介護保険サービスの「重要事項説明書」とは?内容やガイドライン

 

介護保険サービスを利用する際には、利用者やその家族がサービス内容を理解し、安心して利用できるように「重要事項説明書」が提供されます。この説明書は、サービス提供の前に詳細な情報を提供し、利用者が適切なサービスを選択するための重要なガイドラインとなります。この記事では、重要事項説明書の役割や内容、運営規程に基づく契約書の作成方法、自治体による運営指導や変更時の対応について詳しく解説します。さらに、茨城県と兵庫県の重要事項説明書の主な違いを比較し、地域ごとの特徴や注意点についても触れていきます。

介護保険サービスの「重要事項説明書」とは

介護保険サービスの重要事項説明書とは、サービス提供を開始する前に、利用者やその家族に対して、適切なサービスを選択するために必要な情報を説明するための文書です。この説明書には、提供されるサービスの内容や料金、利用手続き、事業者の連絡先などが詳しく記載されています。利用者が安心してサービスを利用できるよう、分かりやすく説明されていることが求められます。

重要事項説明書および契約書のガイドライン

介護保険サービスの重要事項説明書については、記載する内容がある程度決まっているので確認したいから重要事項説明書のガイドラインが公表されている場合があります。例えば、茨城県や兵庫県などはインターネットで検索すると、重要事項説明書のガイドラインが出てきます。この内容を網羅すれば基本的には重要事項説明書の内容的には問題がないと考えられます。また、ガイドラインとしては公表していない場合でも、各自治体の介護保険サービスのホームページを確認してみると重要事項説明書などの書類の雛形がサービスの種類ごとに用意されている場合が多いです。これが利用することで必要な情報が網羅された書類を作成することができると思います。注意点としては、各自治体が出している重要事項説明書作成のガイドラインの基本的な内容や構成は非常に似ていますが、各県のガイドラインの微妙な差異があります。

茨城県の重要事項説明書及び契約書のガイドライン」と「兵庫県の重要事項説明書及び契約書のガイドライン(令和3年版) 」の内容の主な違いを要約した表を作成しました。

項目 茨城 兵庫
パンフレットの使用 パンフレット等を用いて宣伝を行う場合には、できるだけ重要事項説明書と併せて交付し、利用者が事業者を選択する際の判断材料となるように留意すること​。 同様の記載があるが、パンフレットの内容を準用する際には、その項目に準用するパンフレットの頁数を記載することも求められる​。
契約時の家族等の立ち会い 重要事項説明及び契約時には、利用者の判断能力に疑問の余地がない場合を除き、家族や成年後見人等が立ち会うことが望ましい​。 同様の内容だが、家族(近親者)等が立ち会うこととすることが望ましいと明記されている​。
事業者の表示 事業者の法人格、法人名称、代表者の役職名及び氏名、法人登記簿記載の所在地、設立年月、連絡先部署名、法人が行っている他の業務、電話番号、電子メールアドレス等を記載すること​。 同様の内容に加え、医療機関等で個人事業者の場合には表示が必要ないと記載されている​。
契約書の内容 重要事項説明書に記載された内容を契約内容の一部とし、矛盾する内容を契約書に記載してはならない。重要事項説明書と一体のものとして契約書に添付することが求められる​​。 同様の内容に加え、不意打ち条項の禁止として、重要事項説明書に記載されていない損害賠償の制限や事業者側からの解約規定を契約書に記載してはならないとされている​。

茨城県と兵庫県でも、ガイドラインの内容に若干の違いがありました。おそらく原本は厚生労働省が作成しているものと推測されますが、各地域のローカルルールや運営指導などでの指摘事項などが反映されて地域ごとに差分が出ているものと考えられます。なお、重要事項説明書に記載しなければならない内容は、介護報酬改定によって追加されることもあるので、各自治体の最新の情報を得るようにしてください。

運営規定、重要事項説明書、契約書の役割と関係性、違い

介護保険サービスでは、重要事項説明書だけを理解しようとしても全体像がつかめなくなってしまうため、まずはじめに運営規定、重要事項説明書、契約書の関係性について大枠を把握しましょう。

書類 役割 主な内容 連動性
運営規定 事業者の運営基準と方針を定める サービス提供方針、従業員の配置、サービス内容、料金体系、苦情処理方法など 運営規定に基づいて重要事項説明書と契約書が作成される
重要事項説明書 利用者に対してサービス開始前に提供する情報をまとめる サービス内容、料金、利用手続き、契約条件、苦情処理方法など 運営規定に基づいて作成され、契約書に反映される
契約書 利用者と事業者間の正式な合意文書 サービス内容、料金、契約期間、解除条件など 重要事項説明書の内容を反映し、運営規定に従う

つまり、重要事項説明書と契約書のベースになるのは運営規定の内容です。運営規定は、事業者のサービス提供の基本方針や運営方法を定めたものであり、これに基づいて重要事項説明書や契約書が作成されます。

運営規定とは

運営規定には、事業の運営について以下のような内容を記載し作成し、自治体へ提出することでその事業所がどのような運営を行うのかを把握・チェックする役割があります。運営規程の内容は当該指定に係る事業所の所在地を管轄する自治体に提出し、変更があった場合にも提出することが必要な書類です。変更届は、運営規程に変更があったときから10日以内に提出することが求められています。(訪問介護を例としていますが、通所介護等他介護保険サービスについてにも類似しています。)

第二十九条 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程(以下この章において「運営規程」という。)を定めておかなければならない。

一 事業の目的及び運営の方針
二 従業者の職種、員数及び職務の内容
三 営業日及び営業時間
四 指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
五 通常の事業の実施地域
六 緊急時等における対応方法
七 その他運営に関する重要事項

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(運営規程)

介護保険サービスの「契約書」とは

介護保険サービスの契約書は、利用者とサービス提供事業者との間で締結される正式な合意文書です。契約書には、重要事項説明書に記載された内容が反映されており、具体的なサービス内容や料金、契約期間、解除条件などが明記されています。契約書の内容は重要事項説明書の内容と整合性が取れていないといけません。契約書は、ご利用者と事業者の権利と義務を明確にし、サービス提供の法的な基盤を形成します。

運営規定・重要事項説明書に変更が生じたときは改めて説明と同意が必要

運営規定や重要事項説明書に変更が生じた場合には、利用者やその家族に対して改めて説明し、同意を得る必要があります。これは、サービス提供の透明性を確保し、利用者の権利を守るためです。具体的にどのような場合に変更が生じるか、以下に説明します。

具体的な変更のケース

事業の目的及び運営の方針

例: 事業所の方針が変更になる場合。

対応: 新しい運営方針について詳細に説明し、利用者の理解と同意を得る。

従業者の職種、員数及び職務の内容

例: 職員の入れ代わりなどがあり、従業員の配置や担当業務が変更される場合。

対応: 新しい従業員の職種、人数、役割について説明し、利用者に変更内容を周知する。

営業日及び営業時間

例: 営業日が変更され、週末のサービス提供が新たに開始される場合。

対応: 新しい営業日と営業時間を利用者に通知し、変更に関する同意を得る。

内容及び利用料その他の費用の額

例: 介護報酬改定でサービス内容や費用が変更され、利用料が変更される場合。

対応: 新しいサービス内容と料金について説明し、利用者の同意を確認する。

業務継続に向けた取組・感染症対策の強化・虐待・身体拘束の防止など

例:業務継続に向けた取組・感染症対策の強化・虐待・身体拘束の防止など、介護保険改定で義務付けられた事項がある場合。

対応:各自治体で発行されている運営規程や重要事項説明書のひな型を参考として、書類に追記し、利用者への説明・同意を得る。

通常の事業の実施地域

例: サービス提供地域が拡大され、新たな地域でもサービスが受けられるようになる場合。

対応: 新しい実施地域について説明し、利用者に影響がある場合は同意を得る。

緊急時等における対応方法

例: 緊急時の対応手順が見直され、新しいプロトコルが導入される場合。

対応: 新しい緊急対応方法について詳細に説明し、利用者の理解を求める。

その他運営に関する重要事項

例: 苦情の担当窓口が変更になる

対応: 苦情の担当間口について重要事項説明書に記載されていた箇所の変更点ついて説明し、利用者の同意を得る。

変更が生じた場合の対応方法

どのような時に運営規程・重要事項説明書に変更が生じるかについて紹介しましたが、実際に変更は生じた場合にはどのように対応したら良いかについて対応方法のポイントを紹介します。

 

運営規程・重要事項説明書・契約書の変更: 各書類の整合性が取れている状態で読み合わせをしながら変更するようにしましょう。介護報酬改定の時などには、各自治体が変更をした場合の各書類の雛形などを公開している場合があるので自治体ホームページや自治体に問い合わせて雛形がないか確認しましょう。

事前通知: 変更内容を利用者やその家族に事前に通知します。書面や口頭での説明が一般的です。

説明会の開催: 大きな変更がある場合は、説明会を開催し、詳細を説明します。

書面の交付: 変更内容を記載した書面を交付し、利用者が内容を確認できるようにします。

同意の取得: 利用者から書面で同意を得ます。

記録の保持: 変更内容と同意書を適切に保管し、後日確認できるようにします。

 

これにより、利用者はサービス内容の変更について十分に理解し、納得した上でサービスを継続できます。事業者は、透明性と利用者の信頼を維持するために、丁寧で確実な対応をすることが大切です。具体的な内容変更時のポイントについては以下の記事も参考にしてみてください。

重要事項説明書の掲示について

重要事項説明書の掲示について、書面を利用者などが常時確認できる場所に掲示することに加え、令和7年7月1日以降はインターネット上のウェブサイト(法人のホームページ等または情報公表システム上)に掲載が必要となります。

まとめ

今回は重要事項説明書とは何かという切り口から、運営規程や契約書との関係性などについて詳しく解説しました。

重要事項説明書は介護保険サービスを提供する中で、利用者に一番最初に説明するとても大切な内容であり、変更があった場合には再度説明と同意を得なくてはいけない書類です。運営規程・重要事項説明書・契約書は、運営指導(実地指導)でも確認する書類となっており、これらの書類の不備は介護報酬の返還や事業所の指定取り消しなどのペナルティにつながりかねません。重要事項説明の内容に変更が生じる時は、介護報酬改定の時や人員体制・営業時間が変わった時など、他の業務も忙しい時に重なってしまうことが多いと思いますが、それぞれの書類の重要性と関係性を理解した上で、適切に対応していけるようにしましょう。

 

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