「令和6年度補正予算で訪問介護を支えるために補助金を出します!」――厚生労働省が掲げる耳障りの良い政策スローガンに、ほっと胸をなでおろした訪問介護の現場関係者も多いことでしょう。しかし、その政策の中身を見たとき、現場からはため息どころか、怒りの声が上がるのも無理はありません。補助金や広報事業を謳いながら、現場のヘルパーたちが切実に求める「報酬の改善」は一向に触れられていないのです。むしろ、報酬が削られる一方で、研修や採用支援といった間接的な施策に多額の予算が割り当てられ、さらに経営改善を進めるよう示す始末。これでは「現場を支える」とは程遠い、むしろ現場を追い込む政策といえるでしょう。果たして、この矛盾だらけの政府方針に、現場はどう応えるべきなのでしょうか?具体的にどんな内容なのか紹介します。
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訪問介護等サービス提供体制確保支援事業(90億円)
厚生労働省は、訪問介護サービスにおける人材不足や経営改善の課題に対応するため、総額90億円の補正予算を通じて支援策を実施します。この支援策は、地域における必要な介護サービスを安心して継続的に提供できる環境整備を目的としています。
主な施策内容
- 人材確保体制構築支援事業
- 研修体制づくりの支援
- 新人や短時間勤務のヘルパー同行支援
- 採用活動の支援
- 経営改善支援事業
- 経営向上に向けた助言や取り組みの支援
- 協働化や事業の大規模化支援
- 広報活動に関する支援
支援の仕組み
この支援策は国が補助金を出し、都道府県や市区町村が補助を受けて事業者を支援する仕組みです。補助率は都道府県・市区町村により2/3または1/3で調整されます。
期待される効果
- 人材不足の解消と安定したサービス提供体制の構築
- 経営基盤の強化による訪問介護事業の持続可能性向上
- 地域住民が安心して利用できる介護サービス環境の確保
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介護人材確保のための連携協議会を設置、介護分野の求職イベント等の実施(7億円)
令和6年度の補正予算案では、総額7億円を投じて介護人材の確保・定着を目指した新たな支援策が展開されます。この取り組みは、介護分野における採用ミスマッチの防止と地域の特性に合った人材確保を目的としています。
主な施策内容
- 連携協議会の設置・運営支援
- 都道府県内で介護保険分野の業界団体や労働局、福祉人材センターが連携し、連携協議会を設置・運営することで、介護人材確保の取り組みを推進。
- 地域ごとに必要な情報交換や協力体制の構築を支援。
- 求人イベント・説明会の実施支援
- 各地域のハローワークや介護事業所が協力し、求人イベントや施設見学会を開催。
- 実務説明や業界理解を深める場を提供し、職場体験の機会を効果的に提供。
支援の仕組み
国が補助金を拠出し、都道府県が補助を受けて業界団体や福祉人材センターに業務を委託する形で支援が進められます。補助率は2/3で、連携協議会の設置・運営に必要な人件費やイベント開催費用などが対象です。
期待される効果
- 採用ミスマッチの防止: 地域の特性やニーズに合った介護人材確保が可能に。
- 人材定着の向上: 業界全体の理解を深めることで、職場環境への適応を促進。
- 地域格差の是正: 中山間地域や離島などの介護人材不足地域にも効果的な支援を実施。
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ホームヘルパーの魅力発信のための広報事業(8,000万円)
令和6年度の補正予算案では、さらに訪問介護におけるホームヘルパーの仕事の魅力を広く周知し、人材確保を促進するための広報事業に80百万円を計上しています。
主な施策内容
- ホームヘルパーの魅力発信
- ホームヘルパーの仕事のやりがいや実際のケアの様子を伝えることで、学生や介護業界を新たに目指す人々にその魅力を伝える。
- 経験者の声を取り入れたリーフレット、ポスター、動画コンテンツを制作し、幅広いターゲット層に向けて発信。
- 対象者とアプローチ方法
- 学生や異業種から介護業界への転職を検討する人々を主な対象とし、現場の魅力ややりがいを伝えることで業界への関心を喚起。
支援の仕組み
この取り組みは国が予算を委託し、民間団体が主体となって広報活動を実施する仕組みです。作成された広報資料は全国で活用される予定です。
期待される効果
- 業界への新規参入促進: ホームヘルパーの魅力を広く周知することで、訪問介護業界を目指す人材を増加。
- 介護人材の不足解消: 仕事への理解を深める広報活動が、新規参入者の動機付けとなり、業界全体の人材確保に寄与。
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訪問介護の報酬を減らし、研修や採用、経営改善の補助をする政府の矛盾
政府は令和6年度補正予算で、訪問介護の人材不足や経営改善を目的とした様々な支援策を打ち出しています。人材確保のための研修費補助、魅力発信のための広報事業、さらには地域の連携強化など、表面的には訪問介護を支える意欲的な取り組みのように見えます。しかし、ここに重大な矛盾が潜んでいることを見逃してはなりません。
訪問介護事業者が最も切実に求めているのは「現場で働くヘルパーへの適正な報酬」であり、そのための原資である介護報酬です。それにも関わらず、政府は令和6年(2024年)介護報酬改定で訪問介護現場の介護報酬水準を引き下げる一方で、研修や広報といった「間接的な支援」と「どう考えても効果が低い施策」に予算を投じています。これでは、根本的な課題である現場労働者のモチベーションや待遇改善に繋がるはずがありません。広報動画やポスターを制作しても、それが生活の不安を解消するわけでも、労働環境を改善するわけでもないのです。ましては、この予算は介護現場・事業者に直接わたるのはごく一部で、研修組織や広報PR会社に流れるといういつものパターンです。
また、現場の声に耳を傾ければ、業務負担の増加や深刻な人手不足が叫ばれていますが、こうした切迫した状況を無視して「未来への投資」と称した補助策ばかりを進める姿勢には、現場軽視の姿勢が見え隠れします。事業者にしてみれば、国からの「補助」ではなく、現場の負担を直接軽減するための報酬引き上げこそが求められているのです。
政府と厚生労働省が本気で訪問介護を支えたいのなら、まずは現場を直視し、働く人々への直接的な報酬改善に取り組むべきです。絵に描いた餅の政策で、現場をさらに疲弊させる結果にならないことを強く願います。
その他の補正予算案については「令和6年度厚生労働省補正予算案の概要 補正予算案の主要施策集」でご確認ください。
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