大阪で大きな地震があり、日本は地震大国で地震による災害はどこでも起きる可能性があり、再度高齢者や要介護者の地震対策マニュアルなどを見直した組織も多いのではないでしょうか。『備えあれば憂い無し』といいます。今回は要介護者や薬を内服している人などの地震対策として、マニュアルには載っていないですがリスクとして考えておかなければならないことについて書きたいと思います。一般的な地震対策についてはテレビやマスコミでも取り上げられてますので、この記事では特に高齢者や薬関係を中心に薬剤師の立場から書いていきます。
地震の一次的な被害 倒壊、家具等の転落、転倒など
地震が起こると部屋のものが崩れてきます。在宅治療されている方や施設に入居されている方は日常の行動範囲を狭くさせるために手の届く所に荷物を置いている事が多いと思います。
高齢者の地震対策 ライフラインとしての薬や医療の確保
地震で家具や身の回りのものが崩れてきても怪我しないかなど再確認して下さい。地震のときはライフラインの確保が大切とよく報道されており、水や非常食などを確保しておくように言われます。健康な成人であればそれ第一で良いと思いますが、高齢者では、さらに薬が大切になってきます。とくに糖尿の薬や血圧の薬、心臓・循環器系の薬などは重要になってきます。一日、二日でも生死に関わって来る事もあります。
災害時に薬も持っていけるよう余分に緊急時持ち出し袋に
災害時にすぐに薬も持っていけるように置く場所を決めておき、いつでも持って外出できるように準備しておく必要があります。周囲の病院や薬局も被害を受けている場合は、薬がすぐに供給されないことも考えられます。いつもぎりぎりの数しか薬を持っていない場合は、二、三日は余分に家に置いておくというのも大切ではないでしょうか?
避難生活の不安のための頓服薬
避難生活になると精神的に不安になったり、不眠、高血圧など体調を崩す事が多くなります。
普段からそういう状態になったりする事が多い患者様は再度必要な頓服の薬など見直してみるのも良いと思います。
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津波や倒壊、電気トラブルでパソコンや電子情報が消失
東日本大震災では、地震のほかに津波も発生しました。地震で、医療機関も被害をうけましたが、津波の被害で1番影響があったものがあります。パソコンです。現代の病院、薬局は、電子カルテになっておりすべてパソコン管理されています。パソコンを開くと患者さまの病気の事や薬の事がすべてわかりますし、非常に便利ですが、地震と津波の影響で、そのパソコンがすべて故障してしまいました。
ライフラインが復旧し、ガス、電気が復旧しても壊れたパソコンは、元には戻りません。東日本大震災では患者様の医療データがすべてみる事が出来なくなってしまいました。
お薬手帳 病院の電子情報が復旧しない場合は紙の治療・服薬情報が有効
高齢の患者様は、色々な病気をもっており薬の種類、服用のタイミングなど複雑で、患者様によりさまざまなパターンがあります。もちろん患者様本人でもどの薬を服用していて、その規格は何ミリ服用していたかなどすべて記憶している人などいません。手元に薬が残っている人は辛うじて同じ薬を処方してもらう事はできますが、手持ちの薬も持っていけなかった人は、全く分からない状況でした。そうでなくても災害現場は大混乱なので、患者様の薬の問題は非常に困ったと聞いてます。
そこで、1番役に立ったのが、お薬手帳です。
日頃、薬局に行くたびにめんどくさいと思われてしまうお薬手帳ですが、このときばかりは非常に役に立ちました。患者様が今までどういう薬を服用してきたかがすぐに分かります。手帳という平成のこの時代にアナログですが、こういうパソコンや携帯などが使えなくなった災害時には1番頼りになってきます。再度お薬手帳の場所についても検討しなおしてみてください。お薬の説明書でも良いと思いますが、お薬手帳が良いと思います。
お薬手帳に患者さまの病名や治療時に注意すること(アレルギーや副作用など)も書いておくとより有効利用できます。
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地震の二次的被害 医薬品の供給不足
東日本大震災では、二次的被害もありました。医薬品の供給不足です。病院、薬局など医療現場も被害を受けましたが、同時に医薬品工場も被害を受けました。薬品を作ることが出来なくなったので、日本全国の患者さまへその薬を供給することが出来なくなってしまいました。
個人的に記憶にあるのは、チラーヂンとインスリン注射の針とエンシュアリキッドです。
製薬会社の被災で医薬品供給が止まるリスク 東日本大震災の例
国内シェアは98%の甲状腺治療薬 チラージンが供給困難に
チラーヂンは、高齢の患者様も服用してる事が多い甲状腺の薬になります。
チラージンは当時、あすか製薬国内1社のみで製造しており、国内シェアは98%でした。そのあすか製薬のチラージン製造工場が震災で破壊され製造できなくなりました。チラーヂンを代用する薬もなかったので医療現場は大混乱でした。チラージンを服用している患者は約60万人で、そのすべての人で供給不足が起こりました。
チラーヂンの服用ができない場合、甲状腺機能低下症の症状である倦怠感が強まったり、代謝機能が低下したりします。最悪の場合心臓の機能が悪化したりするので、患者さんの生命にも影響しかねない状況でした。日本政府は急遽海外から同じ様な甲状腺の薬を輸入しようと努力していましたが、医薬品としての承認試験をどうしていくか?などの問題もあり海外の甲状腺の薬が患者様の手元に供給されるまで非常に時間がかかり、チラーヂン服用患者様は大変な思いをしたと思います。
インスリンの針工場が被災で供給困難、注射を打てない
インスリン注射の針の工場も破壊されました。糖尿病でインスリン治療されている方も多いと思います。インスリン注射に関しては種類も多数あるので代用が効いた事もあったんですが、インスリンの針工場が破壊された為、インスリン注射は手元にあるが、針がないため注射を打つことができない状況になりました。
インスリン注射を使用している糖尿病患者様がインスリンを投与しないと、すぐに高血糖になり、意識障害をおこし、死に至ります。当時も生死にかかわる事なので多くの患者様がインスリンの針を探し求めて薬局に来られたのを鮮明に覚えています。薬局としても渡したいんですが、どんなに発注しても薬局に針が届きませんでした。当然、薬局に来ないものは患者様へお渡しする事ができないので、本当に困りました。
エンシュアリキッドの缶工場が被災で商品を出荷できず
エンシュアリキッドの場合は、商品ではなくそれをいれる缶の工場が被害を受けました。薬があれば入れ物なんで袋でもなんでも良さそうですが、1度缶で薬剤申請を国にしているので、勝手に容器をかえるわけにもいかず、供給できなくなりました。同様の薬でラコールという栄養剤があり、幸い工場被害は無かったんですが、エンシュアリキッドを服用されていた患者様がすべてラコール服用に変更したため、在庫が切れてしまいラコール服用患者様もエンシュアリキッド服用患者様も同時に服用できなくなるという状況になりました。
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医薬品・医療機器は生命線そのもの
このように大きな地震になると地震の被災地だけでなく、日本全体に影響がおよびます。医薬品は医薬品として認められるために非常に厳しい審査を経て承認されているため、薬の形状や包装、容器、管理などどれかが要件を満たせていないだけで供給できない状態になってしまうのです。
東日本大震災での処方箋医薬品の取扱いについて 医療機関及び薬局への周知
東日本大震災では、人命やインフラなど様々な面で大きな被害があり、地震の翌日に正当な理由があれば処方がなくても医薬品を販売・授与できる旨の案内が医療機関や薬局向けに出されました。
平成23年東北地方太平洋沖地震における処方箋医薬品の取扱いについて(医療機関及び薬局への周知依頼)
平成23年3月12日厚生労働省医薬食品局総務課
昨日(平成23年3月11日)に発生いたしました、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震及び関連する津波等による被災地における処方箋医薬品の取扱いについては、下記のとおりとなりますので、被災地における処方箋医薬品を必要とする者への供給に支障なきよう、貴管下の関係者に周知願います。
記
今般の地震及び関連する津波等による被災地の患者に対する処方箋医薬品の取扱いについては、平成17年3月30日付薬食発第0330016号厚生労働省医薬食品局通知「処方せん医薬品等の取扱いについて」の1(2)に示したとおり、薬事法第49条第1項の規定における「正当な理由」に該当し、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方箋の交付が困難な場合において、患者に対し、必要な処方箋医薬品を販売又は授与することが可能であること。
(参 考)
○ 薬事法(昭和35年法律第145号)
(処方せん医薬品の販売)
第四十九条 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
○ 「処方せん医薬品等の取扱いについて」(平成17年3月30日付薬食発第0330016号厚生労働省医薬食品局通知)
1.処方せん医薬品について
(1)原則
処方せん医薬品については、病院、診療所、薬局等へ販売(授与を含む。以下同じ。)する場合を除き、新薬事法第49条第1項の規定に基づき、医師等からの処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、販売を行ってはならないものであること。なお、正当な理由なく、処方せん医薬品を販売した場合については、罰則が設けられているものであること。
(2)正当な理由について
新薬事法第49条第1項に規定する正当な理由とは、次に掲げる場合によるものであり、この場合においては、医師等の処方せんなしに販売を行っても差し支えないものであること。
・大規模災害時等において、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方せんの交付が困難な場合に、患者に対し、必要な処方せん医薬品を販売する場合
引用:平成23年東北地方太平洋沖地震における処方箋医薬品の取扱いについて(医療機関及び薬局への周知依頼), 平成23年3月12日, 厚生労働省医薬食品局総務課
このような大災害がいつ起こるかわかりません。
心臓、血圧、糖尿など生死にかかわる薬は、数週間分はストックを置いとくようにして下さい。
自分の身は自分で守る必要があります。
『備えあれば憂いなし』です。水、食料品も当然大事ですが、薬も生死にかかわります。
自己管理がむずかしい患者様は介護職や施設の方の協力が必要になってきます。よろしくお願いします。
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