身上監護とは?認知症や障害者の契約、家族なら勝手にしてOK?
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介護や医療の現場では、本人が認知症や重度障害により判断できない状態にある場合、家族の同意だけで契約や手続きが進んでいくことが少なくありません。
施設入所、医療同意、手術の判断、各種契約など、現実の現場では「家族が決めるもの」として扱われている場面も多く見られます。

しかし、それらの対応は法的に本当に問題ないのか、また「身上監護」という言葉は、どこまで家族に認められている権限なのか。

この記事では、身上監護の法的な位置づけを整理しながら、医療・介護現場でよくある判断と、その法的リスク、正しい手続きの考え方について解説します。

身上監護とは何か

身上監護とは、本人の生活や健康、療養、福祉に関わる行為について、本人に代わって配慮し、判断し、支援することを指します。
具体的には、住む場所の選択、医療や介護サービスの利用、日常生活の環境整備などが含まれます。

重要なのは、身上監護という言葉自体が、家族に自動的に強い法的権限を与えるものではないという点です。

身上監護権が法律上の権限として明確に認められるのは、成年後見制度の枠組みの中に限られます

未成年の場合には、親権を持つ親に身上監護権が認められています

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家族なら本人の代わりに決めてよいのか

多くの人が「配偶者や子どもなら当然決められる」と思いがちですが、日本の法律では、家族であっても本人の代わりに契約や同意を行う代理権は原則としてありません

未成年は親が身上監護権を持っているので、大人になっても親子関係ならば代理しても問題ないだろうと考えている人が多いと思います。しかし、親族関係があるという事実だけで、次のような行為が自由にできるわけではありません

行為 家族だけで法的に可能か
介護施設との入所契約 原則不可
手術や侵襲的医療への同意 法律上の代理権はなし
財産管理や預金解約 不可
賃貸借契約の締結・解約 不可

それでも現場で家族同意が通っているのは、実務慣行として黙認されているケースが多いというのが実情です。

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医療・介護現場で実際に起きていること

医療や介護の現場では、本人の意思確認が困難な場合、家族の意向を確認したうえで対応が進められることが一般的です。
これは、現実的に迅速な判断が求められる場面が多く、制度が追いついていない側面もあります。

しかし、法的には「家族が同意したから問題ない」と単純に整理できる話ではありません。
とくに以下のような場面では、後からトラブルに発展するリスクがあります。

  • 本人が回復後に「そんな契約はしていない」と主張した場合
  • 親族間で判断の正当性を巡って争いが起きた場合
  • 医療事故や結果に不満が生じた場合

現場対応として理解できる判断と、法律上の正当性は、必ずしも一致しない点が重要です。

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身上監護と成年後見制度の関係

法的に身上監護権が明確に認められるのは、成年後見制度を利用した場合です。
成年後見人は、家庭裁判所によって選任され、本人の生活・医療・介護に関する判断について、一定の法的根拠を持ちます。

成年後見人ができることは、財産管理だけではありません。医療や介護に関する契約行為、施設入所の判断、生活環境の調整など、身上監護に関わる行為も含まれます。

ただし、成年後見人であっても、本人の身体への侵襲を伴う医療行為に対する同意権については、慎重な運用が求められています。

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任意後見人を立てていない場合はどうなるのか

認知症や障害が進行してからでは、本人の意思能力が失われ、任意後見契約を結ぶことはできません。
その場合、法的に本人を代理できる存在を確保する方法は、原則として法定後見制度に限られます。

家族がどれだけ誠実に本人のことを思って判断していたとしても、
法律上の代理権がなければ、契約や同意は「本人不在の行為」になり得ます。

これが、後から無効を主張されたり、損害賠償リスクにつながる理由です。

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成年後見人以外に正しい方法はないのか

実務上、「成年後見人を立てるしかないのか」という疑問は非常によく聞かれます。
結論から言えば、状況によっては成年後見制度以外の手段が併用・検討されることもあります。

たとえば、以下のような仕組みは、限定的ではありますが活用される場面があります。

手段 できること 限界
医療同意書・事前指示書 医療方針の意思表示 法的拘束力は弱い
家族信託 財産管理の一部 身上監護権は含まれない
日常生活自立支援事業 軽度の支援 重大契約は不可

これらはいずれも、身上監護の全面的な代替にはならず、
契約行為や重要判断を伴う場合は、やはり成年後見制度が中心になります。

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家族同意で進めることの法的リスク

家族の判断がすべて違法になるわけではありません。しかし、法的な裏付けがないまま進めた行為には、常にリスクが伴います。

介護施設や医療機関側も、家族(キーパーソン)の同意を取っているから安心ではなく、契約主体や同意の正当性について、慎重な対応が求められます。介護医療の現場としては、「キーパーソンや緊急連絡先になっている人に確認したから大丈夫」「現場でよくあるから」「今までも問題なかったから」ではなく、どこまでが慣行で、どこからが法的リスクなのかを理解しておくことが重要です。

介護施設や医療機関で家族同意で進める時のリスク

介護施設や医療機関が「家族(キーパーソン)の同意を得ているから問題ない」と判断して対応を進めた場合でも、契約主体や同意権限が不明確なままでは法的リスクが残ります。本人に意思能力がない状態で、法定代理権のない家族が契約や同意を行った場合、その契約は後に無効や取消しを主張される可能性があります。

本人が回復した後や、成年後見人が選任された後に「正当な代理人ではなかった」と判断されると、契約そのものが成立していない扱いになることもあります。

また、医療行為や施設入所に関する判断結果に不満や不利益が生じた場合、家族間の紛争や相続トラブルに発展し、施設や医療機関が説明義務違反や注意義務違反を問われるケースも考えられます。特に侵襲性の高い医療行為では、同意の正当性が争点となり、訴訟や損害賠償請求に発展するリスクがあります。

このように、実務上は家族同意で進めざるを得ない場面があっても、法的には「誰が本人を代理できるのか」を確認せずに進めること自体が、後日の紛争や責任追及につながる可能性を含んでいます。

後見人がいることが後からわかった場合

介護施設などではたまにありますが、状況はあまり分かっていない親族が、本人に近い家族に確認しないで勝手に老人ホームに申し込みなどをしてしまうことがあります。

後になって成年後見人がすでに選任されていたことが判明した場合、介護施設や医療機関、家族が行っていた契約や同意は、法的に重大な問題を抱える可能性があります。

成年後見人がいる場合、本人に代わって法律行為を行う権限は、原則としてその後見人に専属します。したがって、後見人の関与がないまま家族や親族が行った契約や同意は、無権代理行為とされるおそれがあります。その結果、後見人から「契約は無効である」「契約を追認しない」と主張されると、契約が成立しない扱いになったり、解除や条件変更を求められる可能性があります。

また、医療行為や施設入所の判断についても、後見人が関与していないこと自体が問題視される場合があります。結果に不利益が生じていれば、施設や医療機関が注意義務を尽くしていなかったとして責任を問われるリスクも否定できません。特に「後見人の存在を確認せずに手続きを進めた」点が指摘されると、管理体制や説明体制の不備として指摘されることがあります。

このため、本人の判断能力に疑いがある場合には、契約前や重要な同意を得る前に、成年後見制度の利用有無や後見人の有無を確認することが、施設・医療機関側にとっても自らを守る重要な対応となります。

実際、介護施設などでは、親、長男や長女などが相談に来た場合、本人の同意なしに契約してしまう

実際の介護施設では、本人が認知症などで判断できない、あるいは本人に伝えることで混乱や拒否が強まることを理由に、長男・長女などの家族だけで入所契約が進められるケースは少なくありません。現場実務として理解できる対応ではあるものの、法的には注意すべき点があります。

まず気をつけるべきなのは、契約の名義と立場を曖昧にしないことです。本人を契約者とするのか、家族を契約者とするのかを整理せずに契約すると、後に「本人は同意していない」「代理権がなかった」として契約の有効性が争われることがあります。

実際、入所後に本人の状態が改善し、「そんな契約は知らない」と退所や返金を求められた事例や、他の相続人が介入し「長男にそんな権限はない」と主張して紛争化したケースもあります。

また、医療対応や身体拘束、費用負担を巡って家族間の意見が割れ、施設が説明不足や同意手続きの不備を理由に責任を問われた事例も見られます。こうしたトラブルを避けるためには、家族の申出だけに依存せず、本人の意思確認の可否、判断能力の程度、後見制度の利用有無を記録として残し、重要事項については「家族の判断による暫定対応」であることを明確にしておく姿勢が重要です。

現場では「仕方がない対応」であっても、後から説明できるプロセスを残しているかどうかが、トラブルになるか否かの分かれ目になります。

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身上監護を巡る判断で大切な視点

身上監護の問題は、「家族か、制度か」という単純な対立ではありません。
本人の尊厳を守りつつ、現実的に生活や医療を支えるために、どの時点で、どの制度を使うべきかを考える視点が必要です。

認知症や障害は、ある日突然すべてが判断不能になるわけではありません。
だからこそ、判断能力があるうちから、任意後見や支援の形を検討しておくことが、家族・本人・現場すべてを守る結果につながります。

 

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