男女共同参画社会基本法の内容・男女雇用機会均等法との違い

 

「男女共同参画社会基本法」と「男女雇用機会均等法」は、日本の男女平等を目指す法律の中で主要なものとして知られています。しかし、これらの法律の名称が似ているため、内容や目的が混同されることがしばしばあります。本記事では、男女共同参画社会基本法の主な内容を解説し、男女雇用機会均等法との違いを明確にしていきます。

男女共同参画社会基本法とは?簡単にわかりやすく言うと

「男女共同参画社会基本法」は、男女が平等に社会に参加し、その利益を享受することを目指すという内容で1992年にできた法律です。

「前文」、「第一章 総則(第一条~第十二条)」、「第二章 男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的施策(第十三条~第二十条)、「第三章 男女共同参画審議会(第二十一条~第二十六条)、附則という構成になっています。

男女共同参画社会基本法の内容の要約

男女共同参画社会基本法の主要な内容を要約したものです。

男女共同参画社会基本法の目的

男女の人権を尊重し、社会経済の変化に対応した活力ある社会を形成するため、男女共同参画社会の基本理念と施策を定め、その推進を目指す。

男女共同参画社会基本法の定義

男女共同参画社会

男女が平等に社会のあらゆる分野で活動し、政治的、経済的、社会的、文化的利益を享受する社会。

積極的改善措置

男女の機会の格差を改善するための措置。

男女の人権の尊重

男女共同参画社会は、男女の尊厳や能力を尊重し、性別による差別を排除することを基盤とする。

社会の制度や慣行の配慮

性別に基づく役割分担を反映する制度や慣行が、男女共同参画社会の形成を阻害しないように注意が必要。

政策の立案・決定への共同参画

男女が平等に政策や方針の立案・決定に参加することが求められる。

家庭と仕事の両立

男女が家庭の役割を果たしつつ、他の活動も行えるようにサポートする。

国際的協調

男女共同参画の推進は、国際的な連携のもとで行われるべき。

国・地方公共団体・国民の責務

国の責務

男女共同参画社会の形成を総合的に推進する施策を策定・実施する。

地方公共団体の責務

地域の特性に応じた施策を策定・実施する。

国民の責務

あらゆる分野で男女共同参画社会の形成に努める。

法制上の措置

政府は、男女共同参画社会の形成を促進するための法的・財政的措置を講じる。

年次報告

政府は、毎年、国会に男女共同参画社会の進展状況や施策に関する報告を提出する

この法律は、男女平等の実現を目指し、国や地方公共団体、国民がその実現に向けての責務を持つことを明確にしています。

2022年「男女共同参画社会に関する世論調査」結果(2023年3月公表)

毎年、国会に男女共同参画社会の進展状況や施策に関する報告を提出するとありますが、以下のような報告がなされています。

2023年3月に内閣府政府広報室は、2022年に調査した「男女共同参画社会に関する世論調査」の結果について公表しました。

調査対象は、全国18歳以上の日本国籍を有する者5,000人で、郵送により行われ、有効回収数2,847 人(有効回収率56.9%)

調査項目

1 男女共同参画社会に関する意識について
2 家庭生活等に関する意識について
3 夫婦の名字・姓に関する意識について
4 女性に対する暴力等に関する意識について
5 男女共同参画社会に関する行政への要望について

「男女共同参画社会に関する世論調査」結果抜粋

この世論調査結果は、「男女共同参画社会に関する世論調査」の概要(内閣府) (https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-danjo/gairyaku.pdf)を加工して作成しました。詳細は上記リンクをご参照ください。

以下は項目を抜粋したものであり、選択肢としては、「男性の方が非常に優遇されている」と「女性の方が非常に優遇されている」がありますが、今回は少数派になる項目が多いため省いています。そのため、合計は100%にならない表となっています。

どちらかといえば男性の方が優遇されている 平等 どちらかといえば女性の方が優遇されている
家庭生活における男女の地位の平等感 50.8% 31.7% 8.0%
職場における男女の地位の平等感 48.1% 26.4% 6.5%
学校教育の場における男女の地位の平等感 21.5% 68.1% 4.7%
政治の場における男女の地位の平等感 41.5% 9.6% 1.4%
法律や制度の上での男女の地位の平等感 40.6% 37.0% 8.3%

家庭生活等に関する意識について 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に対する意識

問4  「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、あなたはどうお考えですか。(〇は1つ)

・賛成(小計) 33.5%
・反対(小計) 64.3%

夫婦の名字・姓に関する意識について

問 12  あなたは、仮に結婚して戸籍上の名字・姓が変わったとした場合、働くときに旧姓を通称
として使用したいと思いますか。あなたが結婚している、していないに関わらず、お答えください。」

・旧姓を通称として使用したいと思う 39.1%
・旧姓を通称として使用したいと思わない 58.7%

女性に対する暴力の根絶を図るために対策が必要なもの

問 13  女性に対する暴力の根絶を図るため、あなたが対策が必要だと考えるのはどれですか。(〇はいくつでも)

・配偶者や元配偶者などからの暴力、いわゆるDV 78.6%
・強制性交等や強制わいせつ、痴漢、盗撮などの、性犯罪や性暴力 72.8%
・児童買春や性的虐待、児童ポルノなど、こどもに対する性犯罪や性暴力 68.3%
・つきまといや待ち伏せなどのストーカー行為 64.9%

調査方法、結果の抜粋から見える現状と課題

男女の平等感については、男性の方が優遇されていると割合が高くなっている現状ですが、結果を詳細にみると20代~30代では男性が優遇されているという割合は低くなってきています。例えば、若い世代が多い「学校教育の場における男女の地位の平等感」では平等と感じている割合が過半数です。

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方については、1992年には賛成が60%となっていました。「男女共同参画社会基本法」を1999年に施行され、2002年には賛成と反対が均衡する状況となりました。男女共同参画社会基本法により、日本の価値観が変わるきっかけになったことが考えられます。男女共同参画への誘導を行うことが、日本古来の家庭や社会観念に過度に介入したことにより、「女性が働くべき」社会世論が形成され、男性が優遇されていると感じるようになったとも考えられます。

女性に対する暴力の根絶を図るために対策が必要なものに関しては、選択肢が限られており、「女性に対する暴力の根絶を図る」という前提があるならばその選択肢に〇をすることになるだろうなぁという意図的なものを感じます。

男女共同参画基本計画における成果目標の例

男女共同参画社会基本法では、「毎年、国会に男女共同参画社会の進展状況や施策に関する報告を提出する」ということが定められています。「成果目標・指標 | 内閣府男女共同参画局」では、男女共同参画基本計画における成果目標と現況を公表しています。例えば以下のような項目が男女共同参画基本計画における成果目標として定められています。

  • 衆議院議員の候補者に占める女性の割合 35%(2025年)
  • 参議院議員の候補者に占める女性の割合 35%(2025年)
  • 国家公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合 35%以上(毎年度)
  • 地方警察官に占める女性の割合 12%程度(2026年度当初)

男女共同参画社会基本法に違反した場合に罰則はある?

男女共同参画社会基本法には、男女が平等に社会に参加し、その利益を享受することを目指し努力することが内容となっており、一方の性別を差別したり、性別により不利益があるような状態や言動があったからといって、国民が刑事罰を受けるという性質のものではありません。男女共同参画社会基本法は理念として重んじることを明言化した法律です。

第十条 国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。

法律第七十八号(平一一・六・二三) 男女共同参画社会基本法

男女共同参画推進関係予算は約10兆円

「男女共同参画推進関係予算は9兆円は削減可能?」「10兆円無駄」という疑問が浮上しています。男女共同参画推進関係予算の詳細な内訳を深堀りし、その実態を明らかにします。予算の適切な使い道や、必要な部分とそうでない部分の議論を通じて、真実に迫ります。

男女共同参画社会基本法と男女雇用機会均等法との違い

男女共同参画社会基本法は全体的に努力義務であり、違反した場合に罰則はありませんでしが、もっと長い歴史のある男女雇用機会均等法については罰則も設定されており、社会にも浸透してしてきているように感じます。

男女雇用機会均等法とは

男女雇用機会均等法は、正式な法律名は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)」という名称で1972年にできた法律です。「男女共同参画社会基本法」は、1992年にできた法律なので、男女雇用機会均等法の方が歴史のある法律となります。

男女雇用機会均等法の内容

男女雇用機会均等法は、採用、配置、昇進などの雇用過程での性別に基づく差別や、結婚や妊娠・出産を理由とした不適切な取り扱いを禁じています。さらに、職場でのセクシュアルハラスメントや妊娠・出産に関するハラスメントの予防策を事業主に実施することが義務づけられています。

男女雇用機会均等法の罰則

男女雇用機会均等法では、厚生労働大臣から求めがあった場合に報告をしない、または虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処するという罰則が設けられています。

第四章 雑則
( 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第二十九条 厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
2 前項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

第五章 罰則
第三十三条 第二十九条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 昭和四十七年法律第百十三号)

2020年女性の職業生活の活躍推進に関する法律の一部が改正

2020年6月から女性の職業生活の活躍推進に関する法律の一部が改正され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、および育児・介護休業法が更新されました。この改正により、職場でのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを防ぐための適切な措置を取ることが、事業主の義務とされています。

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律とは

国は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律で事業主行動計画の策定に向けた指針を定めました。国、地方公共団体、および民間事業主は、女性の活躍に関する状況を把握し、改善が必要な事情を分析する義務があります。具体的には、女性の採用比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、女性管理職の比率などを調査・分析します。この分析を基に、「事業主行動計画」を策定し、公表することが求められています。

2022年男女の賃金の差に関する情報公開が必須に

女性の活躍をさらに推進するための女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者数が101人以上の企業は、一般事業主行動計画の策定や届出などが義務となっており、100人以下の企業には努力義務が設けられています。さらに、301人以上の企業には、2022年7月8日から、男女の賃金の差に関する情報公開が必須とされました。

まとめ

「男女共同参画社会基本法」と「男女雇用機会均等法」は、日本の男女平等を実現するための重要な法律ですが、その目的と内容には明確な違いがあります。前者は男女が社会のあらゆる分野で平等に参加し、活躍するための基本的な方針や理念を定めるもので、後者は具体的に職場における男女の平等な雇用機会を確保するための措置を中心に規定しています。これらの法律を正しく理解し、適切に活用することで、真の男女平等が実現される社会を目指すことができます。

 

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