基本チェックリストとは 事業対象者の判断基準とフレイル把握

 

基本チェックリストとは

基本チェックリストとは、市町村や地域包括支援センターに相談に来た高齢者に対して、 介護予防生活支援サービス事業などによる支援が必要かどうかを簡単に判断するために用いられるものです。介護相談の窓口で、必ずしも要介護認定を受けなくてもスムーズに必要なサービスを介護予防・生活支援サービス事業により利用できるように、高齢者本人の状況を確認することを目的として基本チェックリスト様式例が国から示されました。

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介護保険の要介護認定と基本チェックリストで判断される事業対象者の違い

介護保険のサービスを利用するためには介護保険の要介護をもしくは要支援の認定を受けていることが原則ではありますが、介護予防・生活支援サービス事業に関しては基本チェックリスト該当者(介護予防・生活支援サービス事業対象者)も必要に応じてサービスを受けることができます。

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基本チェックリストでフレイル状態、事業対象者に該当するかの判断ができる

基本チェックリストには25項目の質問項目あり、それぞれフレイルの要因になりうる6つの状態になっているかを判断するチェック項目になっています。当てはまる数が多いほど、生活機能が全般的に低下しているおそれがあり、介護予防的な介入の必要度が高いです。

基本チェックリストで判断できるフレイルの前兆である6つの要因とは以下のようなものです。

  • 運動機能の低下
  • 低栄養状態
  • 口腔機能の低下
  • 閉じこもり
  • 認知機能の低下
  • うつ病の可能性

フレイルの意味・考え方

フレイルとは、英語で老いることや虚弱を意味する英語である「frailty」を元に作られた言葉です。「加齢により、筋力や認知機能が低下し心身の活力が低下した状態」を表しています。高齢者の要介護状態の前の段階の特徴でもあるとして、フレイルの状態で適切な介入し健康に生活できる期間を延ばすことが大切と言われて注目されています。詳しくは以下の記事で紹介しています。

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基本チェックリストと事業対象者の判定

基本チェックリストを行い、以下の判定基準のひとつでも該当すれば、「事業対象者」に該当します。介護予防・生活支援サービス事業の利用を希望する場合には、第1号介護予防支援事業(介護予防ケアマネジメント)の利用を地域包括支援センターに申し込み、介護予防ケアマネジメントを経て具体的な訪問型サービス、通所型サービス、その他の生活支援サービスの利用を検討し、介護予防サービス・支援計画書を作成します。(介護予防サービス・支援計画書は、居宅介護支援事業所に委託される場合もあります。)

事業対象者となった利用者は、介護予防サービス・支援計画書に組み込まれたサービス事業所に申し込みを行い、利用することとなります。

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基本チェックリストの判断基準

基本チェックリストは、介護保険の認定を受けなくても、必要なサービスが利用できるよう、本人の状況を確認するツールとして用いるものです。

25項目の質問項目の回答から、こちらで紹介する判定基準により、事業対象者に該当するか、介護予防・生活支援サービス事業利用の適否を判断します。

No.1~No.20までの20項目のうち10項目以上に該当する場合、複数の項目に支障がある状態(運動・栄養・口腔・孤立・認知機能低下)と判断できます。

1 バスや電車で一人で外出していますか 0.はい 1.いいえ
2 日用品の買い物をしていますか 0.はい 1.いいえ
3 預貯金の出し入れをしていますか 0.はい 1.いいえ
4 友人の家を訪ねていますか 0.はい 1.いいえ
5 家族や友人の相談にのっていますか 0.はい 1.いいえ

運動機能の低下の判定基準

No.6~No.10までの5項目のうち3項目以上に該当する場合、運動機能の低下のおそれがあり、運動機能向上に取り組む必要があると判断できます。

6 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか 0.はい 1.いいえ
7 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか 0.はい 1.いいえ
8 15 分くらい続けて歩いていますか 0.はい 1.いいえ
9 この 1 年間に転んだことがありますか 1.はい 0.いいえ
10 転倒に対する不安が大きいですか 1.はい 0.いいえ

低栄養状態の判定基準

No.11~No.12までの2項目のすべてに該当する場合、低栄養状態のおそれがあり、栄養改善に取り組む必要があると判断できます。

11 6 ヶ月間で 2~3kg 以上の体重減少がありましたか 1.はい 0.いいえ
12 BMI が 18.5 未満ですか 1.はい 0.いいえ

※ BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

口腔機能の低下の判定基準

No.13~No.15までの3項目のうち2項目以上に該当する場合、口腔機能の低下のおそれがあり、口腔機能向上に取り組む必要があると判断できます。

13 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか(小さく切って食べる場合は、はい) 1.はい 0.いいえ
14 お茶や汁物等でむせることがありますか(食事中に咳き込むことがある場合は、はい) 1.はい 0.いいえ
15 口の渇きが気になりますか(口の中が乾いて飲み込みにくい場合は、はい) 1.はい 0.いいえ

閉じこもりの判定基準

No.16~No.17の2項目のうち、No.16に該当する場合、閉じこもりのおそれがあり、レクリエーション、運動、創作活動、趣味活動、社交等に取り組む必要があると判断できます。

16 週に 1 回以上は外出していますか 0.はい 1.いいえ
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 1.はい 0.いいえ

認知機能の低下の判定基準

No.18~No.20までの3項目のうち、いずれか1つ以上に該当する場合、認知機能の低下のおそれがあり、認知症予防に取り組む必要があると判断できます。

18 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか 1.はい 0.いいえ
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 0.はい 1.いいえ
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 1.はい 0.いいえ

うつ病の可能性の判定基準

No.21~No.25までの5項目のうち、2項目以上に該当する場合、うつ病の可能性があり、うつの予防に取り組む必要があると判断できます。

21 (ここ 2 週間)毎日の生活に充実感がない 1.はい 0.いいえ
22 (ここ 2 週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 1.はい 0.いいえ
23 (ここ 2 週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる 1.はい 0.いいえ
24 (ここ 2 週間)自分が役に立つ人間だと思えない 1.はい 0.いいえ
25 (ここ 2 週間)わけもなく疲れたような感じがする 1.はい 0.いいえ

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基本チェックリストでフレイルに相当するカットオフ値

基本チェックリストと事業対象者の判定について紹介しましたが、該当する項目が少なかった場合であっても評価を行った結果、自立支援や介護予防の観点で必要なサービスであると判断されれば、その状況に応じた地域の介護予防活動などの調整支援が行われます。フレイルの診断方法には統一された基準はないですが、基本チェックリストがフレイルの評価法として有用であるかを調べた研究によると、フレイルとプレフレイルに相当する基本チェックリストの総合点のカットオフ値は、25項目のうちフレイルでは7点~8点の間、プレフレイルでは3点~4点の間が適切と考えられたと述べられています。

1)基本チェックリストの併存的妥当性
我々は,基本チェックリストがフレイル評価法として有用であるか否かを調べるため,国立長寿医療研究センターに慢性疾患の管理で通院する,要介護状態にない高齢者 164 名(平均年齢 76.4 歳)を対象に,基本チェックリストの総合点(#1~25)と CHS 基準の該当項目数の関連性を解析した.この 2 つの指標は有意に関連し(ρ=0.655,p<0.001),CHS 基準のフレイルに対する Receiver operating characteristic(ROC)曲線下面積は 0.92,プレフレイルに対する ROC曲線下面積は 0.81 であった.これらは,厚生労働省が二次予防事業対象者選定基準として示した「うつを除く 20 項目」を用いた評価よりも曲線下面積が大きく,その関連性はより強いことが確認された.そして,CHS 基準のフレイルとプレフレイルに相当する基本チェックリスト総合点のカットオフ値を求めたところ,フレイルでは 7 点と 8 点の間,プレフレイルは 3点と 4 点の間が適切と考えられた.

 

このように基本チェックリストは高齢者の状態を早くするのに役立つツールです。各項目の意味や判断基準について理解をして介護予防やフレイルに対する介入に役立てていきましょう。

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