浮腫の対策方法、測定項目、評価方法、観察記録項目、リスク管理、治療方法など、一般的な内容と、看護師、介護職員などが業務上どのようにするとよいかについて紹介します。
このページの目次
浮腫とは
浮腫とは、医学用語で皮下組織(皮膚の下部)に水がたまった状態のことです。「ふしゅ」という読み方をします。一般的には「むくみ」と呼ばれ、手足、顔などがはれぼったくなるような状態のことです。
浮腫の原因や成り立ちについてはこちらの記事で詳しく紹介します。
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浮腫の発生時期による分類と対応
浮腫出現期(急性期)
浮腫にはいろいろな原因があり、問診、理学的所見、様々な検査で原因疾患が特定されますが、発生初期には原因が特定できず、一般的な浮腫に対する対応と、浮腫の原因になる可能性がある原疾患に対する治療が早期から行われます。
浮腫急性期対応は、水分・塩分制限、利尿薬の使用
浮腫を呈する症状のほとんどで細胞外液の量の増加がみられ、これに伴い体内の総ナトリウム量、総水分量の増加が認められ、このバランスが原因で浮腫を生じると考えられます。
外傷性の浮腫への対応は、RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)
整形外科手術後の患者など、炎症の対応と同様にRICEを用いて、安静・冷却・圧迫・挙上の対応をすると浮腫の予防にもなります。急性期の場合にはその後の予後なども影響するため、自己判断せずに医師からの医学的な観点からの指示を受けて対応することが大切です。
浮腫慢性期(一時治療終了後)
慢性の浮腫では、軟部組織が異物反応により線維化し、浮腫が持続すればするほど広範囲な瘢痕化が生じる恐れがあります。さらに血管、神経、関節などの組織の栄養状態が悪化し、弾性が失われてしまいます。
リンパ浮腫などでは、慢性的に浮腫の状態だと間質内に結合組織が増殖して、脂肪の沈着や栄養血管も発達することがあります。そうなると本来は細胞外の組織液が液体で存在している細胞と細胞の間の結合組織の比率が増え、浮腫の硬化が進みやすくなります。さらに進むと、皮膚の角質の増殖が進み、皮膚が硬く厚くなります。この状態のことを象皮症と呼ぶことがあります。
慢性期の浮腫に対する対応
浮腫に対する理学療法的な対応としては、①挙上 ②圧迫 ③筋収縮 がベースとなります。
しかし、現実的には浮腫が発生している原因が特定できないことも多く、浮腫の原因がはっきりしていても適切な治療方法がない場合もあります。浮腫の対応については、原疾患に対する理解、疾患の経過や予後など常に内科医師などと連絡を取り合って進めていきます。
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介護・医療従事者の浮腫の評価測定項目、介護看護記録の方法例
浮腫の状態と経過を比較・観察するために、評価と記録が大切になります。看護や介護・リハビリテーションなどのときに、浮腫の状態の評価や測定の例の紹介です。
周径の測定
周径の測定は、下肢などの四肢の浮腫の最も簡単な評価方法です。
浮腫の状態を把握するとともに、日々の変化を同じ条件で追っていけるよう、ランドマーク(目印)を決めて、時間・体位などを統一して記録します。
容積測定
四肢の浮腫の場合には、一杯に水を満たした容器に患肢を入れて、あふれた水の量を測定・記録。水に浸した部位の容積が測定できます。少し面倒ですが、誤差が少ない測定方法です。
運動機能・関節可動域(ROM)・筋力検査
浮腫により運動機能障害がみられるかどうかを測定します。浮腫で周径が増加しているときや関節機能が障害されているときなど、疼痛が発生しているときは運動機能障害が起きやすいです。具体的には、関節可動域(ROM;関節を動かせる範囲)、筋力低下がないかなどの測定を行い記録しておきましょう。
皮膚・組織の状態
浮腫の程度や状態を把握するためには、皮膚の温度、筋肉の発達・萎縮具合、皮膚・皮下組織の硬さや抵抗感、感覚の状態などを観察・検査します。組織が硬いときは線維化の可能性もあり、日や時間により変化があるかなどは慢性度の判断や治療の選択のための情報にもなります。
写真撮影
浮腫の状態を観察するためにもっとも手軽な方法として、浮腫の患部をカメラで写真にして記録しておくことがあります。数値や文章で目の前の現象の一部を記録に残しても伝わりにくいことも。カメラで写真に残し経過観察することも有効な記録になります。
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浮腫の治療・改善のための対応方法
浮腫の治療・対応方法にはいろいろありますが、基本的には医師の治療方針・指示に従います。どんな治療の選択があるかの一例の紹介です。
冷却する
冷却は、外傷性や炎症性の浮腫の場合に用いられることが多いです。冷やすことで血管の収縮が起き、静水圧が低下することで浮腫の形成が抑えられます。温熱は血管の拡張と静水圧の増加により浮腫ができやすい状態になりやすいです。
挙上する
心臓より高い位置に患肢を挙上することにより静脈性浮腫などで改善に有効なことがあります。
圧迫する・弾性包帯
動脈の毛細血管圧は30mmHg程度と言われます。患肢の圧迫によりそれ以上の圧を加えると、組織圧の上昇により浮腫の改善に有効なことがあります。
弾性包帯の仕様の場合、持続的な圧迫力を加えることができます。弾性包帯をまくときは抹消から中枢に圧迫を加えて巻いていきます。圧迫具合は、軽いうっ血状態になる程度がよいといわれることもありますが、しびれ・冷感・抹消の循環に注意して行います。
弾性ストッキング
低伸張性の下肢用ストッキング、上肢用スリーブがあります。1日中着用する場合もあります。40mmHg~60mmHg程度の圧がよいといわれています。浮腫みと言ったら弾性包帯というイメージが知れ渡っていますが、調べた限り浮腫改善効果について十分なエビデンスは確立されておらず、残存しているリンパ機能の補助をすることで浮腫の軽減につながっているのではないかと言われています。深部静脈血栓(DVT)の予防にも用いられます。
浮腫マッサージ・リンパマッサージ
浮腫に対するマッサージの効果としては、圧迫による静脈還流・リンパ流の流れの増加、蓄積した細胞間液の移動が主となります。
一般的な医療マッサージでは、抹消から中枢方向に向けて揉む・擦る・圧迫するなどを行いますが、浮腫の場合には近位部のリンパ流の抵抗を減少させることから始めた方が効果的だといわれます。
運動療法・筋収縮の促し
筋肉が収縮すると、筋ポンプの効果で血液還流とリンパ管の排液作用が促進されます。
浮腫に対する運動療法の目的としては、主に以下の点です。
- 筋ポンプ作用により、静脈・リンパ管の還流を促進して浮腫の改善を図る
- 浮腫に伴う関節拘縮・疼痛の予防・悪化防止
- 神経・筋の反射、神経筋の協調性を促通する
運動療法としては、水中での運動も有効です。イメージ的には温水に入った方が良いような気がしてしまうと思いますが、浮腫の運動療法としてはお風呂のような温度は避けて常温程度の方が静水圧が低下し静脈還流を促し効果的と考えられます。
電気刺激療法
基本的には筋収縮を起こすために行われます。電気刺激にはいくつかの種類がありますが、もしも治療器を扱うことにある場合には医師等に十分確認しましょう。
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浮腫は一時的な対応でなく、日常生活で改善
浮腫改善に対して最も効果的なことは、原疾患を治療することです。
その他、何かできるとしたら日常生活でこのページで紹介したようなことを医師と相談して行っていくことになります。挙上したり、筋収縮をしたり・・・ということも行って無駄ではないと思います。
浮腫を生じる原疾患を抑えるために、例えば食事で気を付けるように指導されたことを守る、薬を忘れず飲むなどといった日常生活での心がけも大切になります。
介護・看護・医療従事者・家族などは、浮腫を管理していく上で、必ずしも浮腫を改善するということに主眼を置くのではなく、根本は原疾患の治療であるという点を考慮して、浮腫が原因で二次的な合併症が起きないように対策することに注力した方が良い場合もあります。弾力低下、循環・栄養供給も減少するため、褥瘡(じょくそう)ができやすい状態です。
この記事で紹介した評価記録項目と合わせて、尿量、水分摂取量、バイタルサイン、服薬状況など、原疾患や全身の健康状態に関する管理も行って、浮腫患者さんの生活をサポートしていきたいですね!
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