自分名義になっている家も分与の対象として扱われてしまい、贈与や譲渡の意味合いがないものとなっていました。2019年7月以降の新制度は、生前贈与をした家や土地は遺産分割の対象ではなくなるため、受け取れる財産の取り分が増えます。
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預貯金の払戻し制度の創設 施行日:2019年7月1日(月)
預貯金が遺産分割の対象となる場合に各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。
遺産にあたる預貯金を相殺費用などに払戻しできる新制度と金額とは
生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要がある場合にも、遺産分割が終了するまでの間は被相続人の預金の払戻しができないという制度になっていました。2019年7月以降、預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようになります。
単独で払戻しをすることができる額は、(相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)となっています。
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特別の寄与(介護などを行った人)の制度の創設 施行日:2019年7月1日(月)
相続人以外の被相続人の親族(例えば長男の妻・嫁など)が無償で被相続人の療養看護や介護などを行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。
義父の介護をした妻・嫁など、相続人でない人も遺産の分配の権利ができた
長男の妻など、どんなに被相続人の介護に尽くしても、相続人ではないため被相続人の死亡のときに相続財産の分配にはあずかれませんでした。2019年7月からの新制度では、相続開始後に、特別の寄与(長男の妻・嫁など介護をして実質的に貢献した人)は、長女・次男・配偶者などの相続人に対して、金銭の請求をすることができます。介護等の貢献に報いることができ、実質的公平が図られる制度になります。
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高齢になる前から遺産の相続や、生前の財産の取り扱いを考えて
高齢になると、認知症になったり、相続人である家族と疎遠になってしまって交流が減ったり、現代でいろいろな課題があり、相続法制が変わったりして対応しています。それらと関連して、認知症や意識が低下してしまって正確な判断力が失われてしまった際に、自分の財産をどのように管理していくかや、自分の生活に必要な契約行為などを誰にお願いしたらよいかなどを「成年後見制度」という制度を活用して、成年後見人に費用を払って代理で行ってもらうということも進められています。詳しくは「成年後見制度とは 費用(報酬)・契約と代理・同意・取消の権利」の記事で紹介しています。
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