平成29年11月8日(水)に第150回社会保障審議会介護給付費分科が開催され、通所介護の介護報酬・基準について議論されました。
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通所介護の議論の流れと報酬改訂に向けた要点
通所介護については、自立支援や重度化防止という機能訓練の役割と、家族の介護負担軽減などのレスパイトケアの役割のどちらが優先されるかという議論が続きました。一方、先進的な事業者では地域社会の一部として活動や参加に着目した支援機能を担っている通所介護や、療養通所介護に近いくらい重度者の受け入れを行っている通所介護もありますが、このようなところは評価されないのかなど、通所介護のバリエーションについても議論されました。
小規模な通所介護がアットホームな雰囲気と個別ケアで要介護者にとってよいということで規制緩和のもとたくさん出来ました。しかし、前回の改定で報酬引き下げにあい事業所が減少しました。今回は大規模通所介護が日帰り温泉の様なものになっており、抑制の声が出ています。
主介護が現役世代の場合は、仕事を続けながら介護も行う事が理想とされており、その場合は職場に拘束される9時間以上は通所介護で預かってもらわないとならないため、保育園の延長保育と同じイメージで延長加算のニーズがあるという理論で進められてきましたが、本当にそうなのかということを再度議論する局面にきているようです。
現行の通所介護では、滞在計画時間3~5時間、5~7時間、7~9時間という枠で報酬を設定していますが、現実的には、3時間+α、5時間+α、7時間+αという形が大半であり、これらを踏まえて1時間刻みの報酬体系にすることが検討されています。
現在の議論としては、通所介護においても機能訓練を提供することが重要な役割として評価されそうな流れになってきており、機能訓練などの自立支援・重度化防止に向けた質の高いサービス提供が行われていない事業所については基本報酬引き下げも有り得るという状態です。
ただし、通所介護の機能訓練を重視すると、通所リハビリテーション(デイケア)との役割分担がわからなくなってしまうため、条件で分けていくかもしれないという雰囲気です。
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平成30年介護報酬改定におけるリハビリテーション・機能訓練の提供イメージ
平成30年介護報酬改定では、老人保健施設・通所リハビリ・医療機関で心身の機能の維持回復を図るためのリハビリテーションを卒業して、通所介護や地域の通いの場、家庭や社会で役割や生きがいを持って生活することを理想としています。そのために、通所介護や高齢者の通いの場に、デイケアや医療機関などに在籍する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリテーション専門職が出向き連携することを推進する方針です。
引用:通所介護の報酬・基準について, 第150回社保審-介護給付費分科会, H29.11.8
通所リハビリテーション(デイケア)でのリハビリ
通所リハビリテーションの基本方針としては、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うことにより、利用者の心身の機能の維持回復を図るものでなければならない。
通所介護(デイサービス)でのリハビリ・機能訓練
通所介護の基本方針としては、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、①利用者の社会的孤立感の解消 及び ②心身の機能の維持 並びに ③利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
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通所介護(デイサービス)での現在の機能訓練の状況
通称介護(デイサービス)の個別機能訓練加算を算定するためには、専従で機能訓練にあたる「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師」という条件があり、中小規模の通所介護では労務費に対する報酬の不足で配置が難しいという現状があります。
平成27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査によると、常勤専従が条件の個別機能訓練加算(Ⅰ)を算定している通所介護事業所は23.4%、配置時間の定めのない個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定している通所介護事業所は35.5%にとどまっています。
平成29年現在の個別機能訓練加算(Ⅰ)・個別機能訓練加算(Ⅱ)の算定要件については以下の記事でご確認いただけます。
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外部の通所リハ事業所等のリハビリ専門職との連携による機能訓練の推進(生活機能向上連携加算の創設)について
今回の改定では、生活機能向上連携加算の創設が具体的に挙げられました。
これは、他の事業所に所属する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、医師が通所介護に訪問してアセスメントや個別機能訓練計画の立案を当該施設のスタッフと一緒に行うというものです。
論点1
- 現行の個別機能訓練加算は機能訓練指導員を専従で置く必要があり、特に小規模事業所では、新たな職員を雇用することが困難なために加算を取得できないとの声がある。
- このような事業所においても質の高い個別機能訓練を行えるようにするための評価を創設してはどうか。
論点1
自立支援・重度化防止に資する通所介護を推進するため、通所介護事業所の職員と外部のリハビリテーション専門職が連携して、機能訓練のマネジメントをすることについて評価してはどうか。
○ 具体的には、
- 訪問・通所リハビリテーション、リハビリテーションを実施している医療提供施設の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、医師が、通所介護事業所を訪問し、通所介護事業所の職員と共同で、アセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成すること
- リハビリテーション専門職と連携して個別機能訓練計画の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて計画・訓練内容等の見直しを行うことを評価してはどうか。
引用:通所介護の報酬・基準について, 第150回社保審-介護給付費分科会, H29.11.8
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通所介護の基本報酬のサービス提供時間区分の見直しについて
平成30年介護報酬改定では、サービス提供実態を適切に評価する観点から、時間区分を1時間ごとに見直すことがイメージされています。
具体的には、3時間以上4時間未満、4時間以上5時間未満、5時間以上6時間未満、6時間以上7時間未満、7時間以上8時間未満、8時間以上9時間未満、・・・などという枠組みで、要介護認定により単位を設定していく方針で進められているようです。
引用:通所介護の報酬・基準について, 第150回社保審-介護給付費分科会, H29.11.8
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事業所規模に応じた基本報酬の見直し
通所介護の基本報酬は、月の延べ利用者数に応じて、地域密着型(小規模)、通常規模型、大規模型(Ⅰ)、大規模型(Ⅱ)という枠組みで分けられています。
大規模であるほど、報酬単価が低く設定されていますが、経営状況を規模別に比較すると、規模が大きくなるほど収支差率も大きくなっています。
現行の経営実態調査で利益率等を踏まえて、施設規模ごとに基本報酬を再設定することになりそうです。
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平成30年 通所介護報酬改訂方針についておたきやまの個人的な感想
通所介護が機能訓練の施設になりそう
通所介護報酬改定について、通所介護の利益率の高さがピックアップされて減算の対象となりそうですが、本来の通所介護の機能を果たそうとしているところまで経営難で窮地に追いやられる可能性があると感じます。通所介護は ①利用者の社会的孤立感の解消 及び ②心身の機能の維持 並びに ③利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るもの という目的が明記され運営されているにもかかわらず、機能訓練という部分が妙に重視されてしまっているという印象です。各協会からの要望が取り入れられたようです。
通所介護では入浴・食事・排泄・健康チェック、社会的孤立の解消も役割
私は理学療法士なのでリハビリ専門職という存在が盛り込まれることは一部は喜ばしいことです。しかし、通所介護施設の管理者でもあるため、レスパイトケアや、軽~中度の認知症の方、独居者の拠り所(活動・参加)という重要度が相対的に下がってしまうことを懸念しています。どこの事業所も運営が厳しい中では、できるだけ顧客単価が上がるように加算に誘導されてしまいます。
個人的には、入浴加算を高く評価してもらいたいところです。現在、入浴や食事の提供無しの通所介護もあり、介護職員も少なく済んで利益率が高くなってしまっている短時間の機能訓練強化型デイサービスなどもあります。フィットネスだけじゃない介護施設としての機能を意識させたりするのも有りかと思います。
ケアマネジャーの立場としては、ケアプランを作成するときにICFをベースに考察するよう指導されています。健康状態や心身機能、表面的な希望だけでなく、活動や参加にも目を向けて、利用者の望む生活に近づけるという点を重視することを研修されていますが、その機能を包括的に担える通所介護という形態が、リハビリ施設になってしまうには急ぎすぎというイメージがあります。
リハビリ専門職を動員して混乱するが、ICFに慣れることが狙える
今回の改定では、通所介護の個別機能訓練加算を補う形で、他事業所との連携によりアセスメントや個別機能訓練計画を行うことを評価する「生活機能向上連携加算の創設」が資料に登場しました。通所介護の生活機能向上連携加算では、アセスメントや機能訓練計画の連携であり、実際に機能訓練を実施するのは通所介護施設スタッフになりことを想定しているようです。これを算定するとしたら、通所介護施設のオペレーションも大きく変わり、立てられた機能訓練計画に沿ってスタッフがいろいろ行うことになります。
善し悪しだなぁという印象ですが、この連携の本当の狙いはリハビリ専門職のアセスメントによりケアマネジャーや通所介護のスタッフがICFを用いた生活の全体像をとらえる考え方や、生活機能に着目して目標指向的アプローチを行うことに慣れる事にある様な気がしています。
通所介護施設にコンサルタント的に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が介入していけることは、おもしろいとは思います。通所介護と療法士を派遣して連携する事業者が現実的に継続できる報酬が設定されるかはわかりませんし、計画を立案とアセスメントに参加して、通所介護施設の提供内容を変えられるかはわかりません…。
通所介護は機能を分けない方がいいような気がする
通所介護、通所リハビリで機能を分けたり、通所リハビリの中でもレスパイトケアの機能、機能訓練の機能などを分けたがる傾向がありますが、通所介護とは、生活上の世話、孤立の防止、機能訓練などを通所介護計画に沿って包括的に提供する施設という位置づけであるため、無理に機能を分けてしまうような加算設定をしない方が良いような気がします。(評価するという言い方をしますが…)
審議する方たちも悩んでいると思いますが、報酬改定でかじ取りすることは難しいことなんだと改めて感じる社会保障審議会介護給付費分科会資料です。
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